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~9. 暗闇と光~
アレクの愛娘
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二日後、騎士団に入る準備を一通り整えた僕は、挨拶をしにアレクの部屋を訪ねた。
「あぁ、サイラスか」
窓の外を眺めていたアレクが僕の方を見て微笑む。なんだか表情が柔らかい。何を見ていたのだろうと、アレクが見ていた方向に視線を向けると、庭園の奥の方に女の子がいた。
7~8歳ぐらいだろうか。白い薔薇が咲く傍らの長椅子に座り、メイドらしき女性と楽しそうに何かを話している。
「あの子は…?」
「ん…? あぁ、俺の一人娘だ」
「え…っ!」
アレクの答えに驚く。一人娘…?
「なんだ、その顔は」
「子供がいたの…?」
「言ってなかったか?」
…言ってない。一昨日の話でアレクの隠し事は全てだと思っていたのに、子供がいたなんて初耳だ。公爵という立場上、ある程度は仕方ないのかもしれないが、アレクは隠し事が多すぎる。そう呆れながら、再度、彼女に視線を向ける。
風に揺れる長い髪。白いドレスがよく似合っている。母親似なのだろうか。逞しいアレクとは違い、華奢で柔らかな雰囲気。あぁ、でも、あどけなく笑った表情はアレクに似ている。
「可愛いだろう?」
「うん…」
アレクの言葉に素直に頷いていた。女の子に対して可愛いだなんて、そんな感情は初めて抱いた。でもわかる。守ってあげたくなるような気持ち。胸の奥がくすぐったい…
それは不思議な感覚だった。今まで女の子という存在を意識したことはなかったはずなのに、今、彼女の存在に目を奪われて離せない。なぜだろう。彼女がアレクの子供だから、特別に感じるのだろうか…
「言っておくが、可愛いだけじゃないぞ」
「え…?」
「お前に教えたのと同じ知識を叩き込んでいるからな」
そう言ったアレクは、僕を見て自慢気に微笑む。僕に教えたのと同じ知識…? なぜそんな教育を…? そう思った瞬間、あることを思い出した。
アレクの一人娘ということは、すなわち彼女は、クレディア公爵令嬢。姿を見るのは初めてだが、僕はその存在を知っている。
「アーサー皇子の…婚約者…」
「ん…? よく知ってるな」
「……」
そうか、彼女が…。あの町が祝福と歓喜の空気で包まれていた二年前、この国の皇子の婚約者が決まった。あの時はなんの興味もなかったけれど、今になってその相手が彼女だったのだと気付く。
この国の皇子妃になる女の子。目を引く存在なのは当たり前だ。しかも、彼女はアレクの血を継いでいる。まだ幼くとも、才能に溢れ、聡明な令嬢なのだろう。
チクン…と僅かに胸が痛んだ。窓の外で無邪気に笑う彼女が、なんだか遠く眩しく見えた。
「あぁ、サイラスか」
窓の外を眺めていたアレクが僕の方を見て微笑む。なんだか表情が柔らかい。何を見ていたのだろうと、アレクが見ていた方向に視線を向けると、庭園の奥の方に女の子がいた。
7~8歳ぐらいだろうか。白い薔薇が咲く傍らの長椅子に座り、メイドらしき女性と楽しそうに何かを話している。
「あの子は…?」
「ん…? あぁ、俺の一人娘だ」
「え…っ!」
アレクの答えに驚く。一人娘…?
「なんだ、その顔は」
「子供がいたの…?」
「言ってなかったか?」
…言ってない。一昨日の話でアレクの隠し事は全てだと思っていたのに、子供がいたなんて初耳だ。公爵という立場上、ある程度は仕方ないのかもしれないが、アレクは隠し事が多すぎる。そう呆れながら、再度、彼女に視線を向ける。
風に揺れる長い髪。白いドレスがよく似合っている。母親似なのだろうか。逞しいアレクとは違い、華奢で柔らかな雰囲気。あぁ、でも、あどけなく笑った表情はアレクに似ている。
「可愛いだろう?」
「うん…」
アレクの言葉に素直に頷いていた。女の子に対して可愛いだなんて、そんな感情は初めて抱いた。でもわかる。守ってあげたくなるような気持ち。胸の奥がくすぐったい…
それは不思議な感覚だった。今まで女の子という存在を意識したことはなかったはずなのに、今、彼女の存在に目を奪われて離せない。なぜだろう。彼女がアレクの子供だから、特別に感じるのだろうか…
「言っておくが、可愛いだけじゃないぞ」
「え…?」
「お前に教えたのと同じ知識を叩き込んでいるからな」
そう言ったアレクは、僕を見て自慢気に微笑む。僕に教えたのと同じ知識…? なぜそんな教育を…? そう思った瞬間、あることを思い出した。
アレクの一人娘ということは、すなわち彼女は、クレディア公爵令嬢。姿を見るのは初めてだが、僕はその存在を知っている。
「アーサー皇子の…婚約者…」
「ん…? よく知ってるな」
「……」
そうか、彼女が…。あの町が祝福と歓喜の空気で包まれていた二年前、この国の皇子の婚約者が決まった。あの時はなんの興味もなかったけれど、今になってその相手が彼女だったのだと気付く。
この国の皇子妃になる女の子。目を引く存在なのは当たり前だ。しかも、彼女はアレクの血を継いでいる。まだ幼くとも、才能に溢れ、聡明な令嬢なのだろう。
チクン…と僅かに胸が痛んだ。窓の外で無邪気に笑う彼女が、なんだか遠く眩しく見えた。
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