幼馴染

めみる

文字の大きさ
2 / 8

第2話

しおりを挟む
2  上着返却

「上着どうしよう」

なつみは、紙袋を片手に電話機の近くに立っていた。紙袋の中は、あの日「クリーニングよろしく」っとそのまま借りたままの亮の上着だ。

返そうにしても学校に持って行くと、中学の時のようにあらぬ疑いがかかるかもしれないし、家に持って行こうにも亮の家の電話に繋がらない。

電話機の前で二、三日
「うーん。」っと悩んだ挙句


「とりあえず、家に持って行っていなかったら、玄関の取手にでも掛けておこう。」

うん。それがいいと、かってに一人で納得して家を出て五分。

チャイムを鳴らすと意外に簡単に「はーい。」と言う声がして玄関のドアがあいた。

そこに出たのは、頭がから水でも被ったのかという濡れた髪に肩からタオルを掛けた幼馴染の姿があった。
慌てて出てきたのか上半身は裸である。 

「なんだお前か」
しかも、顔をあわせるなりかなりの言い草であるが、借りた上着を返しに来たのだから一応しおらしく・・・

「これ。返しに来た。」

そう、しおらしくできなかった。

「ん?なにそれ」

紙袋の中を覗きこむ様に見る亮に。折角クリーニングに出した上着が濡れては、困ると慌てて取り返す。

「借りた上着」

「ああ。クリーニング出してきたか?」
「ちゃんと、綺麗にクリーニングして、あるわよ」

「もう!!」と突っ返すと、笑いながら「ありがとう」っと受け取られたので、さぁ、用事は済んだとばかりに「じゃあ、帰る」っと行って帰ろうとすると、肩をガシっと掴まれた。

「・・・なに?」

「おまえ今何時かわかってるか?」

「たぶん。・・・9
時半?」
「アホか!おまえには学習能力がないのか!!」
「いや、あるけどなによ。」
「お前一応女の子だろうが、夜に一人で出歩くなよ」

意味がわからない。そんな顔をしていたのがばれたのだろう。長い溜息を吐くと、吐き出すように吐かれた言葉に文句をいう。

「一応ってなんだ。女の子だし、それにたったの五分だし」
「その前に早い時間に来るとかあるだろうが」
「いやだって、誰も亮の家の電話でなかったし・・・返す事しか考えてなかった。」

正論に反射のように言い訳をするが、なんとなくどんどんと声が小さくなっていく。


「そんなんだから、今だに心配されるんだ。」
何度目かのため息を吐かれながら、何故そこまで言われなきゃいけないんだと、睨む。 


「うるさいなぁ。もう、いい。帰る!!」


そう叫ぶと、慌ててた亮ちゃんが腕を掴んで離さない。
「だから、ちょっと待て。送ってくから」

「いいよ」
「良くない。送ってくから、とりあえず着替えるからあがれ」

無理やり、引っ張られる様に玄関に連れ込まれると、「さっさと靴脱げ」っと引っ張ってリビングに着くまでに前を歩く亮の髪から水が滴り落ちていく。

「・・・髪濡れてるけど」
「知ってる。風呂入ってたから」
「待ってるから乾かさないと風邪ひくから。」
わかってると返されるかも知れないが、外は、家の中とは段違いに冷えるのだ。
そんな髪で外に出たら折角温まった体が冷えて風邪を引いてしまう。
そんな思いがつたわったのか。

「逃げるなよ。」っと前置きをされてから

「とりあえず冷蔵庫の中にお前の好きなオレンジジュースがあるから勝手に飲んどいて」

全くどんだけ信用ないんだ。っと思いながら、「逃げないもん。」そう返した言葉に笑いながら、二階に上がっていく亮を見送り。
久しぶりに来た亮の家を好奇心に負けて見渡す。
昔と変わってない様に見えるがやっぱり少しずつ変わっていて、棚には前には無かったはずの。今は、単身赴任でいないおじさんの写真や家族写真が飾られている。

多少ぐるぐると部屋の中を眺めていると、
「待たせた。」
そう言ってあらわれた亮の髪はまだ少し濡れている。

「まだ濡れてるし」
「あんま遅くなると、おばちゃんが心配するだろ」

どうやら、気を使ってくれたようだ。

「大丈夫。今回はちゃんと届けに行ってくるって言ったし、メールも今から送っとく。」

「引き留めといてすまんな」
「お気遣いなく~。」
よくわからないやりとりにふたりで笑いながら、そういえば。いつもここら辺で笑いながら一緒に混じってくるおばさんがいない。っと気づくと、その影をキョロキョロ探す。

「ああ、母さんなら昨日から夜勤シフトだからいない。」
その視線に気づいた亮が苦笑しながら返す。

「ああ、だから誰も電話出ないわけだ」
「そそ。俺もちょっと前に帰ってきたばっかり」

「そうなんだ。タイミング悪い?」
「風呂を覗く気だったならタイミングばっちりだな。」
「見ても嬉しくない、」
「知ってる。」

そんな不毛会話をしてると私の携帯が鳴る。
メールを見ると、母からだった。

「・・・お母さんが送ってもらうんだったら牛乳買ってきてって」 

「・・・逆方向だぞ。」

すぐにツッコミを入れる亮を無視して、メールを送信する。

「んー。でも、もう『いいよ。』ってもう送った。」
「お前なぁ。厚かましい。」
ペシッとおでこを叩かれるがあまり痛くない。

「知ってる。」
そんなこんなでオレンジジュースを出されて気分上々で待った甲斐があり。
ゴクゴクとジュースを飲みながら、ガシガシと頭を乾かすりょうちゃんを見つめる。
短髪の髪に引き締まった体は、中学時代に比べるとりょうの成長ぶりは凄まじく。自分とバカをやった頃と同じ人物だとは、思えない位だ。
「いつまで見てんだ。変態」
「べつに見てない。」
「ふーん。なつみのエッチ」
バーカ。そう言いながら、近くにあったタオルを投げると、亮は、なつみを見ながらこれ以上見られると穴が開くっとサッとタオルから逃げながら、なつみの頭を乱暴に撫でる。
その大きな手は2年前とは比べようがないくらい大きかった。




ドライヤーで髪を乾かした亮に送ってもらうためといいつつ家とは正反対方向のコンビニへ向かう。

「やっぱ家から出ると寒いね」

ブルって寒さに震える体を抑えるように腕を摩る。

「だな。まあ、お前の場合は、人んちっつーのが前に出るけどな」 

「うるさいなぁ~。そうだ!!
うるさい。ついでに、上着かして」

「お前なぁ。上着返しに来といてまた借りるな」

呆れながらそう返す亮はそれでも文句を言いながらも脱いで掛けてくれる。
2年前と同じくなんだかんだで優しい。

「えへへ。だぼだぼ。」
「ピッタシだったら怖いだろうが。」
「うん。でも、前はそんなに変わんなかったよね?」
「この2年で大きくなったんだ。」
「バスケか。バスケのせいか。」
「その言い方だと、なんだかバスケが悪いみたいだぞ。」
「今日も部活してたの?」
そんなボケをしながら2年前からかわった亮の事をきいてみる。

「おう。もう直ぐ試合があるからな。」
「え?そうなの?」
「おう。気晴らしに見に来るか?ついでに
バスケ部は、イケメン揃いらしいぞ。」
「なにそれ」
「うちのマネージャー達がいってる。」
「ふーん。イケメン揃いなんだ。それなら観に行こうかなぁ。試合は、いつあるの?」
「おまえなぁ・・・幼馴染を純粋に応援しようって気持はないのか?」
「んー。ない。」

「・・・はぁ。まぁ、いいか。なつみだし。再来週の日曜日。」

「なによ。でも、イケメンを見に応援に行こうかなぁ」
「そうだな。いい男が見つかるかもしれないぞ。」

「バスケ部で?」

「いや、他でもいいけど、新しい恋したら、忘れるのも早いだろ。しかしまあ、出来れば身の丈にあった奴にしてくれれば。慰める手間が省ける」



「なにそれ。振られる前提か!!」


ポコポコと殴ると、亮は笑いながら避ける。
「よけるなぁー。」
「絶対ヤダ。」
逃げ回る亮を久しぶりに追いかけ回しながら、寒いコンビニまでの道を走った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

処理中です...