幼馴染

めみる

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第3話

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3  朝の登校

今日は最悪の朝だった。
なんたって、登校途中に先輩と二組の彼女が手を繋いで登校するのを見た。

諦めようと、頑張ってる時にそういうのは辛い。
知らないとはいえ。失恋した私に少しは気を使えと叫びたい気分だった。

「大丈夫?なつみ」
「大丈夫じゃない。」
高校から友達になった。親友の瑠美ちゃんが、机にぐでーっと伸びている私を労わるようによしよしと頭を撫でてくれる。
ちなみにちゃんと、瑠美ちゃんには、先輩を諦める旨は伝えてある。ついでに今日の朝の事も・・・。

「・・・学校が辛い。」
「朝だけでしょ?」
「いや。この間移動教室で渡り廊下歩いてたら、窓から見える下の階に先輩と彼女がいて、イチャイチャしてて泣きそうだった。」

うぅっと泣きそうになりながらも、涙を耐える私を瑠美ちゃんが『良く頑張った』っと慰めてくれる。

「よしよし。良い子。だけど、学校にはきなさいよ。」
「・・・はーい。」
やる気のない返事を返した。



そんな会話を瑠美ちゃんとした翌日。
なんと最悪な事に朝から、先輩と彼女の手繋ぎ登校を見てしまって、砂を吐きたい気分だった。

それから、つい被らないように、いつも出る時間より遅く起きてギリギリ登校になりながらも一応学校には、行っていた。
だが、そんな事は知らないお母さんは、ただの怠け癖がまた始まったと思ったのか。
「なつみ。いい加減ちゃんと起きないと。明日から知らないからね。」

と意味深な言葉をはくお母さんのうるさい声をうけながらも、「はいはい。」とおざなりに返事を返していたことを次の日の朝。
私は後悔することになった。
 



朝。ガシャッっとカーテンが開く音がして、あまりの眩しさに無意識に布団に潜り込む。

「なつみ。起きろ。」
「んー。あと五分」

布団に包まりながら、イヤイヤっとギュウギュウと布団を抱きしめる。

「駄目だ。俺時間ないから、早く起きろ。」
「・・・いや・・まだ寒い・・・」
「起きないと布団剝ぐぞ。」
「・・・もうちょっと。」
「はぁ・・・」

バサァっと捲られる布団にビックリして無理矢理閉じようとする目を開けて布団を探すと、誰かの手に持たれた布団を発見した。
あったとばかりに手繰り寄せるが、遠くにポイっと投げ捨てられる。


「なにするの・・・」


次の言葉は、布団を挙げ捨てた相手を確認したことで萎むように飲み込んだ。 



「な、なんで亮ちゃんがここにいるのよ!!」

目の前に居るはずの無い人物がいて、私は、噛みながらも私は叫んだ。

「さあ、なんでだろうな。」
やっと、気づいたかという風に、ニヤッと笑う亮ちゃんの大人っぽくなった笑顔に少しドキっとしながら、後ずさると、亮ちゃんは追い詰めるように私の寝間着のボタンの一番上に手をかけた。


「なつみ。俺に着替えさせられるか、自分で五分以内に着替えるか選んで」
矢継ぎ早に急かされながらも、あまりの事にぼーっとしていると、『早く返事しないと、ボタン外していくけど』っと続けられた言葉にボタンにかかった手を弾き落として叫んだ。


「じ、自分で着替えるにきまってるでしょー!!」


私は近くにあった枕をパンっと亮ちゃんに投げると、それを見事キャッチした亮ちゃんは、足元におくと。

「五分だからな。五分たったら勝手に入るから急いで着がえろよ。」

亮はそういって、ドアから出て行った。

「もう、なんなの」
恥ずかしくて真っ赤になった顔を拾い直した枕に埋めながらそうつぶやいた。
五分は短い。




五分と言われ、急いで着がえた私は、リビングへと向かう。
そこには、コーヒーを片手にテレビを見ている亮ちゃんとお母さん。
なぜかうちに馴染んでる。そんな違和感の無い亮ちゃんを睨み。

「お母さん。なんで亮ちゃんがいるのよ。」

っと朝からの謎を問いただすと、今気づいたっばかりに

「あら、なつみ。おはよう。今日は早起きね。」
嫌味も入れながら陽気に応える母に朝の挨拶をとりあえずかえす。

「おはよう・・・じゃなくて亮ちゃんが朝から家に居る訳は?」

「そんなの決まってるじゃない。あんたを起こしに来てもらったのよ。ごめんね。亮くん。うるさい娘で」

「大丈夫ですよ。慣れてますから」

「慣れてるってなによ。その前に、おかしいから、亮ちゃんが私を起こしに来る意味がわからないし。」

「それは、あんたがこの頃ダラダラと起きて中々、学校にいかないからに決まってるじゃない。だから、亮くんのお母さんと夜勤で作れなくなる亮くんの夕食作るって約束で亮くんを貸してもらったよ。」

「なんか、すいません。」

「いいのよ。一人分くらいかわらないし。なつみの面倒見てもらってるし」

「ちょっと、かってにそっちで決めないでよ。」

「はあ、こんな娘じゃなくて、ほんと亮くんみたいな息子が欲しかったわ」

「ありがとうございます。」 

「ちょっと、私を無視しないで」

「ほらあんたは喋ってないで席について早く食べなさい。」 

そういって、食パンを口に詰め込まれモガモガと文句を言いながら咀嚼する。 

「ってか。時間1時間くらい早くない?」

やっとパンを飲み込んで、そう、愚痴を零すと

「そんなの当たり前でしょ。亮くんは、朝練あるんだから、あんたのせいで亮くん遅れたらどうすんのよ。」

「え?朝練?一緒に登校するの?」

「当たり前でしょ。あんた起きてもそのままダラダラ家にいる気でしょうが!」

図星すぎて返す言葉もなく。仕方なく急いで食べると、家から追い出される様に送り出された。

「はぁ、酷い」
「お前の寝起きの悪さがか?」
なんとも、返し辛い返答にどもりながらも、叫ぶ。
「ち、違います。っていうか。変なとこ触ってないわよね。」

「変なとこって?」
「変なとこよ。」

「なつみが隠した気でいる日記とかか?」

「ちょっと、なんで、知ってるのよ。」
「んなもん。おばさんに『見て見て』って昔見せられた。」

「まさかの裏切りは身内から」 
「昔からからかわれてるもんな。お前。」
「うぅ・・・。酷いよ。」

「ほら。よしよし。元気出せ。」
何故か日記を見た本人から頭をなでられ、それでも、下がっていたテンションが少し上がった。
しかし、今から見るであろう先輩と彼女を思い出すとテンションが、どんどん下がっていく。
「・・・ただでさえ。今から学校に行くのも辛いのに・・・」

そんな呟きをちゃんと、聞き取れたらしい亮ちゃんが、
「んー?どうした?虐められてる訳じゃないだろ?」
そういって、少し心配そうに亮が聞いてくる。
「・・・違うけど、ただ、・・・その・・・なんといか・・・」
歯切れの悪いなつみを急かすわけでもなくのんびりと待つ亮についに心の内を吐露する。


「・・・毎朝先輩と彼女の手繋ぎ登校を見せつけられてるだけ・・・だもん・・・」

「ああ、成る程。」っと納得した顔で頷きながら亮は、言葉を続けた。 

「でも、今日は見ないんじゃないか?」
「ん?・・・なんで?」
「なんでって、運動部やってる奴くらいしかこの時間は登校してこないから、見ることないだろ。」
「・・そっかぁ。でも、たまに学校内でも見ちゃうし。」

「そん時は、慰めてやるからメールでもしてこい。」
亮ちゃんは、『これだから付き合いたてのカップルは・・・。』っとため息を吐きながらしょうがないとばかりにいった。

「いや、その前に亮ちゃんの番号もアドレスも知らないし」
「あれ?そうだっけ?しゃあない。教えてやるよ。」

「ちょっと、偉そうなのは、気にくわないけど貰っとく。」
そういって、ポケットから、携帯を取り出し番号を交換する。

「登録できた。」

そういって、もう一度アドレス帳に亮の名前があるか確認して携帯を直す。

「そんじゃあ。学校行きたくないってなる前に連絡しろよ。」
「うん。ありがとう亮ちゃん。」
「おう。なら、さっさと学校いくぞ。」

そして、その日から、朝から亮ちゃんに起こして貰って、一緒に登校して、メールも頻繁に送るようになった。



*メールの内容です。会話ではありません。

なつ『亮ちゃん。先輩と彼女が手繋いでる』

亮『大丈夫だ。その繋がっているように見える所には実は、壁が存在する。』

なつ『なにそれ。』

亮『世の中には、お前の知らない世界があるのだよ。』

なつ『それ昔あってたアニメの台詞じゃない?』


亮『ばれたか。そうそう、お前が毎週見る癖に怖くてなって、夜中トイレに行けなくておねしょしてた原因のアニメだ』

なつ『してない!!』











なつ『彼女さんみると、悲しくなる。』


亮『あれは。かぼちゃだと思え。』

なつ『それは、緊張した時でしょ?』

亮『ついでに人という字を書いて飲んどけ!』

なつ『いや、緊張はしてないから』











なつ『先輩発見。いつ見てもかっこいい』

亮『知るか。俺には美女の情報を送ってこい。』

なつ『あっ、美女。』

亮『どこだ。今すぐ行く。』

なつ『嘘でした。』

亮『おのれ。なつみめ!!俺の純情を弄ぶとは!!』

なつ『純情じゃなくて、邪念のまちがいでしょ』



「なつみ。なにニヤニヤしながら、メールしてるのかしら。」

そう言われて、笑っているつもりはなかった私は、クビをかしげる。
「なに?無意識なの?」

怪訝そうにした後。私の代わりにニヤニヤしだした瑠美ちゃんが前の席に座り私の顔をみて笑う。
「笑ってた?」
「笑ってたわよ。この頃メールするたびに笑ってる。相手は誰よ。」

「えっと、・・・幼馴染?」

「なんで疑問系なのよ。っというか。あんた幼馴染なんでいたの?」
驚いたように声をあげる瑠美ちゃん。

「うん。」
「どこの学校よ」
「え?同じ学校だけど?」
何故そんなことを聞くのか疑問におもいながら答えた。
「・・・私。あんたが幼馴染ってくらい仲良くしてる男は見たことないけど」

「なんで男ってわかるの?」

「あんだけニヤニヤしてたら、男でしょ。」
「ニヤニヤしてないもん。」
そんなことを言いながらからかってくる瑠美ちゃんに否定の声をあげる。

「はいはい。ニヤニヤじゃなくて、ニコニコにしといてあげる。」
からかいながら笑う瑠美ちゃんについでにある提案をする。
「あのね。瑠美ちゃん。今度の日曜暇かなぁ。付き合って欲しいところがあるんだけど」

そう提案した私に瑠美ちゃんは、なにかあると思ったのか笑いながら『ええ。いいわよ』っと返事してくれた。
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