幼馴染

めみる

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第7話

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7

「似合ってるかなぁ」

「ん。似合ってるぞ。孫にも衣装って感じで」
「・・・亮ちゃんのバーカ」
なぜ私が浴衣を着て亮ちゃんの前にいるかというと、その理由は一ヶ月前から約束していた。瑠美ちゃんとの近所であるお祭りの約束に問題が生じた為である。
その問題と言うのが、
「瑠美ちゃんのお兄ちゃん今年はダメになったんだ。」
「そうなのよね。」
理由は、去年からお祭りと言う名のつくものには、瑠美ちゃん大好きなお兄さんの健さんとお友達が私達に付き添って周ってくれていたのだ。
「いつもなら、無理やりあけて付いてくるんだけど、今年はなんか会社の飲み会があるらしくて、愚痴愚痴文句いってたわ」
そんなお兄さんをそんなに嫌いじゃない瑠美ちゃんは、呆れながらそう言っていた。
「そっかぁ、一応お母さんに行ってみるけど2人だと無理かもしれない。」
「そうね。無理かもね」
瑠美ちゃんがそういうのは、もう何回もお出かけを一緒に行っているからでついでに言うと
「心配性すぎなんだよ。もう、高校生なのに」
「いや、私あんたのお母さんが心配する気持ちがよくわかるわ。私も私1人じゃ心配だもの。」
「えー。」
「えー。じゃない。とにかく聞いてみて」


そう言われて、お母さんに相談した結果。

「ああ、なら亮くんに聞いてみたらいいんじゃない?」
「な、なんで亮ちゃんがでてくるのよ。」
「だって、仲直りしたんでしょう。」
「だから、喧嘩してないって。」
「なら、いいんじゃない。私から亮くんに聞いてみるわ」

そういって私の意見をことごとく無視したお母さんは、亮ちゃんのお母さんに相談そのまま亮ちゃんのOKを貰い何故か亮ちゃんと一緒に行くことになったのだ。

「浴衣って歩きづらいよね」
そう振ると、ラフな姿の亮ちゃんは、
「んー。この時期しか見れないからな。見る方としては目の保養でいいけど」
「どこ見てるの?」
「うなじとか?」
そういって、首筋をふわりと触る亮ちゃんから急いで距離を取る。
「変態。」
「はいはい。ほらこっちこい。通行人の邪魔だから。」
反省した様子もなく手招きされ怒りを覚えるが邪魔になると言われると迷惑になるので仕方なく亮ちゃんに近づく。
「お前あんま機敏に動くと浴衣が崩れるぞ。俺は直し方知らないからな」
「わかってるもん」
「ならいいけど、待ち合わせはこの辺だったよな?」
「うん。瑠美ちゃんまだ来てないみたいだね。」
「近藤たちも来てねぇな」
さすがに三人で周るのは嫌だと亮ちゃんからの提案でというか「俺が空気になる」との事で「知り合いの中でなら気になるやつがいればよんでやるけど、居ないか」と聞かれ瑠美ちゃんが、笹部くんっといった為一応聞いてみたところOKを貰ったまでは良かったが何故か「俺も」っと近藤くんまでついてきたっと亮ちゃんが言っていた。

ちなみに瑠美ちゃんに笹部くん好きなの?っと聞いてみたら、ミーハーみたいな気持ちで見てるだけらしい。
「恋愛感情は一切ないわね。ただ近くで見る機会があるっていうなら見とかないと」
っとミーハー根性を清々しいまでに言い切っていた。

うん。言い切る瑠美ちゃんは、なんかかっこよかった。留美ちゃんってかっこいい

そんな訳で三人を待っていると、亮ちゃんは、近くに座れそうな場所を見つけると座りその横をポンポンっと隣に座るように催促してきた。
「浴衣が汚れる。」
そういうと、はいはいっと言うように上着を脱ぐと自分の隣に敷いた。
「ほら、座れ。お前すぐ疲れるんだから今のうちだぞ。」
「しょうがないなぁ」
そんな憎まれ口を叩きながら、上着を回収される前に座る。
「まだかなぁ。」
「時間より早く着き過ぎたしな。」
そんなのんびりした会話をしながら、周りを見渡すと家族連れや恋人など手を繋いで楽しそうに通り過ぎていく。
そんな風に眺めていると、三人が近いてきているのをみて、叫ぶ。
「おーい。瑠美ちゃん」
「うるさいぞ。絶対恥ずかしいから叫ぶな」
「えー。そんなことないよ」
「ある。俺が体験済みだ。」
そんなやり取りをしていると、近寄ってきた三人がクスクス笑っている。
「相変わらず仲いいなぁ。2人は!写メってもいいか?」
「いいわけないだろ。ボケ」
軽いノリで近藤くんに亮ちゃんが蹴りをいれれば当たり前のように痛いなぁっと言いながら笑っている。
「近藤くんも久しぶりだね。」
「おう。相変わらずなつみちゃんはかわいいね。浴衣似合ってるよ。」
「ありがとう近藤くん。近藤くんも甚平似合ってるよ」
「なつみ。あいつの言うことは話半分だけ聞いておけ。」
「やだなぁ。亮ちゃんヤキモチ妬いちゃって。」
「近藤。一回死んどくか?」
「ははは。ごめんって、亮ちゃん恐いんだから。」
仲良くじゃれ合っている2人を放置して。
「えっと、初めまして、笹部 啓介っていいます。」
「ご丁寧にありがとうございます。杉本 なつみっていいます。」
「私は、加賀瑠美といいます。」
なんかこっちは、こっちでぎこちない挨拶を済ませる。
何故か三人でペコペコしてると、「お前らなにやってんの?行こうぜ」っと近藤くんの声がかかりやっと動き出す。
花火が上がる会場に近づくにつれてどんどん人もお店も増えて明るくなってくる。
「ねぇねぇ。亮ちゃん。」
「んー。」
「あれ食べたい。」
指を指す方向にはクレープの屋台。
「俺に言うな。自分で買え。」
「えー。いいじゃん。」
「はぁ。・・・しょうがない。どれがいいんだ。」
なんだかんだで買ってくれる亮ちゃんにニコニコでついていくと、
「これこれ。」
「チョコバナナ?」
「そうそう。あっそうだ。瑠美ちゃんは、なにがいい?」
「えっ、私の分もいいの?」
「あー。いいよ。ついでに頼んじゃって、笹部が、払うから」
「えっ、まさかの俺?近藤じゃなくて」
「いや、俺は、喜んで瑠美ちゃんの分払うよ。」
「・・・いや、俺が払う。」
なんだかんだで払わされた笹部くんは、瑠美ちゃんにいっぱいありがとうを言われなんだかちょっと、照れていた。
「なんか、俺だけ1人で寂しくない?」
そんなことをつぶやく近藤くんを無視して、屋台を見て回る。

「瑠美ちゃん。あれ食べよう。」
「あれも、美味しそう。」
「お前は、クレープ食べ終わってから選べ」
そう亮ちゃんから、お小言を言われながら食べ歩く。
「なつみ。口にソース付いてる。」
「えっ、何処?」
不意に亮ちゃんから指摘をされ口元を隠す
「ハンカチくらい持ってきてないのか?」
「持ってきてるもん。」
ガサゴソと鞄から取り出すと、拭こうとする前に取り上げられる。
「取ってやるからかせ。」
「自分でできるもん。」
「お前今日化粧してもらってるの忘れるなよ」
そう言われ一瞬考えただけで楽な方を選ぶ。
「・・・亮ちゃんお願い致します。」
「素直でよろしい。」



そんなやり取りをみた後ろの2人に

「これで付き合ってないとか。信じられない。」

と後ろで小さい声でそう呟かれているなんてしらなかった。




「ちょっと、おれションベン」
「いってら~。」
花火が見える場所でちゃんと場所取りをできた私達は、空を眺めながらその時を待つ。
「なあ、杉本。」
「えっ?私?」
いきなり、笹部くんに声をかけられビックリしながら受け答えをする。
「そう。杉本。お前ら本当に付き合ってないのか?」
「うぇ?誰と誰が?」
「杉本と亮。」
「それは、私も聞きたいわ。あんなイチャイチャする仲なんて聞いてないけど」
「イチャイチャなんかしてないけど?」
「「・・・」」
「うん。なつみちゃんとしては、いつも通りだもんね。」
何故かウンウン。と頷く近藤くんにコテっと首をかしげながら、考える。
「とにかく付き合ってないんだな。」
「うん。付き合ってないよ。」
「そうそう。これ平常運転だからな。2人とも、この2人を舐めてはいけない。幼稚園から、中学まで一緒にいた俺が言うんだから。」
何故かちょっと、偉そうな近藤に何故お前が、偉そうにするんだと突っ込みたいのを我慢して、一応話を聞く。
「いいか。この2人の伝説は、小学校から始まる。」
「えっ、なに伝説って?」
本人のことなのにしらないなつみを放置して、話し出す近藤。
「ある日。竹田と言う。なつみちゃん大好きな野郎がいてな。」
「ええええ。竹田くんに私嫌われてたよ」
「ごめん。ちょっと、なつみちゃん黙って」
「えっ」
「なつみ黙りなさい。」
「・・・みんなひどい」

ゴホンと、やり直すように咳をすると、近藤は、喋り出す。
「っで、そいつはいつもなつみちゃんの近くにいる亮が大嫌いでな。亮には、文句を言わずに好きな子は虐めたいってやつでなつみちゃんをずっと、いじってからかったりしてた訳。でも、いつも休み時間でも、クラスの違う亮から離れないなつみちゃんを亮がいない時に虐めるのは無理でな。虐めても、いつも亮がなつみちゃんを慰めてるのも、気に食わなかった奴は、考えたんだよ。授業の始まる直前に虐めれば亮に頼れないし、その前に亮が来られないって、そして、それを実行しちゃったんだよな。
もう、その時は、マジ凄くて何分たってもなつみちゃん泣き止まなくて、そこで俺は・・・」
「俺の教室に入ってきていきなり、「授業中すいませんが、どうしても亮くんがいないとなつみちゃんが泣き止まないので佐伯亮くんをお借りします。」って大声で宣言された挙句。教室を連れ出されたんだよな。もうちょっと、俺の気持ちを考えて欲しかったよな。近藤。」
近藤くんの頭を鷲掴みにした亮ちゃんは物凄く笑顔なのに怖いという。器用なことをしていた。
「り、亮。いつの間に戻ったんだ。」
「亮ちゃん。さっきから、近藤くんが竹田くんが私のこと好きとか嘘ばっかり言うんだよ。」
「・・・うん。まあ、竹田の為に忘れてやれ」
「うん?わかった?」

何故か忘れなきゃいけないらしく。「とにかく忘れてやれ。」と言う亮ちゃんに釈然としないまま。頷く。
「っで。その後。どうなったんだよ。」
どうしても、気になった笹部くんが聞き直す。
「えっと、その後。亮ちゃんに慰めて貰ったなつみちゃんはすぐ泣き止んでそれから、急遽2年で一回のクラス替えが、2年に上がった時にもう一度あって、あれからなつみちゃんと亮のクラスが離れることは、無かったね。」
「そうだったかなぁ。ってか私のせいじゃないでしょ。クラス替えは!ねぇ、亮ちゃん」
振り返り亮ちゃんを見ると、ゆっくりと目を逸らされた。



「・・・俺。クラス替えの前。担任に呼びされて、話聞かれたからなぁ」
その後ボソっとつぶやいた亮の言葉をなつみ以外は聞き逃さなかった。


しばらくすると、花火が上がった。
音楽がなるのと合わせるように花火が上がる。
「わぁ」
空いっぱいの大きい花火が上がると連続して柳のようにしなだれさがって消えていった。
「すごい綺麗だね。亮ちゃん。」
「だな。」
ギュッと亮ちゃんの袖を掴んで興奮を表現する私に苦笑しながら、頭をポンポンとたたくとまた上がるぞっと合図する。



「楽しかったね~。」
「きれいだった。」
みんなで並びながら、楽しく歩く。
「みてみて。亮ちゃん紫ひよこだよ」
屋台でたまに見る色とりどりのひよこは、ピヨピヨと囀っている。
「買わないぞ。」
「わかってるよ。でも、かわいいよね」
「買うなよ。」
「買わないってば」
「ならいいけど、そういや昔。紫のひよこが欲しいって泣き喚いてたな。」
「そうだっけ?」
「そうそう。「黄色のひよこは、ニワトリになるけど、紫のひよこはなんになるんだろうね。白鳥かなぁ」っていって俺を笑い死にさせようとしてた。なんで白鳥なんだよって」
思い出し笑いをしながら笑う亮に。
「だって、醜いアヒルの子で白鳥に成るのは紫色の子だったから、白鳥に成るって思ったんだもん。」
「そうだな。でも、あれはアヒルの子だぞ」
「亮ちゃん。うるさい」
「そう、怒るなって、あの頃もかわいい思考をしてたもんな」
「亮ちゃん馬鹿にしてるでしょ。」
「いや、褒めただろ」
「どこが!!」
「可愛いってゆったろ」
「そうだっけ。」
「そうそう」
「いってたかも?」
「うんうん。なつみは可愛いぞ」
「えへへ・・・」


「誤魔化されて照れてるけど、あれはいいのか?」
「もう、いいんじゃないかしら?」
「なつみちゃんが、嬉しいそうだからいいんじゃないかな。」

こっそり三人が後ろから言ってるのを亮は、聞こえないフリをしながらあるく。
知らぬはなつみだけだった。






「じゃあな。」
「おう。気をつけて帰れよ。」
「瑠美ちゃんまた明日ね。笹部くんたち瑠美ちゃんよろしくね。」
「おう。任しとけ。近藤に襲われないようにちゃんと送っていく。」
「まて、啓介。俺から守るのか。」
「笹部。マジ頼むな。加賀を近藤から守ってやってくれ」
「おう。絶対守り抜く。近藤の毒牙から」
「ちょっ、お前らちょい待てー。」

「あははは」
「仲良しだね~。三人」
「そうね。じゃあ、そろそろ帰るわ」
「バイバイ。」
「バイバイ」

そんな会話を最後に瑠美ちゃんたちと別れ2人で歩く。
「亮ちゃん。楽しかったね。」
「んー。そうだな。」
「あと、近藤くんが一匹も金魚取れないのが可哀想だった」
「あの屋台のおっさん一匹もくれなかったな。」
「うん。なんか小学生以下には五匹くれるらしいよ。書いてあった。」
「近藤は、小学生には見えないから無理だな。」
「そうだね~。おっきすぎるかも」
「ははっそうだな。」
楽しい話の中でも帰りの坂道は、やっぱり遠くて辛く眉間に皺を寄せながら歩く。
「なつみどうした?」
「ん?何が?」
カラコロとあるく。足音が響く。
「んーっと、歩き方がおかしいぞ。お前」
「えっとねー。なんでもない。」
ちょっと隠すように左足を後ろに下げると、ため息をついた亮ちゃんが、近寄ってくる。
「足見せろ。」
「亮ちゃんのエッチ」
「はぁ、しょうがないな」
そういって、ズンズンと近寄ってくるといきなり抱き抱えられる。
「ちょっ、亮ちゃん恥ずかしいから離して」
「誰も見える範囲に居ないしたぶん誰も見てないから安心しろ。」
そういって、近くの階段まで軽々と運ばれてしまった。
「うぅ・・・。恥ずかしい」
「いいから足見せろ」
おずおずと足を前に出すと、下駄をゆっくり外される。
「お前豆が潰れて血が出てるぞ。」
「うん。たぶんさっき潰れたと思う」
「早く言え。我慢するなよな」
「だって、楽しかったし、そんなに痛くなかったんだもん。」
「とりあえず。ちょっとここで待ってろ。」
そういって、走ってどっかに行ってしまう亮ちゃんに不安になりながら待つこと10分。
はぁはぁと息を切らした亮ちゃんが帰ってきた。
手にはコンビニの袋。
「何買ってきたの?」
「タオルとか、一応消毒する奴も。ほら、もっかい足出して」
そう言われて足を上げると、ヒョイと自分の膝に置き濡れたタオルでゆっくりと拭いていく。
その後軽く消毒した足を大きな絆創膏で隠すと、ついでとばかりに残ったタオルで足を巻くように縛られる。
「何これ?」
「簡易の靴の代わり、さすがに靴は売ってなかった。これで歩いて帰れるだろ。それとも、おぶってやろうか?」
「・・・歩いて帰ります。」
「痛かったら、抱っこしてやる。」
「うん。ありがとう。亮ちゃん」
ちょっと、恥ずかしくなりながら素直にお礼を言うと、笑って頭を撫でてくれた。

その笑顔にドキドキしながら、亮ちゃんと2人で夜道を帰った。



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