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第一章『転生したらしい』生命の森編
行き倒れの人視点だって
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─小さい頃に出会った優しいモンスター。迷子になった俺を、危険も顧みずに助けてくれた、絶滅したはずのモンスター。
あの人は、何も言わずに去っていった。素性も何も、教えてくれなかった。俺は恩を返したくて、必死で勉強して種族について調べた。
そして決心した。
あの人を、あの種族を助けると。人間のせいで絶滅寸前になってしまったあの種族を、助けたくて…
恩返しが、したくて…──
────────
────
「あー、なんだ、その…悪かったな……」
目の前で、目を少し吊り上げて怒っている可愛い生き物に、軽く頭を下げる。どうやら、俺が考え事をしている間に、例の恩人さんが戻ってきていたらしい。それに気づかず、無視をしていたのは本当に申し訳ない。
しかし、よくよく考えると本当に不思議なものだ。長年探していた種族の生き残りが、絶対に居るはずのない森の中にいて、今俺の目の前にいて、そしてまたもや助けられてしまったなんて。人生、何があるか分かんないもんだな。本当。
いまだに信じられなくてつい、黒い鱗のような模様が斑に散らばっている綺麗なクリーム色の毛並みをまじまじと見てしまう。あ、尻尾には鱗模様ないんだな、なんて考えていると、緑色の瞳がジトッと睨んできた。
『なんども話しかけたのに』
カリカリと音を出しながら、その子は器用に木の枝で地面に文字を書いていく。それを読んで、俺は頭をかいた。
「それに関しては悪かったって…本当に気づかなかったんだよ…」
この台詞、実は四回目である。いくら謝っても目の前の恩人、【リトルキャットドラゴン】は気づかなかったことを許してはくれなかった。
曰く、初めて会う人間にしょっぱなから無視され、しばらく一人でこの森で生活していた身としては、非常に悲しかったらしい。本当に申し訳ないことをした。
まぁ、たまたま持ち合わせていた小豆饅頭をあげたら途端に機嫌が直ったが。大喜びで饅頭を頬張る姿は可愛い。耳や尻尾がパタパタと動く。めっちゃ可愛い(真顔)
恩人が持ってきてくれた見たことのない果物を食べながら、俺は今後の予定を考える。地図もコンパスも使えないこの森の奥地、この【命の泉】までの道を調べるなんて無謀なことはやめる。元々やるつもりもなかったが。
調べて地図を作ったところで、無意味なことは周知の事実だ。誰も俺を責めはしないだろう…依頼人以外は。
全くもって面倒な依頼を受けたものだ。依頼料以上に価値のある出会いはあったが、あのクソ貴族に文句を言われるのは非常に気に食わない。殴り倒したくなる。あー、考えただけでムカつく。戻ったら一発殴るか。
またしても思考の海に沈んでいこうとする俺のすぐそばで、「ミャア」と可愛らしい鳴き声がした。あー、【シーフーキャット】と【キャットドラゴン】って鳴き声も似てるんだなー、やっぱ。等と考えながら、至近距離あるクリクリとした緑色の目を見つめること数秒。
「どぅわっはぁ!?!?」
謎の奇声を発しながら俺は思い切り後ずさってしまった。心なしか恩人の大きな耳が、シュンと下がってしまった気がする。やってしまった。恐らく、また俺はあの子を無視してしまっていたのだろう。
「す、すまん!考え事をしていた!何か用か?」
テンパり、気の利いた言葉が思い浮かばない。何か用か、なんて、相手が急に黙り混んだら普通話しかけるだろう。アホか、俺は。
『からだ だいじょうぶ? 木の実いる?』
文章の意味を考える。どうやら、先程のことはもう怒っていないのだろう。何やら気を使わせてしまったらしい。申し訳ない。
「あ、あぁ、もう平気だ。ありがとう。もう腹も膨れた。大丈夫だよ」
そう言えば恩人の耳がピクリと上がった。どうやら満足する答えだったらしい。嬉しそうに尻尾を揺らしている。……可愛いな、ちくしょう…
────────
俺が恩人と出会った日の翌日、泉の近くだからと油断できないのに思い切り熟睡してしまった俺は、それでも習慣で日が出る少し前の朝方から泉の水で顔を洗い、ついでに体を拭きつつ服も洗った。洗浄効果でもあるのか、泉の一部をいくら汚そうと、すぐに綺麗な水に戻る。すげぇな。
洗った服を木に掛けて、知り合いの魔導師に叩き込まれた炎と風の魔法でさっさと乾かす。魔法便利。
乾かした服を着れば、なんとなく気分が良くなった気がする。と言うか、数日間ずっと顔も服も洗えなかったのだから、久しぶりに洗えば気分良くもなるわな。やっぱりあのクソ貴族殴ろう。
そう心に決めれば、有りがたいことにきちんと拾って貰えていたお気に入りの弓を手に取る。何度か握り直してみるが、特に問題は見当たらない。どうやら矢筒は何処かにいってしまったらしいが、ただのカモフラージュ用なので、人のいないこの森の中なら無くとも別に構わないだろう。
俺が起きたことを確認すると、糸が切れた様に眠りに落ちた恩人さんの寝顔を少し眺める。無防備に寝てしまった俺のために、わざわざ徹夜で見張ってくれていたらしい。念のため、軽くシールド魔法と探知魔法を掛けておく。何かあってもこれで大丈夫だろう。
「さてと、恩人さんに美味しい朝ごはんでも作ってやりますか!」
弓を握り、久方ぶりに晴れやかな気分で俺は森を駆けた。
あの人は、何も言わずに去っていった。素性も何も、教えてくれなかった。俺は恩を返したくて、必死で勉強して種族について調べた。
そして決心した。
あの人を、あの種族を助けると。人間のせいで絶滅寸前になってしまったあの種族を、助けたくて…
恩返しが、したくて…──
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「あー、なんだ、その…悪かったな……」
目の前で、目を少し吊り上げて怒っている可愛い生き物に、軽く頭を下げる。どうやら、俺が考え事をしている間に、例の恩人さんが戻ってきていたらしい。それに気づかず、無視をしていたのは本当に申し訳ない。
しかし、よくよく考えると本当に不思議なものだ。長年探していた種族の生き残りが、絶対に居るはずのない森の中にいて、今俺の目の前にいて、そしてまたもや助けられてしまったなんて。人生、何があるか分かんないもんだな。本当。
いまだに信じられなくてつい、黒い鱗のような模様が斑に散らばっている綺麗なクリーム色の毛並みをまじまじと見てしまう。あ、尻尾には鱗模様ないんだな、なんて考えていると、緑色の瞳がジトッと睨んできた。
『なんども話しかけたのに』
カリカリと音を出しながら、その子は器用に木の枝で地面に文字を書いていく。それを読んで、俺は頭をかいた。
「それに関しては悪かったって…本当に気づかなかったんだよ…」
この台詞、実は四回目である。いくら謝っても目の前の恩人、【リトルキャットドラゴン】は気づかなかったことを許してはくれなかった。
曰く、初めて会う人間にしょっぱなから無視され、しばらく一人でこの森で生活していた身としては、非常に悲しかったらしい。本当に申し訳ないことをした。
まぁ、たまたま持ち合わせていた小豆饅頭をあげたら途端に機嫌が直ったが。大喜びで饅頭を頬張る姿は可愛い。耳や尻尾がパタパタと動く。めっちゃ可愛い(真顔)
恩人が持ってきてくれた見たことのない果物を食べながら、俺は今後の予定を考える。地図もコンパスも使えないこの森の奥地、この【命の泉】までの道を調べるなんて無謀なことはやめる。元々やるつもりもなかったが。
調べて地図を作ったところで、無意味なことは周知の事実だ。誰も俺を責めはしないだろう…依頼人以外は。
全くもって面倒な依頼を受けたものだ。依頼料以上に価値のある出会いはあったが、あのクソ貴族に文句を言われるのは非常に気に食わない。殴り倒したくなる。あー、考えただけでムカつく。戻ったら一発殴るか。
またしても思考の海に沈んでいこうとする俺のすぐそばで、「ミャア」と可愛らしい鳴き声がした。あー、【シーフーキャット】と【キャットドラゴン】って鳴き声も似てるんだなー、やっぱ。等と考えながら、至近距離あるクリクリとした緑色の目を見つめること数秒。
「どぅわっはぁ!?!?」
謎の奇声を発しながら俺は思い切り後ずさってしまった。心なしか恩人の大きな耳が、シュンと下がってしまった気がする。やってしまった。恐らく、また俺はあの子を無視してしまっていたのだろう。
「す、すまん!考え事をしていた!何か用か?」
テンパり、気の利いた言葉が思い浮かばない。何か用か、なんて、相手が急に黙り混んだら普通話しかけるだろう。アホか、俺は。
『からだ だいじょうぶ? 木の実いる?』
文章の意味を考える。どうやら、先程のことはもう怒っていないのだろう。何やら気を使わせてしまったらしい。申し訳ない。
「あ、あぁ、もう平気だ。ありがとう。もう腹も膨れた。大丈夫だよ」
そう言えば恩人の耳がピクリと上がった。どうやら満足する答えだったらしい。嬉しそうに尻尾を揺らしている。……可愛いな、ちくしょう…
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俺が恩人と出会った日の翌日、泉の近くだからと油断できないのに思い切り熟睡してしまった俺は、それでも習慣で日が出る少し前の朝方から泉の水で顔を洗い、ついでに体を拭きつつ服も洗った。洗浄効果でもあるのか、泉の一部をいくら汚そうと、すぐに綺麗な水に戻る。すげぇな。
洗った服を木に掛けて、知り合いの魔導師に叩き込まれた炎と風の魔法でさっさと乾かす。魔法便利。
乾かした服を着れば、なんとなく気分が良くなった気がする。と言うか、数日間ずっと顔も服も洗えなかったのだから、久しぶりに洗えば気分良くもなるわな。やっぱりあのクソ貴族殴ろう。
そう心に決めれば、有りがたいことにきちんと拾って貰えていたお気に入りの弓を手に取る。何度か握り直してみるが、特に問題は見当たらない。どうやら矢筒は何処かにいってしまったらしいが、ただのカモフラージュ用なので、人のいないこの森の中なら無くとも別に構わないだろう。
俺が起きたことを確認すると、糸が切れた様に眠りに落ちた恩人さんの寝顔を少し眺める。無防備に寝てしまった俺のために、わざわざ徹夜で見張ってくれていたらしい。念のため、軽くシールド魔法と探知魔法を掛けておく。何かあってもこれで大丈夫だろう。
「さてと、恩人さんに美味しい朝ごはんでも作ってやりますか!」
弓を握り、久方ぶりに晴れやかな気分で俺は森を駆けた。
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