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第一章『転生したらしい』生命の森編
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「僕はルイス、ただのルイスだよ。そこの目付きの悪い男と同じ村の出身で、まぁ相棒みたいなものかな?よろしくね、猫ちゃん」
「目付き悪いって、お前も人のこと言えねぇだろうが」
「猫じゃないもん!!いや、確かに猫っちゃあ猫だけど!!」
あのあと、どうにか種まきさん、もといルイスの機嫌を直したオレたちは、改めて自己紹介をし合っていた。
といっても、オレは自己紹介するにも何も覚えてないから出来なかったけど。
とりあえず、仲良くできそうなので安心しているところである。
「さて、じゃあそろそろいいかな?」
「なにが?」
落ち着いたところでそう聞いてきたルイスに、首をかしげて返事をしたら物凄く呆れられた。
そろそろいいかなって、なんかあったけ?……あっ。
「あぁ、思い出した?もし今本気で忘れてて、すぐに思い出さないようなら、もう頼まれてもやってやるもんかと思ったけど…そうじゃないようで安心したよ」
「ごめんなさい、そうでした、記憶を戻すんでした」
すっかり忘れてました。すみません。
謝れば、さっさと終わらせたいとでも言いたげに雑にオレの頭を掴んだ。
そこから何かふわふわしたものが流れてくる。なんだろうこれ、と思っていれば、律儀にもリピが魔力だと教えてくれた。
ただ、その教えてくれた声が遠退いて、後に続く言葉が聞こえにくくなり、オレの意識は途切れた──
───────────
目の前に広がる景色は焼け野原。
つい先日まで美しい草花が生えていたそこは、その記憶とは全く別の姿で自分を迎えた。
その惨状を呆然と眺めるしかできない自分は、かつてそこに暮らしていた生き物たちからしたらとても無力で、恨むべきものなのだろう。
だって、この惨状は、この地を壊したのは、他でもない、自分なのだから。
いくら後悔したところで、命は戻らないし、自分の今の状況も変わらない。
取り返しのつかない間違いを選択してしまった自分のミスだ。自分のせいなのだ。
気付けば自分は地面に膝を付き、静かに涙を流していた。
泣いたところで、何も奇跡なんて起こらないのに。
ただ、泣くしか出来なかった。ふざけるな、と、自分で自分を殴りたいぐらいに、焼け野原の中心で泣いていた。
どれだけの時間が経っただろう。何日、何週間、下手をすれば何ヵ月と経っていたかも知れない。
枯れない涙が、止まった。
ずっと流れていた涙が栄養となったのか、座り込んだ自分の手元に小さな草が生えていた。
何かの花なのか、はたまたただの雑草なのかはわからない。
でも、それに気づいたとき希望が見えた気がした。
死んだものは、消えたものは戻らない。今、自分がやるべきことは泣くことではない。
戻らなくても、新たに生まれてくるのだ。草木も、人も、動物も、全て。なら、自分がやるべきことは?
ようやく気づいたか。隣からそんな声が聞こえた。
驚いてそちらを見れば、そこにはいつの間にか──
「────」
名前を呼ばれた、気がした。
───────────
─おかしいと気がついたのは、ルイスの魔法がいつまでも続いていることに違和感を覚えた時だった。
普通、記憶を見る魔法はそんなに時間がかからない。今までもそうだったように、今回もすぐに終わらせて、いつもの調子で成功の報告をするものだと思っていた。
しかし、一向に動く気配のない二人。嫌な予感がしてすぐに引き剥がす。
手が離れた瞬間、ルイスは水から上がった様に息を吸い咳き込んだ。
ルイスの無事は見なくてもわかるので構わないでおく。問題はあの子だ。
パッと見ただけでは先程と何ら変わりないように見えるが、しかしその開かれた瞳は何も映してはいなかった。
ぼうっと遠くを見るようなその瞳には、何の感情も見えない。
まだ息を調えられていないルイスが、焦ったように叫ぶ。
「な、まえ…を…!!早く、しないと…!ジャン…君が、呼べ!!その子の…名前は…───」
その言葉が耳に届いた瞬間、いや、届く前からオレはその名前を叫んでいた。
「──カナメ!!!」
何度も、意識が戻るまで何度もその名を呼ぶ。肩を掴んで揺らし、ひたすら叫ぶ。戻ってこいと、帰ってこいと念じながら。
何が起きているのか全くわからないが、流石のルイスもはじめてのことなのだろう。頭を押さえ、息を調えながらこちらを眺めている。
果たしてこの子─カナメのどんな過去を見たのかはわからないが、おそらくその過去がいけなかったのだ。
心を壊すような何か、あるいは意図的に削除された記憶なのか。魔法を使った方のルイスでさえもあの様子だ。ろくなものではないだろう。
失敗した。記憶を取り戻したがっていたから、よかれと思ってルイスに頼んだのだが、どうやら裏目に出たようだ。
このまま元に戻らなかったらどうしよう?それだけは絶対に嫌だった。
だって、漸く見つけたのだ。漸く、会えたのに─
「…っ!カナメ!!戻ってこい!!カナ!!!」
頭を過った不思議な感覚はすぐに掻き消えた。ただ必死にその名前を呼ぶ。何故か自然と愛称で呼んでしまったことにも気づかずに。
そのとき、カナメの目が動いた。
───────────
ゆっくりと意識が浮上する。ぼうっとする頭に、無機質な声が響く。
『称号【過去からの転生】習得。それに伴い、特殊スキル【愁嘆の繰返し】を習得。このスキルは、一定の時間以内ならば後悔した選択肢まで戻れます。同時に、独立スキル【森の案内人】が、独立スキル【万物を知る精霊】に進化。種族、生息地に関係なく【鑑定】が行えます。また、個体レベルやスキルレベルのレベルアップ、新たなスキルの習得の際お知らせすることが出来ますが、onにしますか?offにしますか?』
よくわからないまま、とりあえずonにしておく。
だんだんと意識がはっきりしてきた。しかし、水の中のように先程の声以外は何も聞こえない。
真っ暗な視界の中で、遠くに何か光が見えた気がした。
そちらに向かって歩こうにも、やはり感覚は水の中のようで。泳ぐようにしても、体は進まなかった。
暗闇は心地よく、このままでも良いのではと思わせてくる。でも、それではダメなんだとわかっている。
「────」
くぐもっていてよくわからないが、何か声が聞こえた気がした。
「──────」
どうにも聞きにくいが、きっとこれは知っている声なのだろう。
「───……────」
何を言っているのかわからない。でも、これは…この声は…
「……カナメ!!戻ってこい!!カナ!!」
帰らなくては。戻らなくては。そう思ったその瞬間、真っ暗闇だった世界が、真っ白に染まった。
気づくと目の前にはジャンの顔。ちょっとビックリした。え、まって、近くなぁい??
「……?あれ、オレ…?」
「カナ!!戻ってきた…本当に、良かった……」
パチリ、と瞬きをする。おや、何故ジャンさんは泣いているのだろう?なんだか夢を見ていた気がするが、不思議なことに何も覚えていない。
あれだ、ルイスが魔法使うよーって言って、その魔力を感じたあと、なんか意識が遠退いた気がする。寝ちゃったとかじゃあ、ないよねこれ。
というか、過去の記憶とやらもなんだか思い出した感じがしないぞ?うーん…なんか、暗いところでリピの声が聞こえた気もするけど、あれが過去の記憶な分けないよね?
あと、なんかめっちゃジャンの声が聞こえた。過去の記憶ならジャンはいないだろうし、もしかして魔法失敗したの?
だからジャンさん、泣いてるの?
「どこも変なところはないか?なんかぼうっとしたりしないか?体調は?気分は?大丈夫か?」
まてまて、心配はありがたいけど一気に聞きすぎですよ。
「待って、まずは落ち着くところからはじめよう?オレは特に何も無いから。大丈夫だから」
そう言えば、今度は無言でこちらをじっと見つめてくる。え、なんか怖い。
「カナ、あれ、何か分かるか?」
そう言ってジャンが指差したのは、床から生えてるよくわからない草。何あれ。
「うーん…草?あ、何かの薬草だったっけ?」
そう答えれば、難しい顔をしながら、次々と家の中の物を指していく。
「あれは?」
「テーブル」
「あれ」
「なんかの棚」
「あっち」
「ご飯作るところ?」
「あれ」
「ルイス」
「俺は?」
「ジャン・マリオン!」
「よし」
いつぞやの言葉の練習を思い出すようなやり取りである。何やらルイスが「あれってなに、あれって」と呟いているけど、どうやらジャンから合格を貰えたらしいので気にしない。
ふむ、しかし本当にどうしたのだろう?
「ところでジャン、オレ何も思い出せてないんだけど、魔法って失敗したの?」
直球で聞いてみた。そうしたらどうだ?ジャンもルイスも、目を見開いてこっちを凝視するじゃあありませんか。だから怖いってば。
「覚えて、ないのか?…いや、それはそれでいいのかも知れねぇな…うん、覚えてないなら気にするな。お前の名前なら、ルイスが引き出したから」
気にするなと言われれば、余計気になるものなのだが…って、そう言えば特に違和感を感じなかったから気にしてなかったけど、そう言えばさっきからジャンがなんか呼んでたような…
「名前、カナメ…オレの名前、カナメ!」
ストン、と何か足りなかった物が落ち着いたような感覚がした。
名前を聞いても、他の記憶は思い出せなかった。でも、それでいいのかもしれない。いつか来るべき時に、きっと思い出せるだろう。
その日は、ジャンとルイスと三人で飯を食べて、さんざん騒いだ後に全員が寝落ちした。なんかノリが修学旅行のようだったけど、楽しかったからまぁいいだろう。
意識が途切れる瞬間、出会った頃のように無機質なリピの声が聞こえた。
『…過去の能力のアップデート、完了。過去の記憶の消去、完了。名前「カナメ」、登録完了。ステータスの偽装が可能になりました。設定を登録してください。パーティーメンバー未定。「ジャン・マリオン」と「ルイス」を仮登録。誰かが経験値を得たさい、他のメンバーは得た経験値の1/3の経験値が得られます。その他、この世界から失われてしまった過去の魔法をアップデート。…アップデート成功。このまま特殊スキル【学ぶ者】の習得を………』
眠い頭はその言葉の意味を理解できず、思考を放棄した意識はそのまま眠りに落ちた。
この時、もしもオレが眠くなかったら、もしも眠気が覚めてリピと会話をしていたら。もしかしたら、他の未来があったのかもしれない。
そんなもしもの話は、もしもの未来は、大分後になって後悔と共に押し寄せて来るのだった──
「目付き悪いって、お前も人のこと言えねぇだろうが」
「猫じゃないもん!!いや、確かに猫っちゃあ猫だけど!!」
あのあと、どうにか種まきさん、もといルイスの機嫌を直したオレたちは、改めて自己紹介をし合っていた。
といっても、オレは自己紹介するにも何も覚えてないから出来なかったけど。
とりあえず、仲良くできそうなので安心しているところである。
「さて、じゃあそろそろいいかな?」
「なにが?」
落ち着いたところでそう聞いてきたルイスに、首をかしげて返事をしたら物凄く呆れられた。
そろそろいいかなって、なんかあったけ?……あっ。
「あぁ、思い出した?もし今本気で忘れてて、すぐに思い出さないようなら、もう頼まれてもやってやるもんかと思ったけど…そうじゃないようで安心したよ」
「ごめんなさい、そうでした、記憶を戻すんでした」
すっかり忘れてました。すみません。
謝れば、さっさと終わらせたいとでも言いたげに雑にオレの頭を掴んだ。
そこから何かふわふわしたものが流れてくる。なんだろうこれ、と思っていれば、律儀にもリピが魔力だと教えてくれた。
ただ、その教えてくれた声が遠退いて、後に続く言葉が聞こえにくくなり、オレの意識は途切れた──
───────────
目の前に広がる景色は焼け野原。
つい先日まで美しい草花が生えていたそこは、その記憶とは全く別の姿で自分を迎えた。
その惨状を呆然と眺めるしかできない自分は、かつてそこに暮らしていた生き物たちからしたらとても無力で、恨むべきものなのだろう。
だって、この惨状は、この地を壊したのは、他でもない、自分なのだから。
いくら後悔したところで、命は戻らないし、自分の今の状況も変わらない。
取り返しのつかない間違いを選択してしまった自分のミスだ。自分のせいなのだ。
気付けば自分は地面に膝を付き、静かに涙を流していた。
泣いたところで、何も奇跡なんて起こらないのに。
ただ、泣くしか出来なかった。ふざけるな、と、自分で自分を殴りたいぐらいに、焼け野原の中心で泣いていた。
どれだけの時間が経っただろう。何日、何週間、下手をすれば何ヵ月と経っていたかも知れない。
枯れない涙が、止まった。
ずっと流れていた涙が栄養となったのか、座り込んだ自分の手元に小さな草が生えていた。
何かの花なのか、はたまたただの雑草なのかはわからない。
でも、それに気づいたとき希望が見えた気がした。
死んだものは、消えたものは戻らない。今、自分がやるべきことは泣くことではない。
戻らなくても、新たに生まれてくるのだ。草木も、人も、動物も、全て。なら、自分がやるべきことは?
ようやく気づいたか。隣からそんな声が聞こえた。
驚いてそちらを見れば、そこにはいつの間にか──
「────」
名前を呼ばれた、気がした。
───────────
─おかしいと気がついたのは、ルイスの魔法がいつまでも続いていることに違和感を覚えた時だった。
普通、記憶を見る魔法はそんなに時間がかからない。今までもそうだったように、今回もすぐに終わらせて、いつもの調子で成功の報告をするものだと思っていた。
しかし、一向に動く気配のない二人。嫌な予感がしてすぐに引き剥がす。
手が離れた瞬間、ルイスは水から上がった様に息を吸い咳き込んだ。
ルイスの無事は見なくてもわかるので構わないでおく。問題はあの子だ。
パッと見ただけでは先程と何ら変わりないように見えるが、しかしその開かれた瞳は何も映してはいなかった。
ぼうっと遠くを見るようなその瞳には、何の感情も見えない。
まだ息を調えられていないルイスが、焦ったように叫ぶ。
「な、まえ…を…!!早く、しないと…!ジャン…君が、呼べ!!その子の…名前は…───」
その言葉が耳に届いた瞬間、いや、届く前からオレはその名前を叫んでいた。
「──カナメ!!!」
何度も、意識が戻るまで何度もその名を呼ぶ。肩を掴んで揺らし、ひたすら叫ぶ。戻ってこいと、帰ってこいと念じながら。
何が起きているのか全くわからないが、流石のルイスもはじめてのことなのだろう。頭を押さえ、息を調えながらこちらを眺めている。
果たしてこの子─カナメのどんな過去を見たのかはわからないが、おそらくその過去がいけなかったのだ。
心を壊すような何か、あるいは意図的に削除された記憶なのか。魔法を使った方のルイスでさえもあの様子だ。ろくなものではないだろう。
失敗した。記憶を取り戻したがっていたから、よかれと思ってルイスに頼んだのだが、どうやら裏目に出たようだ。
このまま元に戻らなかったらどうしよう?それだけは絶対に嫌だった。
だって、漸く見つけたのだ。漸く、会えたのに─
「…っ!カナメ!!戻ってこい!!カナ!!!」
頭を過った不思議な感覚はすぐに掻き消えた。ただ必死にその名前を呼ぶ。何故か自然と愛称で呼んでしまったことにも気づかずに。
そのとき、カナメの目が動いた。
───────────
ゆっくりと意識が浮上する。ぼうっとする頭に、無機質な声が響く。
『称号【過去からの転生】習得。それに伴い、特殊スキル【愁嘆の繰返し】を習得。このスキルは、一定の時間以内ならば後悔した選択肢まで戻れます。同時に、独立スキル【森の案内人】が、独立スキル【万物を知る精霊】に進化。種族、生息地に関係なく【鑑定】が行えます。また、個体レベルやスキルレベルのレベルアップ、新たなスキルの習得の際お知らせすることが出来ますが、onにしますか?offにしますか?』
よくわからないまま、とりあえずonにしておく。
だんだんと意識がはっきりしてきた。しかし、水の中のように先程の声以外は何も聞こえない。
真っ暗な視界の中で、遠くに何か光が見えた気がした。
そちらに向かって歩こうにも、やはり感覚は水の中のようで。泳ぐようにしても、体は進まなかった。
暗闇は心地よく、このままでも良いのではと思わせてくる。でも、それではダメなんだとわかっている。
「────」
くぐもっていてよくわからないが、何か声が聞こえた気がした。
「──────」
どうにも聞きにくいが、きっとこれは知っている声なのだろう。
「───……────」
何を言っているのかわからない。でも、これは…この声は…
「……カナメ!!戻ってこい!!カナ!!」
帰らなくては。戻らなくては。そう思ったその瞬間、真っ暗闇だった世界が、真っ白に染まった。
気づくと目の前にはジャンの顔。ちょっとビックリした。え、まって、近くなぁい??
「……?あれ、オレ…?」
「カナ!!戻ってきた…本当に、良かった……」
パチリ、と瞬きをする。おや、何故ジャンさんは泣いているのだろう?なんだか夢を見ていた気がするが、不思議なことに何も覚えていない。
あれだ、ルイスが魔法使うよーって言って、その魔力を感じたあと、なんか意識が遠退いた気がする。寝ちゃったとかじゃあ、ないよねこれ。
というか、過去の記憶とやらもなんだか思い出した感じがしないぞ?うーん…なんか、暗いところでリピの声が聞こえた気もするけど、あれが過去の記憶な分けないよね?
あと、なんかめっちゃジャンの声が聞こえた。過去の記憶ならジャンはいないだろうし、もしかして魔法失敗したの?
だからジャンさん、泣いてるの?
「どこも変なところはないか?なんかぼうっとしたりしないか?体調は?気分は?大丈夫か?」
まてまて、心配はありがたいけど一気に聞きすぎですよ。
「待って、まずは落ち着くところからはじめよう?オレは特に何も無いから。大丈夫だから」
そう言えば、今度は無言でこちらをじっと見つめてくる。え、なんか怖い。
「カナ、あれ、何か分かるか?」
そう言ってジャンが指差したのは、床から生えてるよくわからない草。何あれ。
「うーん…草?あ、何かの薬草だったっけ?」
そう答えれば、難しい顔をしながら、次々と家の中の物を指していく。
「あれは?」
「テーブル」
「あれ」
「なんかの棚」
「あっち」
「ご飯作るところ?」
「あれ」
「ルイス」
「俺は?」
「ジャン・マリオン!」
「よし」
いつぞやの言葉の練習を思い出すようなやり取りである。何やらルイスが「あれってなに、あれって」と呟いているけど、どうやらジャンから合格を貰えたらしいので気にしない。
ふむ、しかし本当にどうしたのだろう?
「ところでジャン、オレ何も思い出せてないんだけど、魔法って失敗したの?」
直球で聞いてみた。そうしたらどうだ?ジャンもルイスも、目を見開いてこっちを凝視するじゃあありませんか。だから怖いってば。
「覚えて、ないのか?…いや、それはそれでいいのかも知れねぇな…うん、覚えてないなら気にするな。お前の名前なら、ルイスが引き出したから」
気にするなと言われれば、余計気になるものなのだが…って、そう言えば特に違和感を感じなかったから気にしてなかったけど、そう言えばさっきからジャンがなんか呼んでたような…
「名前、カナメ…オレの名前、カナメ!」
ストン、と何か足りなかった物が落ち着いたような感覚がした。
名前を聞いても、他の記憶は思い出せなかった。でも、それでいいのかもしれない。いつか来るべき時に、きっと思い出せるだろう。
その日は、ジャンとルイスと三人で飯を食べて、さんざん騒いだ後に全員が寝落ちした。なんかノリが修学旅行のようだったけど、楽しかったからまぁいいだろう。
意識が途切れる瞬間、出会った頃のように無機質なリピの声が聞こえた。
『…過去の能力のアップデート、完了。過去の記憶の消去、完了。名前「カナメ」、登録完了。ステータスの偽装が可能になりました。設定を登録してください。パーティーメンバー未定。「ジャン・マリオン」と「ルイス」を仮登録。誰かが経験値を得たさい、他のメンバーは得た経験値の1/3の経験値が得られます。その他、この世界から失われてしまった過去の魔法をアップデート。…アップデート成功。このまま特殊スキル【学ぶ者】の習得を………』
眠い頭はその言葉の意味を理解できず、思考を放棄した意識はそのまま眠りに落ちた。
この時、もしもオレが眠くなかったら、もしも眠気が覚めてリピと会話をしていたら。もしかしたら、他の未来があったのかもしれない。
そんなもしもの話は、もしもの未来は、大分後になって後悔と共に押し寄せて来るのだった──
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