処刑回避で海賊に就職したら、何故か船長に甘やかされてます。

蒼霧雪枷

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「いいか野郎共!陸にいるのは三日間だ!天気次第だが、四日後の朝には出るからな!」
「保存食は今から買ってもいいけど、他の食べたいものは最終日に買うよーに。それじゃ、衛兵に捕まらない程度にはしゃいでこい!」
「「「ぃよっしゃあー!!!!」」」
「わーい!」
「おっと、お前はこっちだアレク」
「なんでっ!?」

 我ら夜波の海賊団、本日は久しぶりの陸地である。自由時間を与えられた男たちは、やれ酒だやれ娼館だと我先に飛び出していった。
 対して私は、特に行きたい場所もないという下っ端仲間のレックとマルズの二人と共に街を回る予定であった。
 元々浅黒い肌の金髪イケメンなレックと、優しげなたれ目で船長とは違う青空のような髪のマルズ。この二人はとても仲が良く、うちで二番目のコンビである。ちなみに一番は船長とドミニク副船長だ。
 この二人も比較的新人の立場であり、私も交えて新人三人組と可愛がられている。

 そんな二人と街に飛び出そうとすれば、突然首根っこを捕まれた。首は絞まらなかったが、おかげで前に進めない。
 振り返った二人が、あーあ…という風な顔をした。いいから助けて欲しい。

「アレクってば、また何かやらかしたんでしょ。仕方ないから宿屋で待っててあげるよ」
「早めに反省して解放して貰わねぇと、俺ら二人で街回っちまうからなー!」
「えっ、ちょっ、二人の裏切り者ぉー!!」

 大変良い笑顔で片手を上げ、さっさと行ってしまった二人。言葉や表情の裏側に、「船長の説教に巻き込まれないうちに逃げよう」という感情が丸見えであった。くそぅ。
 じたばたと暴れるが、どうやら見逃してはくれなさそうである。一応アレはもう終わったので、あまり警戒するようなことはないのだが…

「んじゃ、病院いくぞ」
「…い、嫌だー!!!」

 めっちゃあった。なんですと。
 病院と聞いて本気で嫌がる私に、船長と副船長は子供のように扱って病院への道を進む。微笑ましそうにこちらを見るドミニク副船長が、これ程憎いと思ったことはないだろう。
 別に注射しないとか言われても、私が嫌がる理由は違うので何も安心できないのだが。

 抵抗虚しく、街の小さな病院につれていかれた。
 この街はうちの海賊団御用達の街で、特に悪さもせず買い物をして金を振り撒いていくのでいい客として親しまれている。私も既に何度も来たことがある。
 この二年間健康でやって来たため、この街の医者との面識はない。こんなことになるなら、先に顔合わせをしておいて共犯者でも作っておくべきだった。
 足元で心配そうに鳴くイーヴォは、ドミニク副船長に捕まって病院の外での待機となった。あぁ、精神安定剤が…

「おい、じーさん。患者だぜ」
「なんじゃ、ロクサスか。ワシの弟子じゃ不満か?」
「うちの船医は優秀だよ。ただ、コイツが嫌がンだ」
「ほぅ?最近、お前さんのとこに幼い子までも入ったと聞いたが…おや?」
「ぼぼぼぼく大丈夫なんでほんと、いやもうめっちゃ元気……え?」

 病院に居たのは、おじいちゃん医者だった。顎に白い髭を生やし、白衣がとても似合っている医者というより科学者っぽく感じる人だ。
 いやしかし、なぁんか見たことある気がするんだよなぁ、このおじいちゃん。年齢的に、今世のお祖父ちゃんと同年代のような…お祖父ちゃん?

「あ、え?も、もしかして…ゲンさん…?」
「おぉ!やはり、アレクs」
「はい!!アレクです!!!お久しぶりです!!!」
「おぉ、お?」

 あっっぶない。本名を言われるところだった。偽名を使うよりは本名からそのまま持ってきた方が変に怪しまれないと思っていたが、まさか知り合いに会うとは思わなかった。
 国から出ていたから油断していた。彼はゲンロース・ロビンソン。私のお祖父ちゃんの友人で、薬学研究で世界中を飛び回っていた人だ。
 今は弟子も一人立ちし何処かに隠居していると聞いていたが、まさかここだったとは。
 先程とは打って変わって、飛び付くようにゲンさんへと近づく私。それに船長が不満そうな顔をしたが、そんなこと知ったこっちゃない。
 ともかく、何か言われる前に話をつけなくては。

「僕ゲンさんなら平気だよ、船長!別に元気だけど、久しぶりに話したいな!」
「知り合いだったとはな。話してぇなら診察のあとだ。じーさん、コイツ怪我隠してやがったんだ。一週間もな」
「ふむ?それはそれは…どれ、アレクの体の調子も気になるしのぅ。診察するから、お主はほれ、心配なら待合室に居ってよいからここを出なさい」
「俺の部下だぞ。別に居ていいだろ」
「ほっほっ。誰しも知られたくない過去と言うものがあるじゃろうて。診察ついでに思い出話でもさせとくれ」
「……チッ。待合室にいる。終わったら呼べ」

 どうやらゲンさんは色々と察してくれたらしい。さらりと追い出された船長が、舌打ちをしつつ少し荒めに扉を閉めて出ていった。
 それにふぅー、と息を吐き出す。取り合えず、これで性別バレの危機はある程度去ったかもしれない。
 ゲンさんが物凄く苦笑いしながらこちらを見てきた。聞きたいことがあるのは分かるし、私も聞きたいことがある。

 あまり長いと船長が来るだろうから悠長にしていられないだろうが、私たちは少しの思い出話と今の話をすることにした。






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