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私は、ゲンさんに家出の理由と現状を話した。前世の記憶云々は言えないが、実はこの世界に存在するもので言い訳ができるのだ。
「─ふむ、"精霊のお告げ"か。それでアレクシアは、レーベアル侯爵家が処刑される未来を変えるために家出したのじゃな」
「うん。一番は学園に通わないことだと思ったから…今思えば、正直に言っても良かったのかも知れないけど。びっくりして、どうにかしなきゃと思って…」
「いや、自分が死ぬ未来を知ったのじゃから仕方ないじゃろう。よくぞ一人でここまで頑張ったのぅ」
「ゲンさん…!」
精霊のお告げ。それは、精霊が管理し守っている世界樹の不調を治すために行われる別名『世界の修繕』と呼ばれるもの。
世界樹の枝と言うのは、枝の一つ一つがこの世界で生きる生物の一生なのだ。枝が傷めば未来が危うくなり、折れるとその人生が終わる。
そして、それは決して運命ではなく世界の"歪み"であるらしい。枝が痛まずとも危うい未来があるならそうなるし、折れずとも死ぬときは死ぬ。
しかし傷んだ枝を放っておけば、近くの枝も傷んでしまう。折れた枝をそのままにしておくと、そこから病気にかかってしまう。世界樹というのは強く雄大であるが、案外脆く弱いものだと教えてくれたのは精霊であるイーヴォだ。
そして世界樹が枯れてしまうことを防ぐため、精霊が『修繕』する。それが精霊のお告げ。告げられた人は無意識にその未来をどうにかしようと動くため、結果枝の傷みも治っていく。折れた枝からは、新たな枝が生えてくる。
そうして世界を守っているのだ。
申し訳ないが、私はその話を利用させてもらった。そう言えば余計な詮索もされないし、私の場合は仕方がないとある程度許される範囲のことだからだ。
…いや、流石に海賊やってましたは怒られるだろう。これに関してはお告げ関係なく、私が入りたかっただけだし。
「しかし、まさかお主が海賊とはのぅ…すっかりお転婆になりおって。家に戻るつもりはないのか?」
「うーん…正直、ゲンさんと会うまで家に戻るっていう発想がなかったから、なんとも。それに、戻るとしてもまだ先だよ。何かあるとすれば今年だから、今戻ったら意味がないかもしれない」
「そうか…皆心配しとったぞ。いくら置き手紙があったとしても、お主一人が背負うには大きすぎる問題じゃ。別の国にいくなら留学でも何でも手はあるだろうに」
それは考えなかった訳ではない。しかし、私が貴族社会にいる、というのが駄目な可能性もあったのだ。もしかしたらゲームとは関係なく、家を潰したい奴らがスパイ疑惑でも出してくるかもしれないし。
そう言えば、ゲンさんも理解してくれたのかどうしようもないという風にため息をついた。なんか、巻き込んだようで申し訳ない。
「お主の現状は教えた方がいいかの?」
「…ううん。流石に海賊してます、なんて言えないよ。言うんなら、余計な誤解を生まないためにも自分で言いたい」
「そうか…なら、たまたま見掛けたと言おう。あやつらも、お主の生存を知れば気も楽になるじゃろうて」
「それはお願い。元気でやってますって、楽しく旅してるよって伝えておいて!」
「あい分かった。しかし、隠居しとるグレウスにぐらいは合ってもよいのではないか?顔を見せるぐらい…」
「駄目だよ。顔を見せるのはいいけど、私一人の問題で何日も出航を遅らせる訳にはいかないから」
「……すっかり海賊じゃのう」
その言葉に嬉しそうに笑えば、褒めとらんと軽くチョップを食らった。でも私にとっては誉め言葉だったんだもん。ちなみに、グレウスと言うのは、今のお祖父ちゃんの名前である。
話の流れで家族のことを聞けば、皆元気にやっているとのことだった。私のことは心配だけど、イーヴォが付いていったことに気づいて多少は安心していたらしい。良かったねイーヴォ。私の家族から信頼されてたよ。
そして、ようやく私は今抱えている問題を話した。女子バレを防ぐにはどうしたらいいですか、と。
「うぅむ…そればかりは何とも……ワシからは何も言えんよ。周期をずらす薬は出せるが、飲み過ぎると子供が出来ない体になる。あまりお勧めはできんなぁ」
「そうだよね…うーん、流石に子供が出来なくなるのはなぁ…私にだって子供が欲しい気持ちはあるし…」
前世は彼氏というものに縁は無かったし、片想いのまま若くして死んでしまった。そのおかげか、今世では結婚して家庭を持ちたいと、適齢期を過ぎた人が思うような願望がある。
まぁ、海賊やってる時点でその夢は遠退いている気がするが。別に貴族じゃなければ結婚適齢期はある程度長いし、流石に性別を隠しきれなくなったら考えればいいかと思考を明後日に投げる。
しばらく二人でウンウン唸っていれば、あぁ!とゲンさんが声を出した。
「他の女性に聞いて見ればよかろう!血の臭いを誤魔化せればいいんじゃろ?」
「……ゲンさん、私今男の振りしてるんだよ?どうやって聞けって言うのさ」
「…まさかお主、性別を知っておる協力者を作っとらんのか?」
「…………ハイ」
今度は呆れたようなため息をつかれた。だって、陸にいる時間は短いと言うのにどうやって信頼できる協力者を作れと言うのか。
それに今日もそうだが、陸にいる間私には必ず誰かが付いている。迷子防止と、単純に幼い私の保護者係である。どうやって作れと言うのか(二回目)
それを言えば、一つ丁度良い場所があるという。食い気味に聞き返せば、思わぬ所を提案された。
「娼館に行けばよい。そこの客なら女と疑われることもないし、個室じゃから話が聞かれることもないからのぅ」
そ、それは果たして船長が許してくれるのだろうか…?
「─ふむ、"精霊のお告げ"か。それでアレクシアは、レーベアル侯爵家が処刑される未来を変えるために家出したのじゃな」
「うん。一番は学園に通わないことだと思ったから…今思えば、正直に言っても良かったのかも知れないけど。びっくりして、どうにかしなきゃと思って…」
「いや、自分が死ぬ未来を知ったのじゃから仕方ないじゃろう。よくぞ一人でここまで頑張ったのぅ」
「ゲンさん…!」
精霊のお告げ。それは、精霊が管理し守っている世界樹の不調を治すために行われる別名『世界の修繕』と呼ばれるもの。
世界樹の枝と言うのは、枝の一つ一つがこの世界で生きる生物の一生なのだ。枝が傷めば未来が危うくなり、折れるとその人生が終わる。
そして、それは決して運命ではなく世界の"歪み"であるらしい。枝が痛まずとも危うい未来があるならそうなるし、折れずとも死ぬときは死ぬ。
しかし傷んだ枝を放っておけば、近くの枝も傷んでしまう。折れた枝をそのままにしておくと、そこから病気にかかってしまう。世界樹というのは強く雄大であるが、案外脆く弱いものだと教えてくれたのは精霊であるイーヴォだ。
そして世界樹が枯れてしまうことを防ぐため、精霊が『修繕』する。それが精霊のお告げ。告げられた人は無意識にその未来をどうにかしようと動くため、結果枝の傷みも治っていく。折れた枝からは、新たな枝が生えてくる。
そうして世界を守っているのだ。
申し訳ないが、私はその話を利用させてもらった。そう言えば余計な詮索もされないし、私の場合は仕方がないとある程度許される範囲のことだからだ。
…いや、流石に海賊やってましたは怒られるだろう。これに関してはお告げ関係なく、私が入りたかっただけだし。
「しかし、まさかお主が海賊とはのぅ…すっかりお転婆になりおって。家に戻るつもりはないのか?」
「うーん…正直、ゲンさんと会うまで家に戻るっていう発想がなかったから、なんとも。それに、戻るとしてもまだ先だよ。何かあるとすれば今年だから、今戻ったら意味がないかもしれない」
「そうか…皆心配しとったぞ。いくら置き手紙があったとしても、お主一人が背負うには大きすぎる問題じゃ。別の国にいくなら留学でも何でも手はあるだろうに」
それは考えなかった訳ではない。しかし、私が貴族社会にいる、というのが駄目な可能性もあったのだ。もしかしたらゲームとは関係なく、家を潰したい奴らがスパイ疑惑でも出してくるかもしれないし。
そう言えば、ゲンさんも理解してくれたのかどうしようもないという風にため息をついた。なんか、巻き込んだようで申し訳ない。
「お主の現状は教えた方がいいかの?」
「…ううん。流石に海賊してます、なんて言えないよ。言うんなら、余計な誤解を生まないためにも自分で言いたい」
「そうか…なら、たまたま見掛けたと言おう。あやつらも、お主の生存を知れば気も楽になるじゃろうて」
「それはお願い。元気でやってますって、楽しく旅してるよって伝えておいて!」
「あい分かった。しかし、隠居しとるグレウスにぐらいは合ってもよいのではないか?顔を見せるぐらい…」
「駄目だよ。顔を見せるのはいいけど、私一人の問題で何日も出航を遅らせる訳にはいかないから」
「……すっかり海賊じゃのう」
その言葉に嬉しそうに笑えば、褒めとらんと軽くチョップを食らった。でも私にとっては誉め言葉だったんだもん。ちなみに、グレウスと言うのは、今のお祖父ちゃんの名前である。
話の流れで家族のことを聞けば、皆元気にやっているとのことだった。私のことは心配だけど、イーヴォが付いていったことに気づいて多少は安心していたらしい。良かったねイーヴォ。私の家族から信頼されてたよ。
そして、ようやく私は今抱えている問題を話した。女子バレを防ぐにはどうしたらいいですか、と。
「うぅむ…そればかりは何とも……ワシからは何も言えんよ。周期をずらす薬は出せるが、飲み過ぎると子供が出来ない体になる。あまりお勧めはできんなぁ」
「そうだよね…うーん、流石に子供が出来なくなるのはなぁ…私にだって子供が欲しい気持ちはあるし…」
前世は彼氏というものに縁は無かったし、片想いのまま若くして死んでしまった。そのおかげか、今世では結婚して家庭を持ちたいと、適齢期を過ぎた人が思うような願望がある。
まぁ、海賊やってる時点でその夢は遠退いている気がするが。別に貴族じゃなければ結婚適齢期はある程度長いし、流石に性別を隠しきれなくなったら考えればいいかと思考を明後日に投げる。
しばらく二人でウンウン唸っていれば、あぁ!とゲンさんが声を出した。
「他の女性に聞いて見ればよかろう!血の臭いを誤魔化せればいいんじゃろ?」
「……ゲンさん、私今男の振りしてるんだよ?どうやって聞けって言うのさ」
「…まさかお主、性別を知っておる協力者を作っとらんのか?」
「…………ハイ」
今度は呆れたようなため息をつかれた。だって、陸にいる時間は短いと言うのにどうやって信頼できる協力者を作れと言うのか。
それに今日もそうだが、陸にいる間私には必ず誰かが付いている。迷子防止と、単純に幼い私の保護者係である。どうやって作れと言うのか(二回目)
それを言えば、一つ丁度良い場所があるという。食い気味に聞き返せば、思わぬ所を提案された。
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