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ゲンさんに手を振り、私は船長たちと共に病院をあとにした。心配そうに見上げるイーヴォを撫でて、私はボーッと考える。
今頭を占めているのは、娼館とかではなく別のことだ。
『あぁ、そうじゃ。先程言い忘れとったんじゃが、王子が気を病むんじゃないかという程の勢いでお主を捜索しとる。まだ帰るつもりがないのなら、フェロウド王国には近寄らん方が良い』
診察が終わったと船長を呼ぶ直前に言われたそれに、私は今大いに悩まされている。
何故なら、王子にそんな探される程の記憶がまっっったくないからである。え、私何かしたっけ。約束すっぽかしたとかだったらまだ気は楽なんだけど、絶対に違うだろうし。
正直、婚約者としての世間体で探してるのでは、としか思い付かないのだ。私は彼に特別好かれるようなことはしていないし、なんならつっけんどんな態度で嫌われていてもおかしくなかったから。
「それじゃ、おれはここら辺で。アレクも街探索楽しんでね」
「…ん?あ、うん!」
うーんと悩んでいれば、いつの間にか宿屋のすぐ近くに来ていたらしい。副船長の声でようやく思考を浮上させる。
隣で船長が呆れたように私を見ている気がするが、きっと気のせいだろう。うん。
手を振って人混みに消える副船長を見送り、私は宿屋で待ってくれているはずのレックとマルズを探しに船長と別れようとして─
「ちょっと待てやコラ」
「ぐえっ」
またしても船長に首根っこを掴まれてしまった。私は猫じゃないんだぞ…!首根っこを掴まないでくれ!!
「な、なんですか船長!僕、そろそろ行かないと二人に置いてかれちゃう…!一人で街を回れっていうんですか!?」
「絶対ぇに一人で歩くな。つか、ちげぇよ…あー、まぁ、何だ。全然詳しく教えちゃくれなかったが、何かヤベェ病気、とかではねぇんだな?」
気まずそうに目を反らしながら頬を掻く船長。私は、そんな船長に不覚にもキュンとしてしまった。だって、珍しく照れてるんだもん。顔が良いから、余計その珍しい表情にキュンとする。
世界一恐ろしい海賊と言われているが、船長は自分の船に乗ってる仲間に対して人一倍心配性らしいとこの二年間で知った。そして、こうしてはっきり心配していると言うときは大体照れることも。
副船長曰く、素で気遣うことに慣れてないらしい。だから言葉にしようとすると、どうにもこっ恥ずかしくなるのだとか。
滅多に見れない船長の様子にこっそりキュンキュンしていれば、何も返答しない私を訝しんだ船長がぐいっと顔を覗き込んできた。
いつも思うけど、この船長距離感が近い!!
「おい、聞いてンのかアレク」
「聞いてます聞いてます!大丈夫っすよ、船長。いたって健康だってゲンさんも言ってたでしょ?」
「テメェらが結託して口裏合わせてる可能性だってあるだろうが」
ギクッ
「い、いや~。流石に死ぬような病気だったら言いますよ~。ゲンさんだって医者なんだし、そこを誤魔化すわけないと思うっすけど…」
「…………はぁ。それもそうだな。止めて悪かった」
パッと手が離されて、急だった為に少しふらついてしまう。船長が支えてくれたため、転ぶことはなかったが。
納得はせずともどうにか誤魔化せたようだが、やっぱり船長は勘が鋭すぎる。全くもって大正解だったよ危ない。
絶対に一人で街を歩かないように、という散々聞いた注意をもう一度聞き、もう二人とも街に出ちゃったかなーと思いつつ宿に入る。と、入ってすぐのロビーっぽい所に二人が居た。
まさかここでずっと待っていてくれたのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「部屋で待ってたら、さっき副船長が来たんだよ。ちょっと話したらすぐ来るだろうから、って。病院大丈夫だった?」
「ま、今回は怪我隠してたアレクが悪いと思うぜ。一週間も血の臭いしてたもんな~」
「えっ!?レックも気づいてたの!?」
「いや、俺どころか全員気づいてたと思うが?」
「なんですと…」
おぉう…流石海賊。犬…いや、この場合は鮫並の嗅覚と言うべきかな。
と言うか、なんか恥ずかしいぞ!!え、全員血の臭いに気づいてたんでしょ!?何か、よくわかんないけど恥ずかしい!!社会の窓が全開だったみたいな恥ずかしさがある!!
一人悶えていれば、顔を見合わせて首を傾げた二人が、パシンと軽く私の頭を叩いた。そこまで痛くないけど、思わず何すんだ!と顔をあげる。
「反省は後にしろって。ほら、早くしねぇと日が暮れんぞ?」
「あ、そうだった!待っててくれてありがとう!早く行こ!」
「街を回るのはいいけど、行きたい所とかないの?」
レックに言われ、思い出したかのように宿をあとにする私たち。適当に市場とかを見て回るだけのつもりだった私は、マルズの言葉にふと考える。
そう言えば、さっきゲンさんに娼館行ってみろって言われたなぁ。
「んーとね、娼館行ってみt」
「お前は俺らを殺す気か」
「アレクにはまだ早いよ」
「うぬぅ…」
食い気味に却下されてしまった。大体、マルズのまだ早いはわかるが、レックの殺す気かは何だ。誰に殺されると言うんだ。
これ、娼館行って協力者作るとか無理なのでは??
今頭を占めているのは、娼館とかではなく別のことだ。
『あぁ、そうじゃ。先程言い忘れとったんじゃが、王子が気を病むんじゃないかという程の勢いでお主を捜索しとる。まだ帰るつもりがないのなら、フェロウド王国には近寄らん方が良い』
診察が終わったと船長を呼ぶ直前に言われたそれに、私は今大いに悩まされている。
何故なら、王子にそんな探される程の記憶がまっっったくないからである。え、私何かしたっけ。約束すっぽかしたとかだったらまだ気は楽なんだけど、絶対に違うだろうし。
正直、婚約者としての世間体で探してるのでは、としか思い付かないのだ。私は彼に特別好かれるようなことはしていないし、なんならつっけんどんな態度で嫌われていてもおかしくなかったから。
「それじゃ、おれはここら辺で。アレクも街探索楽しんでね」
「…ん?あ、うん!」
うーんと悩んでいれば、いつの間にか宿屋のすぐ近くに来ていたらしい。副船長の声でようやく思考を浮上させる。
隣で船長が呆れたように私を見ている気がするが、きっと気のせいだろう。うん。
手を振って人混みに消える副船長を見送り、私は宿屋で待ってくれているはずのレックとマルズを探しに船長と別れようとして─
「ちょっと待てやコラ」
「ぐえっ」
またしても船長に首根っこを掴まれてしまった。私は猫じゃないんだぞ…!首根っこを掴まないでくれ!!
「な、なんですか船長!僕、そろそろ行かないと二人に置いてかれちゃう…!一人で街を回れっていうんですか!?」
「絶対ぇに一人で歩くな。つか、ちげぇよ…あー、まぁ、何だ。全然詳しく教えちゃくれなかったが、何かヤベェ病気、とかではねぇんだな?」
気まずそうに目を反らしながら頬を掻く船長。私は、そんな船長に不覚にもキュンとしてしまった。だって、珍しく照れてるんだもん。顔が良いから、余計その珍しい表情にキュンとする。
世界一恐ろしい海賊と言われているが、船長は自分の船に乗ってる仲間に対して人一倍心配性らしいとこの二年間で知った。そして、こうしてはっきり心配していると言うときは大体照れることも。
副船長曰く、素で気遣うことに慣れてないらしい。だから言葉にしようとすると、どうにもこっ恥ずかしくなるのだとか。
滅多に見れない船長の様子にこっそりキュンキュンしていれば、何も返答しない私を訝しんだ船長がぐいっと顔を覗き込んできた。
いつも思うけど、この船長距離感が近い!!
「おい、聞いてンのかアレク」
「聞いてます聞いてます!大丈夫っすよ、船長。いたって健康だってゲンさんも言ってたでしょ?」
「テメェらが結託して口裏合わせてる可能性だってあるだろうが」
ギクッ
「い、いや~。流石に死ぬような病気だったら言いますよ~。ゲンさんだって医者なんだし、そこを誤魔化すわけないと思うっすけど…」
「…………はぁ。それもそうだな。止めて悪かった」
パッと手が離されて、急だった為に少しふらついてしまう。船長が支えてくれたため、転ぶことはなかったが。
納得はせずともどうにか誤魔化せたようだが、やっぱり船長は勘が鋭すぎる。全くもって大正解だったよ危ない。
絶対に一人で街を歩かないように、という散々聞いた注意をもう一度聞き、もう二人とも街に出ちゃったかなーと思いつつ宿に入る。と、入ってすぐのロビーっぽい所に二人が居た。
まさかここでずっと待っていてくれたのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「部屋で待ってたら、さっき副船長が来たんだよ。ちょっと話したらすぐ来るだろうから、って。病院大丈夫だった?」
「ま、今回は怪我隠してたアレクが悪いと思うぜ。一週間も血の臭いしてたもんな~」
「えっ!?レックも気づいてたの!?」
「いや、俺どころか全員気づいてたと思うが?」
「なんですと…」
おぉう…流石海賊。犬…いや、この場合は鮫並の嗅覚と言うべきかな。
と言うか、なんか恥ずかしいぞ!!え、全員血の臭いに気づいてたんでしょ!?何か、よくわかんないけど恥ずかしい!!社会の窓が全開だったみたいな恥ずかしさがある!!
一人悶えていれば、顔を見合わせて首を傾げた二人が、パシンと軽く私の頭を叩いた。そこまで痛くないけど、思わず何すんだ!と顔をあげる。
「反省は後にしろって。ほら、早くしねぇと日が暮れんぞ?」
「あ、そうだった!待っててくれてありがとう!早く行こ!」
「街を回るのはいいけど、行きたい所とかないの?」
レックに言われ、思い出したかのように宿をあとにする私たち。適当に市場とかを見て回るだけのつもりだった私は、マルズの言葉にふと考える。
そう言えば、さっきゲンさんに娼館行ってみろって言われたなぁ。
「んーとね、娼館行ってみt」
「お前は俺らを殺す気か」
「アレクにはまだ早いよ」
「うぬぅ…」
食い気味に却下されてしまった。大体、マルズのまだ早いはわかるが、レックの殺す気かは何だ。誰に殺されると言うんだ。
これ、娼館行って協力者作るとか無理なのでは??
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