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第三章 新大陸に向けて…
第四話 急造異世界パーティー・後編
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僕達は海底ダンジョンに着いた。
ダンジョン内も水で満たされている…と思っていたが、中には空気があって助かった。
…が、中は磯臭いと言うか…魚市場の様な匂いが辺り一面に広がっている。
勇者エイジは元々、海の地方の出身らしいので問題は無いのだが、勇者テルミと勇者紫乃はこの匂いがあまり得意では無いらしく、顔を顰めていた。
「では、これから作戦を話すね。今回は、海底ダンジョンを進んで海底神殿に辿り着く事と、海が荒れた原因であるダンジョンコアの復興と管理者を正気に戻すと言うのが今回の作戦だ。」
「管理者…と言うのに何かあったのか?」
「原因は分からないが、何やらダンジョンコアと管理者が暴走をしていると言う話らしい。」
「じゃあ、私達は…その管理者というのを倒すのが…」
「いや、管理者はあくまでも正気に戻す為に、ある程度弱らせるのが目的だ。まぁ、その管理者というのは、人では無くて、クラーケンらしいので…」
「あぁ、だから聖属性と光属性のホーリーには、荷が重かったんだな。」
「そういう事。」
召喚獣を召喚して対処をすれば、問題は無い…と言いたい所だけど、仮に威力が高過ぎて倒してしまったりしたら大問題に発展する。
僕の契約した召喚獣は、かなり力を持ったものが多いので…クラーケンが想像した通りの大きさなら、イクシオンでも問題は無いのだろうけど。
仮に人型のクラーケンだったりすると、抵抗力がどの程度かにもよるけど…イクシオンだと威力があり過ぎるかもしれない。
「それにしても…お前達の武器って貧弱だな。」
「な、何だと‼︎」
「私達の武器のどこが⁉︎」
「いや、勇者エイジは鋼の剣で女子勇者2人は鉄の剣って…この世界では、ミスリルとかは滅多に出回らないという話なので、見窄らしいと思ってな。」
「仕方が無いんだよ!男神グリスガイアの加護は、身体強化以外の魔法しか使えない、武技に秀でた加護なのだからな!鉄の剣だと耐えられなくて、すぐに砕けるんだ。」
「だとすると、勇者エイジは本来は大剣が有効な武器じゃ無いか?」
「そうなのだが、滅多に出回って無い上に高くてな。これで代用をしている。」
まぁ、男神と聞いた時点で脳筋じゃ無いかと思っていた。
だから、その加護も…武器攻撃に特化した神なのか。
「私も仕方なくこの鉄の剣を使っているんだけど、本来は細身の剣が使いたいんだけどね。でも武器屋に特注で作って欲しいと伝えても、そんな脆い剣で何をするのかって言われてね。」
「細身の剣って、レイピア?」
「そう、私は元々フェンシング部に所属していてね。この広刃の剣よりレイピアの方が使いやすいの。」
僕は勇者紫乃の手を見ると、明らかに不慣れな剣でマメが多くあった。
話では、フェンシングの柄は広刃の剣よりも細く作られていて、握りも独特という話だった。
「私もこの剣を間に合わせで使っているんだよ。私の家は元々は剣術道場で、居合刀を使用していて、そちらの方が使い易いんだけど…この世界には異世界人も結構多く来ていたらしく、当時は刀を作っていた職人もいたらしいんだけど、使い勝手が難しいらしくて、もう作れる職人は存在しないって…」
確かに、日本刀の柄と鉄の剣の柄では形が違う。
柄が真っ直ぐな鉄の剣とは違い、日本刀の柄は少し曲線を描いている。
使い難い事は否めないよな?
僕は創造神のギフトを使用して、ストレージの中で魔導錬成をして3種類の武器を完成させた。
それを、勇者3人に渡してやった。
「まず、勇者エイジに渡す剣は…オリハルコン製のグレートソードだ。ただし、この剣には属性が付与されていない、ただのオリハルコン製の大剣なので、暫く使った後に属性が必要になったら付与してあげるよ。」
「良いのか?」
「あぁ、今回の作戦に協力してもらう為の報酬だよ。」
「私の刀は…オリハルコンの青い刀身とは違って、赤い刀身ね?」
「勇者テルミの刀は、オリハルコンと同等の金属であるヒヒイロカネを使用している。見た目は赤い刀身だけど、これにも属性は付与していないから…後日欲しければ付けてあげるよ。」
「………ホーリー、今迄に私に対する非礼を全て水に流そう。」
「私のレイピアは…緑色の刀身ね?」
「それはミスリルで作られていてね、オリハルコンやヒヒイロカネは強度が高い分しなりが無いのでミスリルの柔軟な素材で代用をさせて貰った。オリハルコンやヒヒイロカネに比べると強度は少し落ちるけど、それでもそれなりの強度はあるから…鋼よりはよっぽど強いよ。それにミスリルは、固有属性で風の属性が宿っているからね。」
「ホーリー君、有り難うね!」
そして僕は、皆に鍔にある刻印に血を垂らすと命じる為にナイフを渡した。
皆は言うことを聞いて血を垂らすと、それぞれの剣が光り出した。
「これは…?」
「この剣の所有者が君達の物になった証明だよ。盗まれて、他人に使われたら厄介だろ?」
「なるほど、そういう契約か!」
「他にも…まぁ、ダンジョンを進みながら説明するよ。他にももう1種類だけ能力を追加しているからな。」
僕達は準備が出来たので、ダンジョンを進んで行った。
ダンジョンは迷宮型になっていて、10m位の縦幅と横幅で…ちょっとしたトンネルの様な感じだった。
何故にこんなに広いのか…と考えていると、ダンジョン内の魔物の中には、それなりに大きい魔物が出現したのであった。
僕達はそれ等を倒しながら進んで行った。
正直言って、鉄の剣や鋼の剣では刃が立たなかったと思うくらいの、ヒュドラやシータートルが出て来たのだが、武器の性能が段違いな物を渡していたお陰で、サクサクと進む事が出来ていた。
「かなり進んで来たと思うが、今はどの辺りなんだろうな?」
「このダンジョンは、中々の広さだからね…まぁ、全てを調べる為に…右手を壁にして進んでいる訳だから、それなりに時間もかかる訳なんだがな。」
「ダンジョン攻略の鉄板だね!どこに何があるか分からないしね。」
「それにしても、海底ダンジョンというだけあって、魔物の殆どが水属性なんだな?」
「全てが全てと言う訳ではないが、鑑定魔法を使っている限りでは…水属性の魔物が多いのは確かだな。」
「ストレージ以外に鑑定魔法まで使えるのかよ?ホーリーの神様は、俺達の神より余程優秀な神なんだな?」
「いや、僕の女神トゥエルティスは、十二神の中で末端の神だって話していたよ。」
「末端でこれかよ‼︎」
そんな事を話しながら進んでいくと、地下に降りる階段を見つけた。
僕達はその階段の中間で、休憩をする事にした。
「ふぅ…久々に肉を喰ったが、やっぱり美味いな!」
「そうね、この世界に来てから…あまり肉は食べられなかったからね。」
「いつも干し肉を齧っていたなぁ。肉らしい肉は久しぶりだ!」
「お前等は普段何を喰ってんだ?」
肉らしい肉はが久しぶりというのには、一応理由がある。
貴族の料理人は、肉を捌く時に血抜きをしてから提供されるのだが…?
それに比べて、一般に出回っている肉は血抜き処理が中途半端で、臭くて喰えたものじゃなかった。
ラミナやクリスは、獣人族の所為なのか…?
そう言った血抜きをされていない肉でも食べられるみたいだが、異世界組にはそれ等の肉は受け付けないのだろう。
「なぁ、ホーリー…一緒に旅をしないか?」
「またその話かテルミ…僕は魔王退治には興味が無いと言っただろう。」
「いや、食事係りとして…」
「僕に雑用を押し付ける気か⁉︎」
「やっぱりダメか…」
「今回の作戦が終了をしたら、お前達にマジックバッグを作って渡してやるよ。その中に食糧を入れておいてやるから…」
「無くなった場合はどうすれば良い?」
「それまで頼る気か?自分で捌く事を覚えろよ。」
こいつ等…魔王退治をする前に、空腹で倒れるんじゃ無いか?
僕が以前に作ったマジックバッグは、争いの種にならない様に馬車1台分の荷物位しか入るスペースがない様に作られている。
あまり巨大なスペースのバッグを作ると、値段も高額になる上に、それ目当てで襲われる事もあるからだ。
「お前等は少しは料理を覚えろよ。」
「言っておくが、俺はカップ麺以外は作れん!」
「威張るな!」
「私はカレーを…」
「レンチン御飯とレトルトは、料理とは言わないぞ!」
「あぅ…」
「私は…食材を切る位しか出来ない。」
「お前等なぁ…魔王退治をするまでに、どれ位の日数が掛かると思っているんだ?」
まぁ、勇者は他に2人の計6人居ると言う話だし…?
仮にこいつ等が倒せなくても、他の2人が倒せれば良いか。
「エイジはともかく、お前等2人は料理くらい覚えろよ。結婚をする時に苦労をするぞ。」
「なら、魔王を倒して異世界から戻ったら料理を教えてよ、私達は会いに行くからさぁ…」
「…と言われてもなぁ?僕はお前等と違って、転移ではなくて転生だからな。僕は魔王を倒されても、元の世界に戻る事はないぞ。それに、仮に帰れたとしても…住んでいる場所が違うだろう?」
「えーっと…私達は全員同じ高校だよ。天夷堂学園だからね…」
「は?僕も生前はその高校だった。僕は普通科の二年だったが…」
「私は体育科のスポーツ特待生だよ~」
「俺も体育科だが、一般入学だった。二年…」
「私は帰国子女枠だったよ。」
「…って事は、クラウドもか?」
「あいつも普通科とか言っていたな?」
僕達の通う天夷堂学園は、幾つかの学部が集まった巨大な学園だ。
校舎が違うので、体育科が何クラスあったかは分からんが…?
普通科だけでも12クラスあるので、同じ普通科のクラウドを知らなくても無理はなかった。
少なくとも…僕のクラスにはいなかったしな。
「なんだよ…全員同じ高校って、あり得ないだろ?」
「う~ん…そこなんだけどね、天夷堂学園の天夷堂が最近では…転移動って言う意味があるんじゃないかと思ってね。だから意図的に、私達の学園内から選別されたんじゃないかと思ってね。」
「…という事は、勇者6人の内の他2人もその可能性がある訳か!」
「それよりもさぁ、ホーリー君は転生者なんだよね?…という事は、向こうで死んでから転生したの?」
「転生という事は、普通そうなんじゃないか?お前は事故で死んだのか?」
「詳しい説明は割愛するが、アルコール度数の高い酒を飲んでから、タワマンの屋上から落ちた。」
「お前…一体何をしたんだ⁉︎」
「だから、割愛すると言っただろう。その時の事は聞かないでくれ…」
女子に告ったらフラれて、ヤケ酒をしてから落ちた…なんていう話は流石に出来ない。
まぁ、紫乃は聞きたそうにしていたが…他の2人は勝手な勘違いをしてくれたみたいで、それ以上聞かれる事がなくて助かった。
「そうか…なら、魔王を倒してもホーリーだけには会えないのか。」
「タワマンの屋上から落ちて、地面に激突した僕の身体が無事なら、帰れる可能性もあるかもしれないが…」
「いや、無理だろ。どう考えても…」
まぁ、普通に考えて無理だろうな。
だから、転移では無く転生をしたという話になった訳なのだから。
僕達は程なくしてから出発した。
…というのも、あんな話を聞かされた後に、これ以上話をする気がなかったという事もあるからだ。
そして、ダンジョンを進んで行き…遂に最深部の神殿に到着をした訳なのだが?
「おかしい…クラーケンと聞いていたんだがなぁ?」
「クラーケンって、確か烏賊だよな?どう見ても、烏賊には見えないんだが…?」
そう、僕達は管理者であるクラーケンと対面をする訳になったのだが、烏賊と呼ぶには相応しくない見た目をした生物が待っていたのだった。
次回、完結編に続く…
ダンジョン内も水で満たされている…と思っていたが、中には空気があって助かった。
…が、中は磯臭いと言うか…魚市場の様な匂いが辺り一面に広がっている。
勇者エイジは元々、海の地方の出身らしいので問題は無いのだが、勇者テルミと勇者紫乃はこの匂いがあまり得意では無いらしく、顔を顰めていた。
「では、これから作戦を話すね。今回は、海底ダンジョンを進んで海底神殿に辿り着く事と、海が荒れた原因であるダンジョンコアの復興と管理者を正気に戻すと言うのが今回の作戦だ。」
「管理者…と言うのに何かあったのか?」
「原因は分からないが、何やらダンジョンコアと管理者が暴走をしていると言う話らしい。」
「じゃあ、私達は…その管理者というのを倒すのが…」
「いや、管理者はあくまでも正気に戻す為に、ある程度弱らせるのが目的だ。まぁ、その管理者というのは、人では無くて、クラーケンらしいので…」
「あぁ、だから聖属性と光属性のホーリーには、荷が重かったんだな。」
「そういう事。」
召喚獣を召喚して対処をすれば、問題は無い…と言いたい所だけど、仮に威力が高過ぎて倒してしまったりしたら大問題に発展する。
僕の契約した召喚獣は、かなり力を持ったものが多いので…クラーケンが想像した通りの大きさなら、イクシオンでも問題は無いのだろうけど。
仮に人型のクラーケンだったりすると、抵抗力がどの程度かにもよるけど…イクシオンだと威力があり過ぎるかもしれない。
「それにしても…お前達の武器って貧弱だな。」
「な、何だと‼︎」
「私達の武器のどこが⁉︎」
「いや、勇者エイジは鋼の剣で女子勇者2人は鉄の剣って…この世界では、ミスリルとかは滅多に出回らないという話なので、見窄らしいと思ってな。」
「仕方が無いんだよ!男神グリスガイアの加護は、身体強化以外の魔法しか使えない、武技に秀でた加護なのだからな!鉄の剣だと耐えられなくて、すぐに砕けるんだ。」
「だとすると、勇者エイジは本来は大剣が有効な武器じゃ無いか?」
「そうなのだが、滅多に出回って無い上に高くてな。これで代用をしている。」
まぁ、男神と聞いた時点で脳筋じゃ無いかと思っていた。
だから、その加護も…武器攻撃に特化した神なのか。
「私も仕方なくこの鉄の剣を使っているんだけど、本来は細身の剣が使いたいんだけどね。でも武器屋に特注で作って欲しいと伝えても、そんな脆い剣で何をするのかって言われてね。」
「細身の剣って、レイピア?」
「そう、私は元々フェンシング部に所属していてね。この広刃の剣よりレイピアの方が使いやすいの。」
僕は勇者紫乃の手を見ると、明らかに不慣れな剣でマメが多くあった。
話では、フェンシングの柄は広刃の剣よりも細く作られていて、握りも独特という話だった。
「私もこの剣を間に合わせで使っているんだよ。私の家は元々は剣術道場で、居合刀を使用していて、そちらの方が使い易いんだけど…この世界には異世界人も結構多く来ていたらしく、当時は刀を作っていた職人もいたらしいんだけど、使い勝手が難しいらしくて、もう作れる職人は存在しないって…」
確かに、日本刀の柄と鉄の剣の柄では形が違う。
柄が真っ直ぐな鉄の剣とは違い、日本刀の柄は少し曲線を描いている。
使い難い事は否めないよな?
僕は創造神のギフトを使用して、ストレージの中で魔導錬成をして3種類の武器を完成させた。
それを、勇者3人に渡してやった。
「まず、勇者エイジに渡す剣は…オリハルコン製のグレートソードだ。ただし、この剣には属性が付与されていない、ただのオリハルコン製の大剣なので、暫く使った後に属性が必要になったら付与してあげるよ。」
「良いのか?」
「あぁ、今回の作戦に協力してもらう為の報酬だよ。」
「私の刀は…オリハルコンの青い刀身とは違って、赤い刀身ね?」
「勇者テルミの刀は、オリハルコンと同等の金属であるヒヒイロカネを使用している。見た目は赤い刀身だけど、これにも属性は付与していないから…後日欲しければ付けてあげるよ。」
「………ホーリー、今迄に私に対する非礼を全て水に流そう。」
「私のレイピアは…緑色の刀身ね?」
「それはミスリルで作られていてね、オリハルコンやヒヒイロカネは強度が高い分しなりが無いのでミスリルの柔軟な素材で代用をさせて貰った。オリハルコンやヒヒイロカネに比べると強度は少し落ちるけど、それでもそれなりの強度はあるから…鋼よりはよっぽど強いよ。それにミスリルは、固有属性で風の属性が宿っているからね。」
「ホーリー君、有り難うね!」
そして僕は、皆に鍔にある刻印に血を垂らすと命じる為にナイフを渡した。
皆は言うことを聞いて血を垂らすと、それぞれの剣が光り出した。
「これは…?」
「この剣の所有者が君達の物になった証明だよ。盗まれて、他人に使われたら厄介だろ?」
「なるほど、そういう契約か!」
「他にも…まぁ、ダンジョンを進みながら説明するよ。他にももう1種類だけ能力を追加しているからな。」
僕達は準備が出来たので、ダンジョンを進んで行った。
ダンジョンは迷宮型になっていて、10m位の縦幅と横幅で…ちょっとしたトンネルの様な感じだった。
何故にこんなに広いのか…と考えていると、ダンジョン内の魔物の中には、それなりに大きい魔物が出現したのであった。
僕達はそれ等を倒しながら進んで行った。
正直言って、鉄の剣や鋼の剣では刃が立たなかったと思うくらいの、ヒュドラやシータートルが出て来たのだが、武器の性能が段違いな物を渡していたお陰で、サクサクと進む事が出来ていた。
「かなり進んで来たと思うが、今はどの辺りなんだろうな?」
「このダンジョンは、中々の広さだからね…まぁ、全てを調べる為に…右手を壁にして進んでいる訳だから、それなりに時間もかかる訳なんだがな。」
「ダンジョン攻略の鉄板だね!どこに何があるか分からないしね。」
「それにしても、海底ダンジョンというだけあって、魔物の殆どが水属性なんだな?」
「全てが全てと言う訳ではないが、鑑定魔法を使っている限りでは…水属性の魔物が多いのは確かだな。」
「ストレージ以外に鑑定魔法まで使えるのかよ?ホーリーの神様は、俺達の神より余程優秀な神なんだな?」
「いや、僕の女神トゥエルティスは、十二神の中で末端の神だって話していたよ。」
「末端でこれかよ‼︎」
そんな事を話しながら進んでいくと、地下に降りる階段を見つけた。
僕達はその階段の中間で、休憩をする事にした。
「ふぅ…久々に肉を喰ったが、やっぱり美味いな!」
「そうね、この世界に来てから…あまり肉は食べられなかったからね。」
「いつも干し肉を齧っていたなぁ。肉らしい肉は久しぶりだ!」
「お前等は普段何を喰ってんだ?」
肉らしい肉はが久しぶりというのには、一応理由がある。
貴族の料理人は、肉を捌く時に血抜きをしてから提供されるのだが…?
それに比べて、一般に出回っている肉は血抜き処理が中途半端で、臭くて喰えたものじゃなかった。
ラミナやクリスは、獣人族の所為なのか…?
そう言った血抜きをされていない肉でも食べられるみたいだが、異世界組にはそれ等の肉は受け付けないのだろう。
「なぁ、ホーリー…一緒に旅をしないか?」
「またその話かテルミ…僕は魔王退治には興味が無いと言っただろう。」
「いや、食事係りとして…」
「僕に雑用を押し付ける気か⁉︎」
「やっぱりダメか…」
「今回の作戦が終了をしたら、お前達にマジックバッグを作って渡してやるよ。その中に食糧を入れておいてやるから…」
「無くなった場合はどうすれば良い?」
「それまで頼る気か?自分で捌く事を覚えろよ。」
こいつ等…魔王退治をする前に、空腹で倒れるんじゃ無いか?
僕が以前に作ったマジックバッグは、争いの種にならない様に馬車1台分の荷物位しか入るスペースがない様に作られている。
あまり巨大なスペースのバッグを作ると、値段も高額になる上に、それ目当てで襲われる事もあるからだ。
「お前等は少しは料理を覚えろよ。」
「言っておくが、俺はカップ麺以外は作れん!」
「威張るな!」
「私はカレーを…」
「レンチン御飯とレトルトは、料理とは言わないぞ!」
「あぅ…」
「私は…食材を切る位しか出来ない。」
「お前等なぁ…魔王退治をするまでに、どれ位の日数が掛かると思っているんだ?」
まぁ、勇者は他に2人の計6人居ると言う話だし…?
仮にこいつ等が倒せなくても、他の2人が倒せれば良いか。
「エイジはともかく、お前等2人は料理くらい覚えろよ。結婚をする時に苦労をするぞ。」
「なら、魔王を倒して異世界から戻ったら料理を教えてよ、私達は会いに行くからさぁ…」
「…と言われてもなぁ?僕はお前等と違って、転移ではなくて転生だからな。僕は魔王を倒されても、元の世界に戻る事はないぞ。それに、仮に帰れたとしても…住んでいる場所が違うだろう?」
「えーっと…私達は全員同じ高校だよ。天夷堂学園だからね…」
「は?僕も生前はその高校だった。僕は普通科の二年だったが…」
「私は体育科のスポーツ特待生だよ~」
「俺も体育科だが、一般入学だった。二年…」
「私は帰国子女枠だったよ。」
「…って事は、クラウドもか?」
「あいつも普通科とか言っていたな?」
僕達の通う天夷堂学園は、幾つかの学部が集まった巨大な学園だ。
校舎が違うので、体育科が何クラスあったかは分からんが…?
普通科だけでも12クラスあるので、同じ普通科のクラウドを知らなくても無理はなかった。
少なくとも…僕のクラスにはいなかったしな。
「なんだよ…全員同じ高校って、あり得ないだろ?」
「う~ん…そこなんだけどね、天夷堂学園の天夷堂が最近では…転移動って言う意味があるんじゃないかと思ってね。だから意図的に、私達の学園内から選別されたんじゃないかと思ってね。」
「…という事は、勇者6人の内の他2人もその可能性がある訳か!」
「それよりもさぁ、ホーリー君は転生者なんだよね?…という事は、向こうで死んでから転生したの?」
「転生という事は、普通そうなんじゃないか?お前は事故で死んだのか?」
「詳しい説明は割愛するが、アルコール度数の高い酒を飲んでから、タワマンの屋上から落ちた。」
「お前…一体何をしたんだ⁉︎」
「だから、割愛すると言っただろう。その時の事は聞かないでくれ…」
女子に告ったらフラれて、ヤケ酒をしてから落ちた…なんていう話は流石に出来ない。
まぁ、紫乃は聞きたそうにしていたが…他の2人は勝手な勘違いをしてくれたみたいで、それ以上聞かれる事がなくて助かった。
「そうか…なら、魔王を倒してもホーリーだけには会えないのか。」
「タワマンの屋上から落ちて、地面に激突した僕の身体が無事なら、帰れる可能性もあるかもしれないが…」
「いや、無理だろ。どう考えても…」
まぁ、普通に考えて無理だろうな。
だから、転移では無く転生をしたという話になった訳なのだから。
僕達は程なくしてから出発した。
…というのも、あんな話を聞かされた後に、これ以上話をする気がなかったという事もあるからだ。
そして、ダンジョンを進んで行き…遂に最深部の神殿に到着をした訳なのだが?
「おかしい…クラーケンと聞いていたんだがなぁ?」
「クラーケンって、確か烏賊だよな?どう見ても、烏賊には見えないんだが…?」
そう、僕達は管理者であるクラーケンと対面をする訳になったのだが、烏賊と呼ぶには相応しくない見た目をした生物が待っていたのだった。
次回、完結編に続く…
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