上 下
25 / 82
怪盗リアラの章

第二十四話

しおりを挟む
 私は薬草園に来ていた。

 今日は薬草園の世話に日ではないので、私が入ると他の神官先輩達に声を掛けられた。

 「リアラ?今日は当番ではないのにどうしたんですか?」

 「少し試したい事があって、薬草と種を幾つか欲しいのですが…」

 「試したい事?」

 「私の加護の【豊穣の恵み】は、畑では普通に作用しますが…植木鉢で育てようとすると、ちゃんと育つかどうかを試して見たくて…」

 「そうですか、熱心なのは良い事ですね。良いでしょう、そちらの中にある薬草と種を持って行っても構いませんよ。」

 「ありがとうございます。」

 私は薬草保管庫に来ると、中にある薬草の苗木や種がある場所に行って拝借しようと背後を気にしていた。

 薬草保管庫の入り口には神殿騎士が警備している。

 だけど神殿騎士は中を覗き込む様な真似はしない。

 保管庫から出る際にチェックされるだけなので、余程保管庫の中身がゴッソリ消えない限りは問題は無い。

 まぁ、私もそこまで馬鹿じゃないから…バレない範囲でパクるんだけどね。

 私が覚えた収納魔法はレベルが低いからなのか、手に平サイズの物しか収納できない。

 だから家具とかベッドとかは収納は出来なかった。

 だけど財布代わりに収納したり、小物とかなら可能だったので…種は打って付けだった。

 私は声に出して選ぶフリをしながら、箱の中にあった薬草の種を両手ですくえる位の量を収納魔法に入れた。

 種だけでどれくらいの量があるのかは分からないけど、大きな箱に満杯に入っているので私の小さい手にすくえる位の量では大して減っていない様に見える。 

 後は一撮みの種を布に包んでから、苗木も幾つか拝借を収納魔法に放り込んで、2つの鉢を持って保管庫から出ようとした。

 「一応規則の為、改めさせてもらう。」

 「はい、どうぞ!」

 神殿騎士は突然声を掛けて来るから心臓に悪い。

 私も後ろめたい事をしているから、更にバレるのではないかと思うと気が気じゃなくなる。

 「この程度なら問題は無いだろう。」

 どうやら収納魔法に入れた物はバレてはいない様だったので一安心だった。

 …とは言っても、この量では到底足りないので何度か足を運ぶ事になるんだけど…流石に毎日やる訳には行かない。

 次はガラス工房からポーション瓶をパクるのと、調合室から調合機材をパクらないとなぁ?

 薬草園では簡単に事が運んだけど、他の2つになると簡単にという訳には行かない。

 「ガラス工房や調合室に行く前に、ネタを仕込む為にあそこに行きますか。」

 2つをパクる為にはある物が必要だった。

 そのある物とは?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,969

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:18,731pt お気に入り:1,315

つつ(憑憑)

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

【完結】異世界昔話 魔王のささくれ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...