第17回漫画大賞 秋の陣終了

第17回漫画大賞 秋の陣

選考概要

今回、編集部内で大賞候補作としたのは「子と丑の願いごと《十二支擬人化のお話》」「アンリミテッドフェアリーパンチ」「闇夜に穿つは月の底」「天聖君はロリコンじゃない!」「大正ノスタルジヰ」「蜃楼施療院譚」「鬼と乙女」「鈴木さんは僕の○○が好き」「十条さんと付き合うとマグロ漁船」「今日から始まる異文化(?)交流」「おじさん大好きな発明家OLと実験台部長」「枯国のブルージィノイズ」「胃の中のカワズ姫」「好きです。殺してください」「LOLI☆スパイ」「アノニマス||カタグラフィ」「送り火の島」「ヌイグルミストで何が悪いッ!」「HINODE」「3年生になったら」の20作品。

個性が光る魅力的な候補作の中から、編集部内で広く支持を得た「蜃楼施療院譚」を大賞(賞金50万円)に選出した。「大賞」作の選出はこれで5大会連続となり、投稿作品のさらなるレベルアップを感じさせる結果となった。

続く各賞の選考では、次いで支持を集めた「闇夜に穿つは月の底」を編集長賞(賞金10万円)に、「大正ノスタルジヰ」を優秀賞(賞金10万円)に、「鬼と乙女」をネコ部長賞(賞金10万円)に選出した。さらに今後の活躍への期待感から、「LOLI☆スパイ」と「好きです。殺してください」を特別賞(賞金5万円)に選出する結果となった。

「蜃楼施療院譚」は、主人公が人間も妖(あやかし)も治せる薬師を目指すファンタジー作品。華やかで安定した画力と、しっかりと練られたストーリー構成が評価を得た。また、人物をそれぞれの目的や心情で動かすことができていることも好印象。人間と妖の見た目の差異をはっきりさせたり、治療法に薬師らしさを強めたりすることで、よりオリジナリティを高められるだろう。

「闇夜に穿つは月の底」は、人の心から生まれた悪鬼を食らう主人公が活躍する、和風ファンタジー。確かな画力と魅力的なキャラ設定、巧みな演出表現が評価された。話数を重ねるごとに成長している構成、空間描写も魅力的。情報の整理、世界観の提示など、読者へ情報提供を行うことを意識することで、更に高いレベルに昇華していってほしい。

「大正ノスタルジヰ」は、大正時代を舞台に、普通とは少し違う二人の少女の日常を描いたファンタジー作品。繊細なタッチと、表情の表現力、臨場感のある情景描写が評価を得た。断片的なエピソードの羅列を、読者の期待を刺激する意図をもって構成できれば、作品の魅力も一気に高まるだろう。

「鬼と乙女」は、赤鬼が干ばつで苦しむ村に雨を降らせるかわり、村娘を嫁にもらおうと奮闘するギャグファンタジー。個性的なキャラクターに、テンポのいいストーリー展開が評価を集めた。背景描写を磨いたり、アングルの変化の幅を広げたりしていくと、より効果的な演出が可能になるだろう。

「好きです。殺してください」は、吸血鬼の女性と、その主である引きこもり気味の青年によるアクションファンタジー。インパクトのある見せ方と、安定した画面構成力が評価を得た。一方でストーリーは読者に理解してもらおうとする意識がやや希薄。読者視点でより分かりやすい構成を意識できると良いだろう。

「LOLI☆スパイ」は、幼く見える容姿の主人公が、世間で炎上した案件の火消しを行うギャグコメディ作品。高い画力と、「炎上」「アカウント乗っ取り」など時代性を取り入れたアイデアが評価された。話の展開が直球勝負なので、読者の意表を突く展開やネタを仕込み、見せどころを作ることを意識していってほしい。

惜しくも受賞を逃した14作品もそれぞれに見所があり、将来性を感じる作品ばかりだった。

「子と丑の願いごと《十二支擬人化のお話》」は、擬人化した十二支たちによる、ほのぼの和風ファンタジー。美麗なキャラクター造形と、ストーリーのテンポ感が魅力。今後はストーリーの大筋を設定した上で、各話に見せ場を配置すると、幅広い読者が獲得できるだろう。

「アンリミテッドフェアリーパンチ」は、妖精に転生した女の子二人が活躍する、転生チートファンタジー。引きのあるストーリーや、ユーモラスなキャラのかけ合いが面白い作品。背景や小物も丁寧に描き込まれているので、この調子で画力の向上を追求していってほしい。

「天聖君はロリコンじゃない!」は、前世の彼女が今世では小学生になっていた主人公のドタバタラブコメディ。主人公を応援したくなるようなキャラクターとして描けており、絵柄の安定感も抜群。ヒロインのキャラ立ちがやや弱いので、ヒロインの内面にもっとフォーカスすることを意識してみてほしい。

「鈴木さんは僕の○○が好き」は、消極的な男の子がかわいい女の子に翻弄されるラブコメディ。今どきの愛らしい絵柄と、絶妙な男女のすれ違いが好印象。ストーリーは、キャラクター同士の絡みがもっとしっかりある方が満足度の高い作品になるだろう。また、画面が薄いとキャラクターの印象も薄くなってしまうので、濃淡を強めるなどしてメリハリがほしい。

「十条さんと付き合うとマグロ漁船」はフツメンの主人公がハイスペック美少女に迫られるラブコメディ作品。ヒロインの表情や大きな動きの描写力に優れており、ノリと勢いもある。コマ割がやや詰まり気味なのと、文字量が多い箇所があるので、読みやすさを改善していくことが今後の課題だろう。

「今日から始まる異文化(?)交流」は、妖怪が見える男の子と妖怪達の交流を描いた日常作品。独特な雰囲気でホラー感を演出できており、引き込まれるものを感じる。ページ数は少ないが、しっかりと何かが始まるであろう余韻は残せている。背景によって空間や距離感を演出できるようになると、表現の幅がさらに広がるだろう。

「おじさん大好きな発明家OLと実験台部長」は、天才発明家のOLがおじさんが喜ぶ発明品を作るというギャグコメディ。発想やネタも豊富で、ギャグ漫画としてのテンポの良さがある作品。女の子の顔のパターンを増やしたり、各ページの情報量を精査することで、作品の魅力がさらに底上げされるだろう。

「枯国のブルージィノイズ」は【瓦礫人形】がはびこる日本を舞台に繰り広げられるバトルファンタジー作品。話が進むごとに画力の成長が見られ、アクションシーンも迫力が出るよう工夫しているところが好印象。顔や表情の描き方が硬めなので、もっとバリエーションをつけられれば、キャラクターの個性がしっかり出せるようになるだろう。

「胃の中のカワズ姫」は、竜に食べられた女の子が、そこから脱出するために奮闘するファンタジー作品。次々訪れる危機を知恵と身体能力で回避する展開は面白く斬新。一方、話のスケールが小さくまとまってしまっているので、画力の向上とともに、コマ割やエピソードにダイナミックな展開を盛り込んでいってほしい。

「アノニマス||カタグラフィ」は学生たちが「迷宮区」と呼ばれる場所に潜り、迷宮生物と戦う学園ファンタジー。男女それぞれキャラクター造形が魅力的で、動きのある絵も違和感なく描けている。登場人物が多いので、エピソードごとに誰に感情移入させたいかを意識して描いていくと、より読者にとって面白い作品になるだろう。

「送り火の島」はとある学者が不思議な風習のある島を調査する和風ファンタジー。ストーリーが練られており、見開きでの演出など見せ場もしっかり作れている。一方、絵については線が均一に太めで、雑な印象を読者に与えてしまうので、強弱を意識して描いていってほしい。

「ヌイグルミストで何が悪いッ!」はヌイグルミを愛する人物達が繰り広げるヒューマンドラマ。見せ場を際立たせる思い切った画面作りができるのは強い武器。今後は見せ場以外のコマの情報量を引き算することを意識して構成すると、読者にとって読みやすい作品になるだろう。

「HINODE」は妖怪の世界に飛ばされた男の子と妖怪達が一緒に旅をする和風ファンタジー作品。キャラクター、背景、小物含めて画力が非常に高く、作品世界の空気感を作り出せている。ストーリーも分かりやすいが、セリフ量やコマ割の面で起伏をつけられるとさらに読みやすくなるだろう。

「3年生になったら」は不思議な転校生と、冷静なツッコミを入れる男の子の交流を描いたホラーギャグ。かわいらしいキャラクターデザインと、捻くれた小学生というキャラ設定が魅力的。上半身の構図がやや多めなので、引きの構図を意識して取り入れると、より画面にメリハリがつくだろう。

「第17回漫画大賞 秋の陣」は996作品という過去最多の応募があり、5回連続の大賞選出という大変喜ばしい結果に。年々作品内容のレベルが上がり、層が厚くなっていくなかで新たな才能の発掘に寄与出来、非常に充実した選考となった。来年以降も、大賞をとるような突出した作品が読めることを期待している。

開催概要はこちら
応募総数996作品 開催期間2021年10月01日〜末日

蜃楼施療院譚

45位 / 996件

編集部より

安定した画力で画面の密度も申し分なく、物語、世界観ともに作り込まれており、全体的にレベルの高い作品です。キャラクターの表情も豊かで、また、それぞれの目的や信条を元に動かすことができています。衣装や背景が緻密に描かれていることも、読者を物語に入り込ませる要素となっているでしょう。一方、妖達の造形が人間の姿に近しいことでインパクトに欠けるので、能力以外にも目に見える形で、妖と人との差を作ることを意識してみてください。また、妖が過去どの程度人間を傷つけたかなど、両者の溝の深さをもう少し場面を割いて描けると、ストーリーにより厚みが出るでしょう。


編集部より

ポイント最上位作品として“読者賞”に決定いたしました。主人公の見た目のインパクトと、読者から愛される人柄のバランスが魅力的でした。表情豊かにキャラクターを描けている一方、画面の白さが気になる箇所がありましたので、トーンやベタなどを使用し、画面の密度を上げていくことを意識してみてください。


編集部より

独自の世界観を、画力面でもストーリー面でも伝える力があります。妖のバリエーションも豊富で、それぞれの思考、言動が深堀されていて読み応えもありました。キャラクター同士の関係性など、描きたいものをしっかりと前面に押し出す気概も感じられますが、客観的な目線での情報処理が今一歩足りていない印象です。複雑に練り上げられた舞台装置を分かりやすく読者に提供することを意識すれば、劇的に読みやすさが上がるでしょう。


編集部より

題材的にほの暗い作品ですが、しっかりとした画力で世界観を描くことができています。人物の些細な仕草や臨場感のある情景描写も、非常にレベルが高いです。一方、ストーリー展開は読者を意識したものではなく、描きたいものを断片的に持ってきている印象を受けました。読者の理解や共感を深めるためにも、時系列や視点を整理し、ご自身の頭の中にある設定や伝えたいものを共有していってください。

鬼と乙女

51位 / 996件

編集部より

キャッチーな絵柄、読者が共感できるキャラクター設定、伏線やヒキを効果的に混ぜ込んで構成されたテンポのよいストーリーの三拍子が揃った、非常にバランスのよい良作でした。ヒロインのインパクトも強く、エピソードが進むにつれて見えてくる人柄も好印象です。人物の仕草や表情は十分描けていますので、さらに背景描写や構図のアングルに変化をつけていけると、効果的な演出の幅が広がるでしょう。


編集部より

ベタ、グレー、白の割合や線の強弱など画面作りに工夫が見られ、コマ割や構図も見せる意図が感じられました。血を飲ませるシーンなど、見せ場を魅力的に描くこともできています。今後は動きのある画や、なめらかな線を練習すると、より表現の幅が広がるでしょう。ストーリーは、見せたいものの優先順位を決めて、コマ割を切ることを意識してみてください。

LOLI☆スパイ

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432位 / 996件

編集部より

画力が抜群に高く、導入部分で読者の興味をしっかり引こうとする意識を感じられました。時代にのっとったアイデアをストーリーに取り入れている点も素晴らしいです。一方、話の展開のためにキャラクターに愚かな言動をとらせてしまうと、興が冷めてしまうことが懸念されるので、どのキャラクターに興味をもってもらうかを追求し、言動を精査していくといいでしょう。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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