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連載

WEB限定SS,クリスマスネタ

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今回の話、本編とは全く関係ありません。
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「いやはや、素晴らしいですな」「全く。まさかここまでの芸術品を冷たいだけで厄介な存在だと思っていた雪から生み出すとは……」

 今日はクリスマス。当然ながらワンモアの世界でもクリスマスイベントが開催されていた。なぜかこの時期限定でカップルとなっていちゃつくモンスターを手当たり次第にはり倒してイベントアイテムを集める限定クエストや、クリスマスに関係する料理のコンテストなどが開催されていた。しかし、一番ワンモア世界に住む住人から注目されたのは、雪を用いて雪像を作り、その出来栄えを比べ合うコンテストイベントだった。

 会場は雪を用いるという事で、魔王領の中にある他種族が訪れる最初の街で開催されていた。事前に周囲のモンスターは魔族の皆さんによって排除されており、戦闘力を持たない人であっても安全にやってこれるように配慮されている。そしてやってきた職人プレイヤー(と書いて、とことん凝り性な人達と読んでほしい)の皆さんによって、さまざまな雪像が街中の至る所に作られていた。雪像の内容としては、有名人はもとより、各種族の男女のペアを作ってみたり、色々な武器を再現したりと見どころは非常に多い。

「親方、何とか格好がつきましたねー」

「おう、何とか予定していた期限内に出来上がったな。それにしても、まさかこんな形で魔王領にやって来るとは思わなかったがな」

 ここで言う親方とは、アースもお世話になった事があるファストの街の鍛冶場にて主となっているあの親方である。ようやく仕事が落ち着いたので、たまには外にも出てみるかと考えていた所に、このイベントへの参加協力の話を振られた。で、たまにはそう言う畑違いの物をやってみるのも面白いかと考えた親方はその話を承諾し、魔王領へとやってきた。そしてついさっき、予定されていた全作品が仕上がったという所である。

「でも親方、ものすごく受けてますね。魔王領の人達からしてみれば、雪はただ寒いだけの厄介者扱いでしかなかったらしいですが」

「興味を持って貰えたってのは良い事だろ。厄介者だって使い様によっては面白い物や楽しい物に化ける事もあるって事だ。その辺は鍛冶を始めとした生産も変わらんさ」

 と言う鍛冶に似たノリで、親方を始めとした職人プレイヤーの皆さんは雪像を次々を作り上げていったわけだが。魔族の皆さんからしてみれば、厄介者でしかない雪を次々と芸術性のある作品に仕上げていく姿は非常に注目されており、親方を始めとした職人の一団は、今魔族の皆さんの中で急速に知名度を上げていたりする。

「お疲れ様です、これですべて完成ですか?」

 雪像を見て回っている魔族の皆さんを遠目に見ている親方を始めとした職人の一団に、魔族の女性が声をかける。この女性は今回の雪像製作イベントの責任者であり、進行速度や展示される雪像の完成予想図などを事前に知らされている。卑猥な物や、倫理的によろしくない物を街に飾られては困るので、前もってそんな事にならぬように職人たちと綿密な連絡を取り合っていたのである。

「おう、これで仕上がった。完成予想図と比べても問題ないだろう?」「親方にも負けない渾身の一作が作れたぜ!」「協力すべき所も多かったが、これはコンテストだからな。優勝は俺が頂くぞ」

 その魔族の女性に、雪像を作り上げた職人たちが次々と返答を返す。ちなみに、このコンテストの審査員はこの街に居るワンモア世界の人達である。そのために、ワンモア世界にはない物(たとえば、東京タワーとかスカイツリーなどの建造物)などは、受けが良くないと職人たちは予想しており、雪像は全てワンモア世界に存在する物、大勢の人が目にしたことがあるであろう物がメインとなっている。有名人枠ではフェアリークィーンや龍王様。建造物枠にも妖精城や龍城がいくつか作られている。

「はい、私も一通り拝見させていただきましたが……どれも素晴らしい出来栄えです。事前に見せて頂いた完成予想図よりもずっと良いですね」

 魔族の女性も、職人プレイヤー達が自信満々で仕上げた雪像の出来栄えに感動しており、賞賛の言葉を贈る。それと同時に、今後もこの雪像を作るコンテストは定期的なイベントとして行っていきたいとの考えも魔族の女性の中には生まれていた。その為、次回は魔族の職人たちにも参加してもらうため、密かに雪像作りの現場に何人もの人を送り込んで作り方を見せていた。雪は腐るほどあるのだから、基本だけは押さえて、後は独自の方向性で素晴らしい雪像を作り上げて競えるように。

「では、後の事は任せても良いか?」「ええ、お任せを。結果発表はこの時間になります」

 雪像コンテストの結果発表は、リアル時間で二五日の午後十時とされている。それまではこの魔王領内に作品を作り上げた職人プレイヤーは滞在する必要がある。

「じゃ、親方。後はのんびりとクリスマスイベントを楽しもうぜ? たまには生産から離れて色々な物を見るってのも良いだろ?」

 職人仲間に誘われて、親方もそれに同意する。

「そうだな、やっと仕事も捌けた所だ。鉄火場ばっかりに入れ込み過ぎてたことは確かにあるから、ここはのんびりと見て回ることにするか。そうと決まれば、最初はメシだな。誰か良い所知らねえか?」

 その親方の言葉に反応したのは、周囲の雪像を見ていた魔族の女性の一団だった。みな、ドレスを身にまとって煌びやかな格好である。

「あら、職人の皆様。雪像はすべて完成したんですのね? でしたら、私達と付き合ってくださいませんか? ええ、食事も良い所を案内いたしますわ」「今回の雪像を見て、私、とても感動いたしましたの。是非この機会にもっとお話をしたいんですの」「如何でしょう? 私達と一緒に食事を楽しんでは頂けませんか?」

 グイグイと迫って来る魔族の女性陣に押され気味の職人プレイヤー達だったが、そこに親方の一言が入る。

「そうだな、確かに地元のいい店は地元に住む人が知ってるってもんだ。んじゃ案内を頼めるかい?」

 親方の言葉に「お任せください、損はさせませんわ。もちろん、今回の食事代は私達が持たせていただきますわ」と最初に声をかけてきた魔族の女性が、親方に寄り添いながら告げる。この魔族の女性の一団は、なかなか情熱的な様である。親方が周囲を見れば、各職人プレイヤー一人一人に寄り添ったり腕組みをしたりと魔族の女性が密着している。

「ちょいとくっつき過ぎじゃないか? 周囲の目がちょっと痛いんだが」

 親方がそう言葉をかけるが、魔族の女性は笑顔を一切崩さずに……

「この程度、軽いスキンシップですわよ? あれだけの素晴らしい芸術作品を生み出せる方に、こんな風に同行出来るなんて機会はめったにありませんの。この一時だけ、わがままをお許しくださいな」

 こりゃ、こっちが折れるしかないなと早々に見切った親方は仕方ないなと言う空気を出しながらも頷く。そんな風に密着されたまま親方を始めとした職人プレイヤー達は、行った先の店で歓迎を受けて楽しい一時を過ごす。ボッタクリなんて事も無く、掛かったお金は全て魔族の女性の一団が出していた。その為、親方達も最高のひと時を過ごせたのだが──

 さて。クリスマスと言う時期に、美人を横に侍らせるような形で街を歩き、歓待を受ける男性を見て他の男性プレイヤーがどう思うか。この後、親方を始めとして、同行していた職人プレイヤー達は、掲示板で嫉妬の嵐の洗礼を受ける事になるのである。

 もちろん親方達は誘われただけであり、親方達に罪などあろうはずもない。しかし、周囲はそうは見ない。こっちは独り身でモンスターでさえカップルとなっている所を見せつけられて、血の涙を流しながら張り倒していると言うのに、美人な魔族のおねーさんと仲良くなっている(ようにしか見えない)時点で、一方的に有罪判定を下すのだ。

「ぐぬぬ、生産までモテるとか」「イベントで八つ当たりをしていて、街に戻ったらけしからん姿をこれでもかと見せつけられた」「親方には恩もあるが、今だけはその恩を忘れる」「クリスマスと言う時期に、あんな事をしているだけでギルティだ!」

 なんて温かい言葉が、掲示板を駆け巡ったそうである。南無。
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なお、アースはログインすらしていません。
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