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閑話 間者対策

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 伊勢志摩から近江まで、支配領域が広がり、発展めまぐるしい北畠領内に、様々な国から間者が送られて来た。

 北畠家では、伊賀と甲賀の忍びが協同で間者対策に当たっていた。

 伊賀上忍三家のうち、服部家のみ松平家に仕えているので、限定的に北畠家に臣従している状態だが、百地家、藤林家は全面的に北畠家に臣従している。その為、他家から忍びを引き揚げているので、独自の忍びを持つ、上杉、武田、北条など以外は、諜報活動に支障がでている。

 さらに武田の歩き巫女などの諜報活動を、歴史として知っている源太郎は、修験道なども含め北畠領内では厳しい監視が付き、場合によっては排除される。



 上月佐助が、ひとり穴を埋めていた。

「佐助、何してるんだ?」

 源太郎が、小平太(榊原具政)と忠三郎(蒲生氏郷)を連れて近づいてきた。

「あゝ殿か……、俺が猿使いの術を使うのを知っているだろう。その相棒だった猿の墓だよ」

 佐助はそう言って、寂しそうに笑った。

「そうか、残念だったな」

「なに、猿の寿命は短いからな。まあ相棒は病いで死んだんだけどな」



 佐助と連れだって帰っている時、佐助がふととんでもない事を言いだした。

「なあ、ひょっとして殿ならカラクリの猿を造れないか?」

 佐助は、源太郎が色々不思議な物を造って来たので、もしかすると造れるかもと思ったようだ。

「カラクリの猿か…………」

 佐助の希望に応えられるかどうか考えてみる。

(新たに手に入れる手段は無いけど、魔石のストックは十分ある。骨格や筋肉の素材、表面の毛皮も魔物素材のストックなら山ほどある。要するにオートマトンだよな。前世では得意分野だったからな)

「佐助、創っても良いが絶対秘密だぞ。それと壊されたりしたら、絶対回収すること」

 源太郎が恐いほど真剣な表情で佐助に言う。

「あゝ、約束は守る」

「じゃあ少し時間をくれ。簡単じゃないからな」





 源太郎は、自身の専用工房で、オートマトン造りに取り掛かる。

「さて、骨格はどうしよう……」

 猿のオートマトンという事は、出来るだけ本物の猿と同じ重さが望ましい。だとすると、強度と軽さを兼ね備える素材は、ミスリル合金か、ワイバーンの骨かだろう。ドラゴンの骨では重くなるだろう。

「メンテナンスを考えるて、ミスリル合金にするか。表面をアダマンタイトでコーティングすれば、関節も強度的にはイケるだろう」

 源太郎は、大人の猿と同じ大きさで、ミスリル合金製の骨格を製作する。そのうえからアダマンタイトコーティングしていく。
 骨格に強化と自動修復のエンチャントをかける。
 骨格を組み立て終えると、筋肉の素材を考える。

「さて、筋肉は魔力で伸縮を制御するとして、素材としては、デザートワームの外皮を錬金術でいじれば、ちょっとヤバイ位の出力がでるな」

 デザートワームの外皮から造り上げた、人工筋肉を猿の筋肉の付き方を参考に、骨格に取り付けていく。人工筋肉には、強化と自動修復のエンチャントをかける。

「魔石は幾ついるかな……、まぁ取り敢えず魔晶石に加工してしまおう」

 魔石を魔力の充填出来る、魔晶石に加工する。

「それでっと、メイン動力に大きめのが一つ、筋肉制御用に一つ、情報処理用に一つ、最後にAI(人工知能)に一つかな」

 源太郎は、筋肉制御の術式を魔晶石に描き込んでいく。次に視覚、聴覚、魔力探知センサーの術式をもう一つの魔晶石に描き込んでいく。
 最後に、メインのAI用の複雑な術式を描き込んでいく。
 全てを組み込んで、一息つく。

 毛皮は、同じ猿という事で、キラーエイプの毛皮を使うことにする。
 毛の無い部分の手や顔の皮には、ワイバーンの飛膜を使う。強度的にも、柔軟性も問題ないだろう。

 毛皮を猿のオートマトンに合わせ、カットして貼り付けていく。
 毛皮には、火炎耐性・斬撃強化・自動修復・防汚をエンチャントする。
 これで元々キラーエイプの毛皮自体が持つ、耐久性に加えエンチャントのお陰で、至近距離で火縄銃で撃たれても大丈夫だろう。


 これで見た目は猿と見間違えるほどの、オートマトンが出来たが、ここからの調整が大変だ。
 動作やセンサーの調整からAIの教育など、調整だけで二週間かかった。





「おぉ、おぉーー!!スゲェーー!!」

 佐助が出来上がった、猿のオートマトンを前に、興奮していた。

「一応説明しておくぞ。先ず命令権の第一位が私で、その次に佐助、三番目に道順を設定してある。
 次に、その猿の能力だけど、本物の猿とは比べ物にならない位に高い。それこそ戦闘に使えるくらいだから、扱いには気をつけろよ」

 佐助は目をキラキラさせて、猿のオートマトンを見詰めている。

「武器の扱いも教えれば、ドンドン上手くなっていくから、その辺は佐助が考えて育ててくれ」

「ありがとう、殿! 行くぞ!猿王!」

 佐助は、あまりにも嬉しかったのか、そのまま〈猿王〉と名付けたオートマトンと走り去って行った。

「いや、まあ、良いんだけどね」

 オートマトンも有りかなと思う源太郎だった。

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