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事例2 美食家の悪食【事件篇】

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 坂田が何を言いたいのか分からない。尾崎も坂田の言葉の意味がピンとこないようで、倉科のほうに意見を求めるかのごとく、視線を向けてくる。それを見て溜め息をつくのは坂田だ。

「こんなことも分からないとか、マジで警察の連中は終わってるな。頭がイカれた奴らからすれば、やりたい放題の殺し放題じゃねぇか――。これだから馬鹿の相手は疲れる」

 相も変わらずダイレクトに人を馬鹿にしてくる奴である。しかし、ここで文句のひとつでも言って、機嫌を損ねられるほうが面倒だ。ここは下手したてに出るべきだろう。

「坂田、俺達にも分かるように、もう少しレベルを下げて話をしてくれないか?」

 坂田と付き合っていると、どうにも自尊心というものがないがしろにされがちだ。しかしながら、これが0.5係の役割。事件解決のために坂田と事件との橋渡しをしつつ、坂田の機嫌も取らねばならない。まったくもってフラストレーションが溜まる職場だ。

「いいか? まず料理の名前――【人肉炒飯】。使われている文字数は4文字。続いて、材料と分量を記したもの。上から順に【白米……適量】【ねぎ……適量】【生卵……1個】【人肉……2本】という記述。記号である【…】三点リーダーを1文字としてカウントすると全部6文字だ」

 人肉炒飯で4文字。坂田のいう記号の三点リーダーは【…】で1文字とカウントするようで、すなわちどの記述にも2文字ずつ入っている。よって、材料の記述はどれも6文字で形成されている。左右に余白があるように思えたのは、どれもが中央揃えで、なおかつ文字数が合わされていたからなのかもしれない。

「そして、犯人のコメントらしきもの。これらも全て文字数が偶数だ。まず【人肉とパラパラのご飯が見事にマッチする至高の一品】という一行目のコメント。全部で24文字。二行目の【人肉を口に含むとじわりと肉汁が出てご飯に染み込む】も全部で24文字だ。そして三行目――【ご家庭でも簡単に作れる一品ぜひお試しあれ】は20文字。恐らく、句読点を一切使っていないのは、使ってしまうと文字数が偶数ではなく、奇数になってしまうことを嫌ってのことだと思われる」

 句読点が使われていないことは、倉科も引っかかりを覚えていた。しかし、まさか文字数を偶数に合わせるために、句読点が使用されていないなどとは、考えすらもいたらなかった。

「続いて、もう一方の【人肉野菜炒め】のレシピを見てみろ。こいつもまた、どの行の文字列も、全部偶数で統一されている」
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