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第3章 イオン奪還
action 11 開示
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「なんだって?」
あずみは右手にスマホを握っている。
「見て」
ベッドの端に腰かけると、ピンクのケースに入ったそのスマホをサイドテーブルの上に置いた。
隣に腰を下ろして覗き込むと、画面に『裏那古野オーバードライブ』の文字。
確かにケロヨンのサイトである。
『工事中』の文字が消え、新たな画像が何枚も追加されている。
見えない壁にぶつかって、くの字に折れ曲がった新幹線。
これも同様、高速道路を遮断した不可視の壁に次々と衝突して炎上する車の群れ。
相変わらず、この総面積324㎡にも及ぶ人口200万の都市は、正体不明のドームによって、外部と遮断されてしまっているらしい。
さらに、『市民ゾンビ化予想グラフ』というのもあって、ここ4日間の間に那古野市民の何割がゾンビ化したかわかるようになっていた。
予想とはいえ、かなりリアルな内容だ。
「52%がゾンビ、47%が何らかの原因で死亡か。ってことは、生き残ってる人間は1%。まだ2万人は生存者がいるってわけだ」
「でも毎日ネズミ算式に感染者が増えてるわけだから、2万人がゼロになる日はけっこう近いと思うぜ。だって、たった4日で198万人が死ぬかゾンビになっちまったってことだろ」
僕とあずみの間に割り込んできた一平が、画面を覗いていっぱしの口をきく。
「お便りコーナーにメッセージ打ち込んでみるね」
あずみが言い、リニューアルされて『よいこのしつもんコーナー』なるタイトルに変わったチャット欄に文章を打ち始めた。
『イオンドーム前店に到着しました。お兄ちゃんもあずみも元気です』
「暑中見舞いかよ」
一平が鼻で笑った。
「うるさいわね。外野は黙ってなさいよ」
「立ってるのしんどいから、あずみの膝の上に座ってもいいか?」
「んもう、しょうがないわね」
「わ、いいんだ。イヒヒヒヒ」
「変なとこ触んないでよね」
「それはゲームクリアの賞品だろ? だから我慢するさ」
ふたりがやりあっている間に、管理人のケロヨンからの返信が返ってきた。
『ご苦労。まずは第1関門突破、おめでとう』
「第1関門?」
一平が頓狂な声を上げた。
「なんでえ、まだあるのかよ?」
予想はしていた。
だが、面と向かってそう告げられると、がっくりしないではいられなかった。
さっき一平は、図らずもゲームクリアという言葉を使ったが、まさしくこれはゲームみたいなものではないのか、という気がする。
それも、タチの悪い、死を賭したゲームである。
『では、褒賞として、情報を開示しよう』
ケロヨンが”言っ”た。
『まずはゾンビの種類だ。この感染症の正体は、”ドーム”の外の連中が推測しているような、ウィルスではない。いわゆる寄生虫、それも人間の大脳に寄生するハリガネムシの仲間の線虫だ。この線虫は、3種類存在する。それを私は仮に”3R”と名付けた。すなわち、リボーン、リサイクル、リバースの3種類だ』
「リボーン、リサイクル、リバース? なんか社会で習ったみたいな…エコなんとかのとこで」
「それは、リユース、リデュース、リサイクルだろ?」
「あ、それそれ」
「リサイクルしか合ってないじゃないか」
「おいら、主要教科苦手なんでね」
人さし指で鼻の下をこする一平。
『まず、リボーン線虫だが、これは…』
こうして、謎の管理人、ケロヨンの講義が始まった。
あずみは右手にスマホを握っている。
「見て」
ベッドの端に腰かけると、ピンクのケースに入ったそのスマホをサイドテーブルの上に置いた。
隣に腰を下ろして覗き込むと、画面に『裏那古野オーバードライブ』の文字。
確かにケロヨンのサイトである。
『工事中』の文字が消え、新たな画像が何枚も追加されている。
見えない壁にぶつかって、くの字に折れ曲がった新幹線。
これも同様、高速道路を遮断した不可視の壁に次々と衝突して炎上する車の群れ。
相変わらず、この総面積324㎡にも及ぶ人口200万の都市は、正体不明のドームによって、外部と遮断されてしまっているらしい。
さらに、『市民ゾンビ化予想グラフ』というのもあって、ここ4日間の間に那古野市民の何割がゾンビ化したかわかるようになっていた。
予想とはいえ、かなりリアルな内容だ。
「52%がゾンビ、47%が何らかの原因で死亡か。ってことは、生き残ってる人間は1%。まだ2万人は生存者がいるってわけだ」
「でも毎日ネズミ算式に感染者が増えてるわけだから、2万人がゼロになる日はけっこう近いと思うぜ。だって、たった4日で198万人が死ぬかゾンビになっちまったってことだろ」
僕とあずみの間に割り込んできた一平が、画面を覗いていっぱしの口をきく。
「お便りコーナーにメッセージ打ち込んでみるね」
あずみが言い、リニューアルされて『よいこのしつもんコーナー』なるタイトルに変わったチャット欄に文章を打ち始めた。
『イオンドーム前店に到着しました。お兄ちゃんもあずみも元気です』
「暑中見舞いかよ」
一平が鼻で笑った。
「うるさいわね。外野は黙ってなさいよ」
「立ってるのしんどいから、あずみの膝の上に座ってもいいか?」
「んもう、しょうがないわね」
「わ、いいんだ。イヒヒヒヒ」
「変なとこ触んないでよね」
「それはゲームクリアの賞品だろ? だから我慢するさ」
ふたりがやりあっている間に、管理人のケロヨンからの返信が返ってきた。
『ご苦労。まずは第1関門突破、おめでとう』
「第1関門?」
一平が頓狂な声を上げた。
「なんでえ、まだあるのかよ?」
予想はしていた。
だが、面と向かってそう告げられると、がっくりしないではいられなかった。
さっき一平は、図らずもゲームクリアという言葉を使ったが、まさしくこれはゲームみたいなものではないのか、という気がする。
それも、タチの悪い、死を賭したゲームである。
『では、褒賞として、情報を開示しよう』
ケロヨンが”言っ”た。
『まずはゾンビの種類だ。この感染症の正体は、”ドーム”の外の連中が推測しているような、ウィルスではない。いわゆる寄生虫、それも人間の大脳に寄生するハリガネムシの仲間の線虫だ。この線虫は、3種類存在する。それを私は仮に”3R”と名付けた。すなわち、リボーン、リサイクル、リバースの3種類だ』
「リボーン、リサイクル、リバース? なんか社会で習ったみたいな…エコなんとかのとこで」
「それは、リユース、リデュース、リサイクルだろ?」
「あ、それそれ」
「リサイクルしか合ってないじゃないか」
「おいら、主要教科苦手なんでね」
人さし指で鼻の下をこする一平。
『まず、リボーン線虫だが、これは…』
こうして、謎の管理人、ケロヨンの講義が始まった。
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