種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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ヒナ編

ベータ

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ヒナは資料室から離れ、ガンマが教えてくれたベータと呼ばれるロボットが待機している整備室の前に戻る。彼女は部屋の前の指紋認証機を確認し、これをどうにかしない限りは開かない仕組みだろうが、生憎とヒナの指紋では反応しない。


「う~ん……」


それでもヒナは指紋認証機に一か八か触れるべきか考え込む。例え、ヒナの指紋が通らなくても触れる事で何かの反応を示し、部屋の中で待機しているという「ベータ」に反応があるかも知れない。あるいは先ほどの「シグマ(最初にヒナを襲ったロボットの名前。ガンマが教えてくれた)」のように襲い掛かる可能性もあるが。


「この先は行き止まりなんだよなぁ……」


ヒナも最初は整備室を通り過ぎて先に進もうとしたが、少し進んだ通路にはシャッターで閉鎖されており、先ほどの騒動で作動した可能性もある。試しに破壊を試みたが、流石にこれほどの施設となると閉鎖用のシャッターも頑丈であり、ミノタウロスを一撃で屠った魔鎧の攻撃も凹ませるだけが限界だった。


「すいませ~ん」


コンコンッ……


試しに整備室の扉にノックを行うが、特に中から反応は無い。流石に扉を破壊して中に侵入する事は避けたいのだが、このままでは先に進めない。


「どうしよう……やっぱり、通風孔から」


あまり気が進まないが、通風孔の中を進めば地上の道に通じる可能性もある。だが、間違いなく通風孔はあの蜘蛛型の昆虫種の縄張りであり、通風孔内部を進むとしたら昆虫種との戦闘は避けられない。


「やっぱりここをどうにかするしか……」


ヒナはエクスカリバーを確認し、この聖剣ならばこの扉を強行突破出来るだろう。魔力消費は激しいが、試す価値はある。

通路を塞いでいるシャッターに対して彼女が「光の剣」を使用しなかったのは、シャッターの向こう側に他のシャッターが存在した場合が面倒であり、魔力が回復するまで待機するにしても、昆虫者やミノタウロスなどの得体の知れない魔物が徘徊するこの場所で休憩は行いたくない。


「さて……力ずくになるけど」


ギュオォオオオオッ……!!


柄に魔力を送り込んだ瞬間、先端部から「光の剣」が発生し、ヒナは扉に向けて押し込もうとした時、


ガチャンッ!!


「はわぁっ!?」


突然、整備室の扉が内側から開かれ、ヒナは聖剣を空振りする形となり、慌てて前を向くと、


『何ですかうるさいですね~……誰ですかもう?』


前方から嫌に聞き覚えのある「機会音声」が聞こえ、同時に違和感を感じ取る。その声音は先の2人(2機?)と同じではあるが、口調がどうにも人間臭い。

ヒナの目の前には間違いなく「ガンマ」や「シグマ」と瓜二つの容姿(但し、下半身はキャタピラではない)のロボットが現れ、彼女がガンマが告げていた「ベータ」で間違いないだろう。

外見は先の2人よりもさらに人間的であり、ほとんど機械的な装飾は施されていない。一瞬、本当の人間ではないかと思ったが、微妙に両耳の部分はイヤホンのような物を取り付けており、アンテナまで存在する。


「えっと……ベータでいいんだよね?」
『そうですけど……貴女は誰でしたっけ?ここの職員じゃありませんよね?』
「それは……」


他の2人と違い、ベータはすぐにヒナがこの施設の利用者ではない事に気付く辺り、どうやら相当に高度なAIが組み込まれているようだ。


「えっと、この建物の外からやってきたんだけど」
『それは言わなくても分かりますよ。私が聞いているのは貴女の正体ですけど』
「正体と言われても……外の世界の住人とでも答えればいいのかな」
『外の世界……?ああ、そう言う事ですか』


何事か納得したように頷きかけたが、すぐに眉を顰め、


『という事は貴女は侵入者というわけですね。けど、どうやって侵入したんですか?この施設は外部とは遮断されているはずですけどね』
「正面から堂々と」
『ふざけてるんですか?』
「嘘じゃないよ」
『まあ、それはどうでもいいんですけど』


ベータは通路に姿を現すと、左右に視線を向け、


『他の2機はどうしたんですか?ここまでくる間に会ったんでしょう?』
「ガンマとシグマ?」
『ああ、やっぱり会ってたんですね』


ヒナは正直に話すべきかどうか悩んでいると、不意にベータの碧眼が突然に黄色に変化し、耳元のアンテナが反応を示すかのように伸縮し、


『……2人の反応が返って着ませんね。貴女の仕業ですか?』


どうやら電波か何かでガンマとシグマの安否を確かめたようだが、返事が返ってこない事に不審に思い、彼女はヒナに視線を向ける。仕方なく、言い逃れは出来ないと判断して彼女がここまでの経緯を正直に話すと、


『ああ、なるほどそう言う事ですか。どうりであの2人が何時までも帰ってこないと思ったら……けど、そうなるとこれからのプロトタイプが管理が面倒ですね』
「プロトタイプ……?」


不意に何処かで聞いたような単語にヒナは首を傾げ、すぐに先ほどの第二資料室で見かけた本の内容を思い出す。確か、実験結果のレポートにもそのような単語が何度か出ていたはずだが、


『……もうそろそろ、この施設も限界を迎えようとしているかも知れません。私の役目も潮時かも知れませんね』
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