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同盟と王国の戦争が終わった。
停戦後、南洋諸島連合に降り立ったのは、故郷を失い、寿命を削り尽くしたヒーラーの少女コッセル・ロレアン。
戦いで多くの仲間と弟を失い、胸の奥で呟いた言葉はただ一つ。
「戦争なんて無くなればいいのに……」
ヴァントレット商会の跡取り・ダスス・ヴァントレットは、陽気で人当たりの良い笑顔を完璧に演じる彼は、実は心(共感・罪悪感・愛情)が完全に欠如した存在だった。
人の感情を精密に模倣し、最適な反応を計算するだけの「入れ物」。
しかしコッセルだけは、初対面でその本性を看破した。
「心のない入れ物」「自分の力を自覚しながら行動しない」
その一言が、ダススの中に初めて「興味」を超えた何かを生んだ。
コッセルが「自分が存在する意味」となり、彼は彼女のためだけに生きることを決意する。
冷徹な仮面をかぶり女帝として商会を支配するリオン・リヴェラ。
リディア・アイレーン・マグダレータは優しさと使命感で死にゆく少女たちを守り、捕虜を家に帰そうとする。
ファリス・アイレーン・マグダレータは地下演習場で終わらない戦いを続けていた。
捕虜返還交渉の裏側で交錯するそれぞれの想いと、
世界から戦争を無くす力を持ちながらも、それを捨てて一人の少女を選んだ男の物語。
最後にコッセルが空港で突きつけた選択──
「どっちも選ばない。俺は、コッセルがいい」
心を失っていた男が、初めて本当の「悲哀」を知る。
戦争を終わらせる力を持ちながら、たった一人の少女を選んだ代償とは──。
残酷で、優しく、静かに胸を締めつける、切ない恋の物語。
文字数 8,792
最終更新日 2026.04.24
登録日 2026.04.23
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