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鬼ヶ島にて──犬、猿、雉の犠牲もありながら、死闘の末に鬼退治を果たした桃太郎。
故郷の村に帰還した英雄は、やがて一人の娘を授かった──その名は桃姫。
桃姫が10歳を迎えた祭りの夜──突如として鬼の軍勢が村を襲撃した。
軍勢を率いるのは、かつて討伐された鬼ヶ島首領の息子──温羅巌鬼(うらがんき)。
村は瞬く間に蹂躙された──家々に火が放たれ、人々は血の海に沈み、桃太郎も巌鬼との戦いでその命を落とした。
「──桃太郎の娘よ、生きて地獄を味わうがよい──」
両親を殺され、燃える村にただ一人残された桃姫に対して巌鬼はそう言い放つと鬼ヶ島に引き上げた。
「──地獄では……生きていけない──」
絶望した桃姫は、涙を流しながら己の喉元に刃を突き立てた──その時、一人の麗人が桃姫の前に姿を現した。
美しい銀髪を月の光に輝かせた彼女は、震える桃姫の手を優しく握って、静かにほほ笑んだ。
「──私の名は、雉猿狗(ちえこ)。御館様との約束を果たすため、ただいま天界より現世に顕現いたしました──」
呆然とする桃姫に向けて、雉猿狗は天照大御神を思わせる慈悲深くも力強い眼差しで告げた。
「──桃姫様。あなた様が強い女性に育つその日まで、私があなた様を必ずや護り抜きます──」
かくして、桃太郎の血を受け継ぐ少女〈桃姫〉と三獣の化身〈雉猿狗〉の日ノ本を巡る鬼退治の旅路が幕を開けるのであった──。
《桃姫シリーズ 全五幕》
【第一幕 乱心】
一夜にしてすべてを失った10歳の桃姫は、故郷の花咲村に別れを告げて、お供の雉猿狗と共に鬼退治の旅に出る。
【第二幕 斬心】
日ノ本を巡る旅路。出会いと別れを繰り返し、奥州・伊達領に辿り着いた桃姫は、16歳の女武者へと華々しく成長を遂げる。
【第三幕 覚心】
己の体に流れる桃太郎の血の力に目覚めた17歳の桃姫は、闇に飲まれる関ヶ原の戦場を救い清める決戦へとその身を投じる。
【第四幕 伝心】
悪徳陰陽師・道満と晴明、そして明智光秀の千年天下の野望を打ち砕くべく、19歳になった桃姫は霊剣を携えて鬼退治に挑む。
【桃姫BLACK】
時は流れ──桃姫様の伝説から500年後の2099年。復讐の黒鬼と化した足立の姉妹が、滅びゆく日本の未来を斬りひらく。
文字数 621,128
最終更新日 2025.05.10
登録日 2024.10.25
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