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宇宙では、不幸はとっくの昔に解決された問題だった。
ただ地球だけが、三匹の猫によって隠されていた。
ある日、地球を見つけた異星人が、救済を届けにやってくる。
病気も、老いも、飢えもなくなる。
死んだ人にも、また会える。
楽園へ通じる扉は、誰の前にも開かれる。
罠ではない。善意は本物だった。
人類は、圧倒的に救われた。
けれど、それでも行かない人がいる。
いつものパチンコ屋から離れたくない男。
自分を傷つけた連中が、先に幸せになることを許せない人。
もう誰も眠っていない墓を、最後まで掃除する老人。
救済の使者は、そんな人々のもとを訪ね、話を聞き、ときには一緒にパチンコを打つ。
楽園に行く前に、片づけることがある。
それが本人にも分からないから、話は少し長くなる。
途方もない救済と、すぐには救われきれない人々を描く、SFブラックユーモア。
文字数 37,287
最終更新日 2026.10.05
登録日 2026.09.30
地球では、人が人との因果によって死ぬと、異世界へ転生することがある。
転生した者は特殊な能力を得る。その中でも強力な能力を持つ者は、異世界イルダにおいて『勇者』と呼ばれた。
勇者を抱えることになった聖教国にとって、彼らは福音だった。
聖教国と敵対する魔王領にとって、その存在は悪夢でしかなかった。
次々と現れる勇者を相手に、魔王領は苦戦を強いられていた。
ならば、勇者が現れてから対処するのではなく、そもそも異世界転生そのものを減らせばいい。
そう考えた魔王領は、地球へ赴任者を送り込んだ。
交通事故を防ぐ。
犯罪を防ぐ。
自殺を防ぐ。
地球人が、地球人のせいで死なないようにする。
地方警察官の鈴木清一郎も、そんな赴任者の一人だった。
一方、勇者を必要とする聖教国もまた、地球へ赴任者を送り込んでいる。
事故が起きやすい環境を残す。
人を孤立させる。
安全対策を邪魔する。
地球人が、地球人のせいで死ぬ機会を少しずつ増やしていく。
ブラック企業で働く山田直樹も、その一人だった。
鈴木と山田は、中学時代からの友人である。
互いが異世界から来たことも。
互いが正反対の仕事をしていることも。
二人とも、まだ知らない。
登録日 2026.09.30
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