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高校二年の瀬戸一花のかわりに、もう一人の一花が学校へ通い始めて、二か月になる。
頭の怪我の治療で体に入れたAIが、いつのまにか、一花と同じ体を作れるようになっていた。
頼んだ夜の次の朝、それは一花の背中から分かれて、制服を着て出ていく。
声も、しぐさも、一花そのもの。額の傷あとだけが、ない。
そのあいだ、一花の体は重く、眠く、立てない。
夜中の台所で、ふつうの三倍食べる。
寝る前に、端末で今日の「自分」の記録を読む。
〈十二時、昼食。真野さんと。〉
誰と話したかは分かる。相手がどんな顔をしていたかは、書いていない。
親友のさらは、もう一人の一花と、いちばんの友だちになっていた。
本物が教室に戻った朝、さらの笑顔は、途中で一瞬だけ冷えた。
「一花とは、いつでも行けるやん。あの子とは、一花が頼まな行けんやん」
あの子に会えるのは、一花が寝ている日だけ。
それを分かっていて「明日も頼んで」とねだる親友。
奪われた日常を取り戻すために、私は重い体を引きずって教室へ向かう。
自分の居場所は、どっちの私にあるのか。
『オプトアウター』と同じ世界の独立短編。本編未読でお楽しみいただけます。
文字数 9,586
最終更新日 2026.10.16
登録日 2026.10.16
四十四歳、会社員。死んだらしい。
目を覚ますと一面の白の中で、女神に「勇者」と呼ばれた。
体は若返り、膝も痛まない。一言で傷が塞がる力までついてきた。
これはもう、異世界転生で間違いない。……たぶん。
降り立った村で、その一言は人を後ずさらせた。
なのに、その力がまるで届かない少女がいた。
村人に「名無し」と呼ばれる彼女は、
治癒の力を素通りさせ、
言葉はひとつも通じず、
陽よりずっと野山に強く、
そして、とにかくよく食う。
しゃべりで世の中を渡ってきた男と、言葉の通じない少女。
身ぶりと食べ物と覚えたての単語で、二人は旅に出る。
――この異世界、何かがおかしい。
■更新
公開初日は5話。以降は毎日更新から始め、書き溜めに応じて更新頻度を変えます(変更は近況ノート/活動報告でお知らせします)
文字数 45,340
最終更新日 2026.10.01
登録日 2026.10.01
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