ふにゃこ

ふにゃこ

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ライト文芸 完結 短編
銀の髪を夜風に揺らし、赤い瞳で足元を見つめる小さな女がいる。 年齢不詳、身長は子どもほど。けれどこの街では、彼女が二百年を生きる魔女だと囁かれていた。 彼女は夜の路地に落ちた恋を拾う。 告げられなかった想い。 届かなかった手紙。 忘れられない約束。 死んでしまった人へ向けた、行き場のない好き。 誰にも見えないそれらを、彼女だけは見つけることができる。 ガラス片のようにきらめく恋を、白い指先でそっと摘み上げ、小さな瓶へ閉じ込めるのだ。 「あなたが明日、少しだけ前を向けるように」 そう言う時だけ、彼女の声は驚くほどやさしい。 普段の彼女は無口で、愛想もなく、感情すら薄い。 まるで人の心になど興味がないような顔をしている。 けれど誰よりも、失くした恋の重さを知っている。 瓶が割れれば、その恋は最初からなかったことになる。 だから彼女は、誰より慎重に瓶を抱く。 かつて自分も、ひとつの恋を拾えなかったまま。
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文字数 4,920 最終更新日 2026.04.13 登録日 2026.04.13
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