伝わる文章術

仕事ができる人のメールは「結論」から入る

2019.04.11 公式 伝わる文章術 第25回
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結論重視でも紋切り型はNG

結論を文章の冒頭に置く、起承転結の「結」からはじめるというのは、一般的な文章技術のひとつです。起承転結を基本的な文章の作法とすれば、結論から入る手法は奇を衒(てら)ったものということになります。が、メールは長くなるほど最後まで読まれなくなるということを考えると、結論から入るという形をメールの基本文型にしてよいと思います。

ただし、結論だけを書いたのではいかにも紋切り型で、場合によっては木で鼻をくくったような印象さえ与えかねません。そういう文章では相手によっては失礼と感じる恐れもあります。

<文例A 紋切り型の結論だけのメール>
ご提案いただいた件、当社としては見合わせることになりました。
ご了承ください。

何らか関係のある相手に、このメールではいかにも素っ気ない印象です。まず結論から述べるというのは、結論だけを伝えればよいということではありません。

<文例B 結論を先に、説明を後にしたメール>
ご提案いただいた件、当社といたしましては残念ながら見合わせていただくこととなりました。
せっかくご提案いただいたのに申し訳ございません。
見合わせていただくことになった理由は、まだわが社の体制がご提案内容を十分実行できるまでに整っていない点に尽きます。
わが社の体制が整った際には、ぜひ再度検討させていただきたく思っておりますので、しばらくご猶予をいただければ幸いです。

後段はもうすこし短くてもよいですが、「結」の後ろには起承が必要なのです。

起承転結の文章との違い

では改めて、起承転結形式のメールと結論から入るメールの違いを見てみましょう。例えば、各部署の目標設定について見直しを求めるメールを一般的な起承転結形式で書くとこうなります。

<文例C 起承転結形式のメール>
来期目標の発表期限まで3ヵ月を切りましたが、今期の目標の延長線上で考えている部署が多く、全体にチャレンジ精神が見られません。
数字を達成することばかりに意識が集中し、何のための目標なのかという視点が抜け落ちているようです。
達成できるか否かもさることながら、我が社の理念を実現するというゴール(目的)を再確認し、そこから遡って戦略にかなった目標の設定を進めていただきたいと思います。

起承転結形式は順序だっているので、書くほうは書きやすく、読むほうもわかりやすいというのがよさです。しかし、最後まで読まないと何を言いたいのかがわかりません。

次は結論を冒頭に持ってきたメールです。

<文例D 結論から入るメール>
来期の目標は、我が社の理念を実現するというゴール(目的)を再確認し、そこから遡って戦略にかなった目標を設定していただきたいと思います。
来期目標の発表期限まで3ヵ月を切りましたが、今期の目標の延長線上で考えている部署が多く、全体にチャレンジ精神が見られません。
数字を達成することばかりに気持ちが集中し、何のための目標なのかという視点が抜け落ちているようです。
達成できるか否かもさることながら、本来の目的に立ち返って目標を考えてくださるようお願いいたします。

結論が冒頭にあるためメールの印象が、紋切り型に近く、やや刺激的になるのが結論から入るメールの欠点です。しかし、後段で理由をていねいに述べることでこの欠点は補うことができます。

読み手の気持ちを考えること

結論は冒頭で端的に表現するというのがメールの基本、とはいえ端的に表現すれば必ず正確に伝わるというわけではありません。どんなに正しいことを言っても、反感を抱かれては相手に正しく伝わりにくいものです。頭では理解できても、気持ちが受け入れられないということが人間にはあります。

結論から入るメールは、前述したように文章が刺激的になりがちですから、一層相手の気持ちを忖度しなければなりません。例えば、イベントの評価と改善点をメールで担当者に送るとき、率直に問題点を指摘することは大事ですが言い方も大事です。それがどんなによい指摘であっても、相手に受け入れられなければ意味がありません。

<文例E 課題の指摘という結論のみのメール>
次回のイベントでは、ネットとの連動を強化する必要があると思います。
今回のイベントは「ネット通販や電子決済サービスはないのか」という来場者の声が多数ありました。
イベント来場者数は例年並みでしたが、お客様の多くがネットに十分適応していないことに落胆している様子でした。

問題点の指摘と改善の方向は明確です。しかし、中心になってイベント開催を行った人からすれば、問題点のみ指摘されたのでは面白ないでしょう。せっかくのアドバイスも生かされないかもしれません。イベントの改善という目的を考えれば、問題点の指摘と同じくらい改善への行動を促すことが大切です。

<文例F 読み手に配慮したメール>
次回のイベントでは、ネットとの連動を強化する必要があると思います。
今回のイベントは、「ネット通販や電子決済サービスはないのか」という来場者の声が多数ありました。
イベント来場数は例年同様に盛況でしたので、中心となってイベント成功に尽力した人々の功績は非常に大きいと思っています。
しかし、多くのお客からネット通販や電子決済に関する質問をいただき、そのうちの何人かはわが社がネットに十分適応していないことを残念がっていました。
イベントをさらに発展させ、お客様の期待に応えるにはネットとの連動を強化することが不可欠と思います。

言うべきことは言いますが、次に読み手のことをフォローするという段取りです。結論とフォローのバランスがよければ、結論が少し手厳しいものでも読み手に真意は伝わるものです。さらに言えば、フォローはメールだけでなくフェイス・トウ・フェイス、あるいは電話等、視覚と聴覚で誠意を伝えられる手段でフォローすべきでしょう。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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