伝わる文章術

意外と知らない、メールでの失礼な表現

2019.04.25 公式 伝わる文章術 第26回
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親切なのに、ありがたがられないメール

生真面目で信頼できる人なのだけど、メールではちょっと冷たいという人がいます。
こういう人はだいたい普段からやることが几帳面ですから、こちらがちょっと忘れがちなことでも、あらかじめリマインドしてくれるありがたい存在です。

ところが、普段からいい加減な人間は、こうした生真面目な人からメールでリマインドとして指摘を受けると、なんだか「あなたはどうせまた忘れているんだろ。しっかりしろよ!」と言われているような不快な気分になってしまいます。まったく逆恨みに等しいのですが、メールの文面に愛想がないと、送った本人はそんなつもりではないにもかかわらす、受け取る側はまるで叱られたような気分になることもあるようです。

メールを送る目的はだれかを傷つけたり、心理的ダメージを負わせてこちらが優位に立つことではありませんから、相手に残念な印象を持たれることは得策ではありません。
コミュニケーションの行き違いは古今東西よくあることです。でもメールの誤解は、ほんの少し文章に工夫を加えることで、印象をガラリと変えることができます。

<文例A 親切なのにありがたがられないメール>
製品の納期が近づいております。
〇月×日までに遅れることのないようよろしくお願いいたします。

普段から仕事が遅れ気味の人は、遅れることのないようにと言われると、過去のことをほじくり返されているようで嫌ですし、普段から遅れないようにやっている人は「自分はきちんとやっているのに」と気分を害しかねません。
せっかく親切でリマインドのメールをしたのに、誤解されては残念です。
といって婉曲的な言い回しでは用件が伝わりにくくなりますし、長いメールだと書くのも面倒。
そこでひと言を添えます。

<文例B 相手の名前を入れたひと言を添えたメール>
製品の納期が近づいております。
△△さまのことですから全幅の信頼を置いておりますけれども、〇月×日までに遅れることのないようよろしくお願いいたします。

伝わる用件は同じでも、印象はほんのひと言添えるだけで大きく異なります。
「△△さまのことですから」とあるだけで、イヤーな印象はきれいに払拭されたはずです。
これならメールをもらった△△さんとしても悪い気はしないでしょう。
ポイントは「△△さん」と相手の名前を記すことにあります。
自分の名前は世界で一番美しい響きといわれ、欧米人は会話の中に相手の名前を積極的に入れて、コミュニケーションを円滑にします。
このテクニックはネームドロッピングといい、メールでも存分に活用したい手軽なテクニックのひとつです。

相手を傷つけることが目的ではない

相手の間違いを指摘するメールでも、ストレートに間違いを指摘し反省を促すメールよりも、すこしウィットのあるメールを送るほうが、賢い人のメール、できる人のメールという感じがします。
メールで大物感を出す必要はないでしょうが、どうせなら印象がよいに越したことはありません。また、概して本当に偉い人のメールは、実際にウィットに富んだ言葉が挟んであるものです。

逆に相手の間違いを指摘するとき、相手をKOするとどめのひと言を付け加える人もいます。
それはそれで才能ですが、メールの目的はそこではないはずです。
それに打撃力のあるひと言を書き添える人は、けっして悪意があってやっているわけではなく、概して何気なく書いているだけの天然の人がほとんどに見えます。

<文例C 寸鉄人を刺す(短く鋭い言葉によって相手の急所を突く)ひと言のメール>
先日確認をお願いし、変更なしとご回答いただいていた貴社に発注中の製品の法定スペックは、やはり法改正により変更になっておりました。
ご確認をお願いしたのにビックリです!

小さな法改正はあまりニュースになりませんし、たいてい改正から施行までに時間が空きますから、ときどきうっかり見落とすことがあります。
それでも関係する業界にとっては重要なことですから、こんなメールをもらった担当者は蒼ざめることでしょう。

受け取ったほうは、ただでさえ痛みを伴うメールに、最後に「ビックリです!」とあったら傷口に塩を塗られる気分かと思います。
用件は第一行目で済んでいますので、よほど腹に据えかねてどうしてもひと言ダメージを与えてやりたいと思っているなら別ですが、そこまでのことではなく、あまり自分の印象を引き下げたくないと思うなら、とりあえず最後の一行は削除すべきです。
で、さらにすこし大人の風情を出すなら、次のようなひと言を添えてはどうでしょうか。

<文例D できた人感を漂わせるメール>
先日確認をお願いし、変更なしとご回答いただいていた貴社に発注中の製品の法定スペックは、やはり法改正により変更になっておりました。
早めにわかってよかったですね。

文例Cのメールをもらった相手の心中は「やっちまった!」でしょうが、文例Dを受け取った担当者は「助かった!」と心の中で叫んでいることでしょう。
助けてもらった人というのは恩人ですから、助けられた人は受けた恩をいつか返そうと思うはずです。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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