ビジネス書業界の裏話

本を出版したいと思ったら…

2016.10.27 公式 ビジネス書業界の裏話 第18回
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本ができるまでの道のり

職業柄、ときどき作家デビューを志す人から相談を受けることがある。そうした相談の中に、稀にいついつまでに出版したいとゴールを決めているケースもある。ゴール設定の理由は、その日が自分の誕生日だからという軽いものから、その時期にコンサルタント会社を立ち上げるという、事業計画的なものなどさまざまだった。上場のIRのために出版するには、この時期が限界という話もあった。差し迫った事情としては、私は関与しなかったが、選挙のためにどうしても2ヵ月で出版しなければならないという、切羽詰った立候補者もいた。

2ヵ月で本をつくることは不可能ではない。テーマによっては早い者勝ちというものがある。ビジネス書では、税法や商法、民法の改正や新法の施行などが、その種のテーマのひとつとなる。具体的にいえば、数年前の相続税法の大幅改正などがそうで、本をつくればある程度の売れ行きが見込めた。出版社は売れることがわかっていれば、短期間でも本をつくる。相続税法の改正では事情が違ったが、一般的なケースでは法改正や新法の制定は、国会で法案が可決されないことには話が進まない。

ところが、世間の注目の的になるような話題性のある重要法案は、ぎりぎりまで細部が固まらないことがある。そういうケースでは、国会で法案が可決されるまで原稿が完成しないことになるが、多くの場合、90%以上の原稿はそこまでに仕上げており、可決案に応じて書き加え完成させる。

出版のスケジュールで、最も時間を要するのは原稿作成のプロセスであるから、ここが各社の競争のしどころとなる。このような段取りで進行すれば、1ヵ月後の出版であっても不可能ではない。新聞や雑誌のように予定稿を組むことまではしないが、単行本でもそれに近いことはすることがあるのだ。ただし、そこまでやるのは、かなりの確度でセールスが成り立つという見込みがあってのことである。

作家デビューを考えている人が、ゴールを設定するのは悪いことではない。ゴールを定めれば、それまでにやるべきことも見えてくるからだ。数値化できることは実行できるという。実行があれば実現にも近づく。

そういうわけで、出版の時期を設定するのはよい。しかし、わたしの見るところでは、ほとんどの人が出版時期を3ヵ月後くらいに設定している。出版の相談を受けた段階では、それがどんなによい企画であっても、まだ企画立案の段階である。この段階から起算していけば、通常の出版社のペースでは最短でも本の発行は半年後となる。

2ヵ月で出版することは不可能ではないといっても、それはいわば緊急出版のスケジュールである。作家デビューの新人さんの作品は、残念ながら、よほどのことがない限り緊急出版とはならない。したがって、通常のペースで進行していくのが一般的である。

では、出版までにはどのようなプロセスを経て、それぞれのプロセスにはどれくらいの時間がかかるのだろうか。

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プロフィール

ミスターX
ミスターX

ビジネス雑誌出版社、および大手ビジネス書出版社での編集者を経て、現在はフリーの出版プロデューサー。出版社在職中の25年間で500人以上の新人作家を発掘し、800人を超える企業経営者と人脈をつくった実績を持つ。発掘した新人作家のうち、デビュー作が5万部を超えた著者は30人以上、10万部を超えた著者は10人以上、そのほかにも発掘した多くの著者が、現在でもビジネス書籍の第一線で活躍中である。
ビジネス書出版界の全盛期となった時代から現在に至るまで、長くビジネス書づくりに携わってきた経験から、「ビジネス書とは不変の法則を、その時代時代の衣装でくるんで表現するもの」という鉄則が身に染みている。
出版プロデューサーとして独立後は、ビジネス書以外にもジャンルを広げ文芸書、学習参考書を除く多種多様な分野で書籍の出版を手がけ、新人作家のデビュー作、過去に出版実績のある作家の再デビュー作などをプロデュースしている。
また独立後、数10社の大手・中堅出版社からの仕事の依頼を受ける過程で、各社で微妙に異なる企画オーソライズのプロセスや制作スタイル、営業手法などに触れ、改めて出版界の奥の深さを知る。そして、それとともに作家と出版社の相性を考慮したプロデュースを心がけるようになった経緯も。
出版プロデューサーとしての企画の実現率は3割を超え、重版率に至っては5割をキープしているという、伝説のビジネス書編集者である。

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