cueのププププレゼン力

第10回 2016.08.24

TRY!
新しい幕を開けます♥LOVE舞台

あれれれ、僕のクリエイティブの原点は?

そんな舞台の影響で、僕の中に「キラキラした人をクリエイションしたい! 動かしてみたい!」という思いが自然と湧いてきたのだと思います。多摩美術大学染織科時代に始めた、オリジナルファブリックでのコスチュームアートを今でも続けているのは、舞台の影響でしょう。
舞台は僕にとって、最大MAXな創造の源なのです。
資生堂で今、アートディレクターとしてクリエイションしていることは、もちろん舞台とは違います。しかし、美としての脚本を描き、主役を決め、演出し、世に美しさというものを見せる、ということをクリエイションしているのだと感じます。

だから、ブランドのビーナスとして起用できないかという側面から舞台を観ている、という部分もあります。俳優が舞台の上から発するキラキラパワーは、観衆を惹きつけ、共感させる魅力にあふれています。僕は常にアンテナを張って、そんなパワーを放つ素晴らしい俳優をキャッチしたい! 起用したいのです。

クシュっとカンタン! 固めずキマる! カッコつけようぜ★

仕事上、TVドラマ・舞台・映画は常にチェックしています(映画は最近全然観られていない……)。
その中で舞台は、幕が上がった瞬間から「一体、何が始まるか?」というドキドキワクワクを体験することができ、自分のクリエイションのアイデアの源泉になることがよくある気がします。

僕が以前、アートディレクターをしていたメンズコスメティックブランドunoでは、舞台人として活躍している小野寺修二さんを抜擢、起用したことがあります。きっかけは、小野寺さんが関わった共同制作スタイルの作品『水と油』に僕が一目惚れをして、その後、追っかけをしたこと。その小野寺さんは現在、カンパニーデラシネラを主催しています。
エスプリの利いたパントマイムをはじめとするオリジナルな手法を活かした舞台は、とてもチャーミング、かつオシャレでエレガントです。

unoのヘアー商品である「FOGBAR」のCMをプランニングしたときのアイデアの1つに、小野寺さんのような動きでメンズ4人がFOGBARを取り合う、というものがあります。この4名は、妻夫木聡、小栗旬、瑛太、三浦春馬。彼らと一緒にクリエイティブできたことは奇跡ミラクル★
4人に演じてもらうパフォーマンスというか、コレオグラフィ(振り付け)を、何と小野寺さんに担当していただきました。
この企画をクリエイティブディレクターにプレゼンする際、小野寺さんがクリエイトしてくださった振り付けを絵コンテで説明しても伝わらないと思いました。そこで、彼の舞台の映像をプレゼン資料として用いることにしたのです。これが功を奏して、このCMプランで行くこととなりました。

俳優の4人には、事前に動きを練習してもらいました。そして撮影当日……それはCMを撮るというより、4人のパフォーマンスを鑑賞するような時間となりました。長回しの一発撮影が終わったときには、スタジオ中が拍手喝采となり、大興奮したのを覚えています。

あれは本当にいい企画でした。舞台世界の方をコリオグラファーとして起用できたことは、まことに嬉しいかぎりです。このご縁をきっかけに小野寺さんとはさらに交友が深まり、今でも、作品を観させていただいております。

出会いはウェディングベル

毎月、いろいろな舞台を観ています。
台詞劇はもちろん、コンテンポラリーダンス、歌舞伎、バレエ、小劇団に、海外カンパニーのものまで、雑多に鑑賞していますね。
それで今、とくにハマって追っかけをしているのが……冒頭でご紹介した劇団「はえぎわ」を主催しておられる、作家・演出家・俳優のノゾエ征爾さんなのです。

出会いは、後輩アーティストの結婚パーティーでした。「CUEさん、舞台好きですよね? あの方、岸田國士戯曲賞を受賞された演出家さんなんですよ。ご紹介しましょうか?」と花嫁。「え! マジで!? 誰、どの人、紹介して~!」と、僕は一気にテンションアップ。その日さっそくお話をして――後日、お誘いいただいて、再演『ガラパコスパコス ~進化してんのかしてないのか~』を観に行きました。

この舞台、なんと全編“黒板”を使用し、役者が台詞をチョークで描いてSTORYが展開していくという(説明できない!)見たことのない衝撃的な作品で、僕の♥はもうイチコロ。
久々に「追っかけたい!」と思える劇団と演出家を見つけちゃいました。

言葉にして言ってみなきゃ

そんなことからノゾエさんの演出作品を追いかけていたある日のこと。僕とアーティストのキムソンヘさんの二人展を開催するというタイミングで、2人の気になっている各界のスペシャリスト★10人を招いてトークショーをしよう、という話になりました。そして僕はどうしてもノゾエさんとトークがしたいと思い、アプローチして、実現となりました。

その対談中に、「舞台に関することで何かありましたら、ぜひお声がけください。僕、何でもやってみたいので」とノゾエさんにお伝えしたのですが、これが、今思えば運命♥でした。

2週間後、はえぎわの新作公演『ハエのように舞い 牛は笑う』の宣伝美術&グッズデザインをお願いされ、アフタートークにも出演することになりました。それからさらに、『飛ぶひと』『ゴードンとドーソン』の2作でも、宣伝美術のクリエイションを担当させていただくことになったのです。

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プロフィール

成田 久
成田 久

アートディレクター・アーティスト。1970年生まれ。多摩美術大学・東京藝術大学大学院修了し、1999年に資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、ベネフィーク、HAKU、インテグレート、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
社外活動では13年NHK大河ドラマ「八重の桜」のイメージポスターのアートディレクションを担当するほか、多数のアーティストのCDジャケットやMVのアートディレクション等を手掛ける。更に雑誌「装苑」にて演劇レビューを連載するなど活動範囲は留まるところを知らない。

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