cueのププププレゼン力

第20回 2017.01.25

LOVE❤人間。自らのアプローチで人生は開墾される。告白せよ!

幸せな眠りの中から目覚め

翌日。朝から湯を楽しみ、そのあと「ぜひ、食べてほしい!」と淳さんが作ってくださった御節料理をいただくことに。テーブルには赤いテーブルセンターが敷かれ、器が並べられて、御節料理が品よく盛られています。漆のお台には、お屠蘇に使う屠蘇器までありました。

山あいから朝陽が燦々と室内に射し込む清らかな空気の中、3人で乾杯します。さしずめ体験型の作品プレゼンテーション……いや、インスタレーション(場所・空間そのものを作品として体験させる芸術)でしょうか? とにかく、美しく心地良い朝の時間でした。

やはり食事には、器やあしらいが非常に大切だと改めて実感しました。お二人が時間をかけて手がけた作品に入った黒豆や栗きんとん、お餅をいただけるなんて、本当に格別の贅沢。ご馳走さまです。ありがとうございました。またお伺いさせていただきます。

新年の幕開けは美しい食との一期一会

次の日――1月3日。僕はある宿に向かいました。僕の好きな本に、ナガオカケンメイさんが発行する「d design travel OITA」があります。前回訪れた別府の宿「山田別荘」にも置いてあり、そこでパラパラと読んでいたとき、気になる場所をいくつか見つけました。

その中の1つが、この日の宿泊先、「柳屋」。“次回また来るなら泊まってみたい宿”として考えていた場所です。この宿は、“別府八湯”の1つである鉄輪温泉にあります。鉄輪温泉は蒸し湯が有名で、この地で湧き上がる温泉の蒸気を使った名物「地獄蒸し料理」は非常に人気。そんな温泉地にある柳屋の敷地内に建つイタリアンレストラン「Otto e Sette Oita」の蒸し料理がとても評判で、僕も事前に予約していました。

そしてその晩。チェックインを済ませ、宿の湯をいただき、「Otto e Sette Oita」へ。このお店のシェフ・梯哲哉さんはかなりこだわりのある方だと聞いていたので、彼にお会いするのも楽しみでした。

お客様を見渡せる広々としたワンフロア、古民家ならではの漆黒の床張り。店内の雰囲気は一見厳かではあるものの、浴衣姿で食事をするお客様もいて、不思議とほっこりした気分になります。家族連れや海外からのお客様などで、ディナーは常に満席なのだとか。

いただいた食事はコースで、シェフ自らが1つ1つのお料理を説明してくださいました。そう、プレゼンテーションです。お皿に載るお料理は、どれも見た目にも非常に美しく、たくさんの食材が絡み合って奏でるハーモニーには驚かされました。

食材は地元大分の旬のものが選ばれ、食事に合うお酒も用意されています。器やグラスはシェフお気に入りの陶芸作家・木工作家の作品が中心で、料理や飲み物に合わせたものを出してくださいました。素晴らしいおもてなしを五感で味わい、感動のひとときを過ごすことができました。

こんなにクオリティが高く、美意識の感じられるお料理を口にしたのは久しぶりです。食後酒をいただきながら、シェフの梯さんに感動と感謝の言葉を伝えて、ゆっくりお話をさせていただきました。素晴らしい一期一会でした。

無形文化遺産にも登録された日本食が、僕は本当に大好きです。そんな素敵で美しい日本食をクリエイトしている方々と、いつか何か一緒にクリエイションの仕事がしたいな❤と妄想しちゃいました。別府でのお正月がもたらしてくれた出会いです。

人生は、人との出会いで豊かに変わっていくものだと、僕はいつも思っています。「いつかあの人と組んでクリエイションしてみたい! 起用したい!」という妄想は、今も果てしなく続いています。

今年もワークショップを開講

今年も、社会人向けのデザイン専門学校「デザインプレックス研究所」から、講義とワークショップのオファーが来ました。毎年、この季節に呼ばれて開催し、今年で5回目を迎えます。講義とワークショップの両方で、合計3時間ほど学生とコミュニケーションを取ることになります。

5年前にはじめてこの依頼をいただいたとき、学校側の意図やイベント内容について、ディレクターである沼田努さんと濃厚な議論を重ねました。ワークショップはたった1時間半で、参加する生徒たちは選択授業の人がほとんどのため、互いを知らないのだそう。そういう参加者にとって、1時間半という時間は、何かを創り、発表し合うには短すぎます。それでも僕は「授業に参加する皆が楽しめるものにしたいな」と考えていました。

かぎられた時間内で参加者が無理なく創造し、さらに発表までできる……舞台のSTORYを考えるように、アイデアを練っていきます。2011年に麻布小学校に“出前授業”をしたときは、『劇団CUEの旗揚げ公演』という企画を、ある5年生クラスで3時限目~6時限目にわたって実施しました。この生徒たちとは、給食を一緒に食べたり、昼休みには何十年ぶりかのドッヂボールまで楽しんだものです。

また、ちょうど1年前には、台湾・台北の實踐大學に招かれ、学生40人を相手に一週間ほど『美味しいワークショップ』というコンセプトの国際ワークショップを行ないました。このワークショップはさらに発展し、後日、課外展覧会となって作品集まで創られたのでした。

各方面から、こうしたレクチャーやワークショップをする機会をいただき、開催しています。先々には学校や企業、県庁からもお願いされていて、「どういう内容にしようか」とNOW考えているところです。

さて、ワークショップをどうしたものか。「自分が何を重んじ、何をクリエイトしてきたのか? どんなことに興味があってこの世界に入り、現在も活動しているのか? 自分らしいワークショップはどのようなものだろう?」 といったことを考えていきます。1人1人のプレゼンテーションを、行なう側はもちろん、“聞く側”の人たちも楽しめて、なおかつ何かが生まれるものはないかな~……うーん、閃きたい❤

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プロフィール

成田 久
成田 久

アートディレクター・アーティスト。1970年生まれ。多摩美術大学・東京藝術大学大学院修了し、1999年に資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、ベネフィーク、HAKU、インテグレート、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
社外活動では13年NHK大河ドラマ「八重の桜」のイメージポスターのアートディレクションを担当するほか、多数のアーティストのCDジャケットやMVのアートディレクション等を手掛ける。更に雑誌「装苑」にて演劇レビューを連載するなど活動範囲は留まるところを知らない。

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