cueのププププレゼン力

第18回 2016.12.28

何事もTRY! LOVE♥編集長

お洒落な冬が、到来

12月。街はすっかりクリスマスモード。1年でもっとも華やかな季節が、いよいよ到来ですね。どの季節も好きですが、お洒落をするならやっぱり冬が1番。定番のファッションスタイルはあるものの、セーターに帽子に手袋にと、モコモコテキスタイルが大好きです。

それに、ウールフェチでもあります。特にマフラーは僕にとってすごく重要で、冬の装いを彩るアイテムとしてはもちろん、防寒具としても手放せません。もし編み物ができたなら、絶対ハマって、永遠に編んでしまう気がします。テキスタイル素材フェチにとって、毛糸は“魔物”。虜になるマテリアルなのです。学生時代、多摩美術大学染織科では「織り」を専攻していて、ウール素材の研究・作品制作に精を出したものです。

世界中のみなさま いらっしゃいませ

普段僕がクリエイトに勤しむ銀座の街も、この時期は、それはそれは華やかです。そこら中がイルミネーションで飾られ、まるで街全体が光でラッピングされているかのよう。夕暮れとともに、ビルや街路樹にめぐらされた電球が1つ、また1つとライトアップされ、街はクリスマスツリーのごとく輝き始めます。特にメインストリートである中央通りは、きらめきもひと際。歩くだけで、自然と気分が高揚してきます。

すでに訪れてくださった方も多いかと思いますが、銀座には新しいタイプのコスメティック店 SHISEIDO THE GINZA(銀座7ー8ー10)があります。1~3階の3フロアから成り、各フロアにはさまざまなラインナップの化粧品が陳列され、実際にお試しいただくこともできます。2011年にオープンして早5年。国内のお客様はもちろん、世界各国のお客様も毎日大勢お店を訪れ、商品を体験し、お買い求めてくださっています。

1店まるっと、クリエイション

実は僕、このSHISEIDO THE GINZAオープンの2年ほど前から、アートディレクターとして多面的にお店のクリエイションに携わっていました。プロジェクトには多数のクリエイターが参加していましたが、その中で僕は広告・グラフィックのアートディレクターを担当。お店を全部まるっとクリエイトするなんて、さすがに初めてでしたし、サインからステーショナリー、ディスプレイ、さらには店員の制服まで……。デザインすべき対象は、大小それこそ果てしなくありました。そのため、クリエイターとしてめちゃくちゃテンションが上がり、「あれもしたい! これもしたい!」という妄想アイデア★が膨張していきました。

Let’s try!

SHISEIDO THE GINZAは現在、3つあるフロアそれぞれがバラエティーに富み、コンセプチュアルなテーマ・商品・サービスを提供しています。

1階フロアは特に斬新で、ハイブランドからリーズナブルなコスメティックまで取り揃えています。その中には、僕が愛用❤しているフレグランスブランド『セルジュ・ルタンス』も。商品ラインナップはブランドごとではなく、ルージュ・スキンケア・フレグランス・シャンプー・メンズなど、アイテムごとに各ラインナップが一目でわかるようにディスプレイしています。まさにコスメティック・フルコース。

また、化粧品は長い年月をかけてその品質を改良していくため、中身の成分は少しずつではありますが日々進化していきます。ただあくまで少しずつであって、ガラッとは変わりませんので、コスメティックラインナップも季節ごとに大きく変わることはありません。そのため、別の仕掛けで「変化」を演出し、お客様に毎日楽しく足を運んでいただけるよう、化粧品以外のアイテムを僕らクリエイターが制作し、店内販売するというアイデアが生まれました。

LOVE セレクト。僕 セレクト。

数あるブランド・プロダクトセレクトのプロである「method」の山田遊さんにも参加いただきながら、社内クリエイターチームがそれぞれ「お店に置きたい!」と思う、お洒落・ユニーク・美しい・素敵なものを見つけようとアンテナを張って探し始めました。そして季節ごとにミーティングの場を設けて、アイデアを共有し、セレクトすることにしたのです。

アートディレクターでありながらアーティストとして作品も創っている僕にとって、この「セレクト」という行為はとても新鮮で、刺激的なものでした。自分がアーティストであり、かつプロデューサー気質もあると知っていたので、これまでも「このアーティストはもっとこうしたらいいのに」とか「こんなふうに展示したら作品がもっと映えるのに」と勝手に妄想することがしばしば。セレクトしたアイテムの企画展などをいつか開催したいな~、とも常々考えていました。

そのため、SHISEIDO THE GINZAでのセレクトやクリエイションは非常に面白く、ドキドキワクワク。いつもアンテナを高く張って、素敵なものを探していました。また、山田さんから新しいブランドや素敵なプロダクトを教えていただいたり、プロジェクトメンバーの後輩クリエイターのアイデアに刺激を受けたり……ミーティングはいつでも楽しい驚きに満ちたHAPPYなものでした。

そうして自分たちがセレクトしたアイテムは、ひびのこづえさん、Coquette、ANTIPAST、papabubble、SIRI SIRI、Don't try、JUBILEE……などなど。皆さんの大好き❤なブランドもきっとあるはずです。ちなみに僕のセレクトはかなりキャッチーで斬新、かつ実験的でユニークなブランドアイテムが多かったのですが、ディスプレイするとたちまち大ヒット★★★となることが多々あり、とても嬉しく感じたのをよく覚えています。

創刊『ギンザドキドキ』

さらに、お店のPRも兼ねて、フリーペーパーも発行することにしました。それも年4回、季節ごとに、お店に並ぶ祭事期のアイテムや店内のコンセプトに合わせての発行です。フリーペーパーの名前は『ギンザドキドキ』。ネーミングのアイデアはみんなで出し合い、僕が出したこのアイデアが採用されました。

そして、まさかまさか……編集なんてクリエイションしたことがないのに、この『ギンザドキドキ』の編集長を僕にやってほしい! とチームからオファーされたのです。

え、僕が編集長!? 正直動揺もしましたが、人は何でもかんでも「初めて」を経験しながら生きるもの。ならばポジティブに捉え、まず自分が楽しめるものを創ろうと決意しました! そうすれば、お客様も自然と楽しみ、手にとって読んでいただけるだろう、と。そう考えて、どーんとお引き受けすることにしました。

4人でスタート!

編集部メンバーは、僕を入れて4人。SHISEIDO THE GINZAの店長は掲載内容を編集部に任せてくださったので、まずはコンテンツコーナーの企画作りから始めることに。すべて真っ白な状態からスタートです。やる気満々❤

お店のテーマにぴったり合うようにコンセプトを立てて、表紙ビジュアルや内容を考えていきます。当たり前ですが、表紙は本当に大切。見る人を一目で惹きつけるインパクトを持ちながら、お洒落にクリエイションすることが絶対条件でありました。

記念すべき創刊号では、ブレイク前のニューカマーモデル・水原希子ちゃん(今は大人気ドメジャーですが)を抜擢。お店に置く数々のブランドアイテムで、希子ちゃんの全身をディコラティブに装飾させてもらいました。「HAPPY❤ビューティー開店します」という思いを込めて。

なんてったって「花椿」が好きでした

話は変わりますが、ずーっと以前からSHISEIDOが発行している「花椿」という雑誌があります。高校生の頃から憧れがあって集めていたのですが、当時誌面のアートディレクションをされていたのが、グラフィック界の巨匠★仲條正義さんでした。

エスプリが効いた斬新キュートなお洒落WORLDに、毎号テンションが上がったものです。そんな僕にとって、SHISEIDOに入社して「花椿」に関わるというのは1つの夢★でもありました。そして『ギンザドキドキ』の編集長としてアートディレクションをすることになったときには、おこがましいですが勝手に「仲條さんへのオマージュ❤」という気持ちでクリエイションしたいと思いました。

いい意味で「変で」お洒落で美しく可愛いものにしたいなと。そのため、ビジュアルクリエイションは飛ばしました~。HAPPYに企画を見せてプレゼンし、女優の檀れいさんや俳優の三浦春馬くんにも表紙に登場していただくことに。仕上がりはものすご~~~くインパクトのあるビジュアルで❤❤❤めちゃくちゃHAPPYでした。

オファーしてみないとね❤

『ギンザドキドキ』内の「私の逸品」というコーナーでは、椎名林檎さん、長谷川潤ちゃん、大宮エリーさん、檀れいさん、清水ミチコさん、細野晴臣さんなど、各界の著名な方々に、愛用していた想い出のSHISEIDO商品を1つ挙げてもらい、そのアイテムにちなんだエッセイを書いてもらいました。また、仲良しの漫画家・コラムニスト 辛酸なめ子さんには実際にお店を体験してもらい、その感想をなめ子さんらしい文章と絵で誌面に表現いただいたものです。ほかにも、ご愛読いただいているお客様の投稿文を募集・掲載するという企画も行ないました。

このエッセイ企画を通じて、著名な方へオファーする度胸がつきました。「この方に書いてもらったら素敵だな、読んでみたいな」と思う方に、直撃オファーをしたのです。何事もTRYしてみないと始まらないし、LOVE❤を持ってお願いすることは悪いことではないのですから。ダメでもともと、素敵な妄想が浮かんでしまったら、それが何であれ、誠意を持って伝えてみるものです。

ザ・銀座

僕は銀座に17年間通い続けていますが、SHISEIDOしかり、老舗企業や有名店の建物がこの街には実にたくさんあります。しか~し、その多くが意外と知られていなかったりするのです。そのため、「銀座にこんな素敵な場所がありまーす!」と一般の方々に知っていただくべく、『銀座にまつわるエトセトラ』というコーナーも作りました。

老舗パンメーカー「木村屋」でのあんぱん試食、「和光」屋上の時計塔撮影、昭和6年創業キャバレー「白いばら」への潜入など……いろいろと取材を敢行。僕も常連の銭湯「金春湯」では、僕自ら1番風呂に入浴し、モデルとなりました。銀座全体から見れば一部ではあるものの、このように街のいろんな「楽しい」を知っていただきたく、毎回あちこちに足を運んでいました。

何事も言ってみないと始まらない

フリーペーパーの企画を練り、ページ構成を考えるのは、細かいクリエイションや誠意が必要でなかなかハードな仕事でした。各号のテーマによって求められる構成やコンテンツは変わるため、一筋縄ではいかなかったのです。でも「まずは自分が楽しめるものにしたい! 一人よがりではなく、楽しくお洒落で、毎号集めたくなるようなものにしなければ!」と考えて仕事に臨んでいました。

最終的に、第8号をもって『ギンザドキドキ』は幕を閉じます。でもこの経験を通じて、僕のクリエイションスキルは確実にアップしたと思っています。ビジュアルの表現、企画のアイデア出し、「今、何が面白いのか? どんな物や人が“キテル”のか?」と日々アンテナを高く張って世の中を眺めること、入稿から責了までの細かな段取りや取材交渉など、たくさ~ん体験し、学ばせていただきました。

いろいろ大変なこともあったはずなのですが、嫌な思い出は不思議と何ひとつ浮かんできません。それよりも、毎回アイデアを考え、形として世に出したという、元気ハツラツでめちゃくちゃ楽しい記憶ばかりが思い出されます。

う~ん。正直もっと編集長をやっていたかった。編集長プレイ、もう一度体験したいです。SHISEIDO社内でやるなら、「花椿」編集長❤マジで立候補します!!!
もっと派手に咲かせたいな~~~。僕が編集長になっちゃったら、ユニークな方々をバンバン抜擢しちゃいますよ。名物編集長になりまっせ❤

何事も、言ってみないと始まりませんものね。

 


本連載が書籍に? 資生堂アートディレクター成田久氏が、銀座一丁目の森岡書店にて「ププププレゼン力」展を開催中! 2017年12月19日(火)~28日(木)まで。詳細はこちら

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プロフィール

成田 久
成田 久

アートディレクター・アーティスト。1970年生まれ。多摩美術大学・東京藝術大学大学院修了し、1999年に資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、ベネフィーク、HAKU、インテグレート、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
社外活動では13年NHK大河ドラマ「八重の桜」のイメージポスターのアートディレクションを担当するほか、多数のアーティストのCDジャケットやMVのアートディレクション等を手掛ける。更に雑誌「装苑」にて演劇レビューを連載するなど活動範囲は留まるところを知らない。

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