人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

加速する50代のリストラ、早期・希望退職――
サクっと転職するという選択肢を持とう!

転職できない人は、「自分の棚卸し」ができていないだけ

30年間働いてきた人なら、誰でも転職できます。なぜなら、それだけの経験値を積んできたからです。あなたの価値を発揮できる場所は、必ずどこかにあります。

転職できない人は、自分の棚卸しができていないだけ。たとえば今は年収1000万をもらっていても、本当はいくらかなのかが見えているか。転職すれば年収は下がるのが当たり前です。年収1000万に固執してしまうと転職は難しくなりますが、「自分の市場価値は年収700万」といったことが見極められていれば、転職先はあります。

客観的に自分の市場価値を判断して、年収700万だと思ったら、その年収で暮らしていけるように自分の生活をちょっとリストラすればいいのです。

年収700万で住める家で、年収700万で暮らせるように生活設計をする。今の会社にしがみつくより、そのほうがずっと気楽です。転職をして年収700万に下がっても、評価されれば、1000万に上げることも可能です。

私も転職したときに年収900万から年収650万に下がったことがありました。「ああ、これが自分の市場価値なんだな」と知ることができて、気が楽になりました。自分の市場価値が650万とわかれば、あとは上げていけばいいだけです。

自分の市場価値を知ったら強いです。自分の市場価値がいくらなのかを判断できなければ、人材紹介サービスや転職エージェントに聞けば教えてくれます。

今の会社に居座りたければ、自分の会社をとことん愛しましょう

自分の市場価値を知れば、逆に今の会社に居座るテクニックも見えてきます。自分のキャリアを一回棚卸しして、自分は何ができて、何ができないのかを見極める。そうすれば、「これをちゃんとやればいいんだ」「ここが自分の強みなんだな」と努力の方向性がわかるので、会社に残り続ける道も見えてきます。

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今の会社に残りたいけど、能力的に厳しい。年収が下がるのなら、転職はしたくない。そういう方もいるかもしれません。

そういう場合は、「会社大好き」をアピールしましょう。企業にとって、理念を浸透させることはとても大事です。会社が大好きで、企業理念を体現しているような人材は、人事も経営もそうそうリストラできません。

理念とは、企業が世の中に提供する価値。それをすごくリスペクトしていて、「いい会社だなぁ!」「これをやっていこうよ!」と周りのみんなを焚きつけるくらいの人は、たとえ能力が低くても「しょうがないなぁ、あの人、会社大好きだから」と、みんなほんわかしてしまって、ひどい目に合わせにくくなります。

具体的に何をすればいいかというと、仕事の目的を「理念」とイコールにするのです。会社の行動指針を体現する。会社が大事にしていることを、とことん大事にする。たとえば、掃除を大事にしている会社だったら、掃除を徹底的にする。

人間、自分を愛してくれる人に対しては、なかなか冷たくはできないものです。それは会社も一緒です。居座りたいなら、とことん会社を愛しましょう。それでもリストラされてしまったら、それはもう仕方ないです。愛してもフラれることはありますから。

そうなったときのためにも、一回、棚卸しをしておきましょう。自分の市場価値を知っておけば、今後の人生でどのような場面になっても、必ず役に立ちます。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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