小川流2018燕改革!

交流戦勝率1位をもたらした
チーム内競争と若手起用のコツ

2018.06.22 公式 小川流2018燕改革! 第7回

選手の育成と勝敗は永遠の課題
若手登用の際に気をつけていること

――一方の坂口選手のファーストコンバートの経緯は?

小川 坂口の場合は、キャンプ直前に青木が復帰することが決まって、外野手構想を再編することになりました。外野手候補が厚みを増した分、さまざまなアレンジが可能になり、その中で、「坂口のファースト転向」というアイディアが生まれました。本人には、キャンプ中に伝えましたが、彼のすごいところは何も言わずに黙々と練習に取り組んでくれたことです。本当に申し訳ないんだけれども、打順に関しても、守備位置に関しても、坂口の場合はいろいろな起用法を試しています。それでも、不満を口にすることなく、チームのために一生懸命に取り組んでくれている。頭が下がる思いです。

――前回の話にも出てきましたが、不動の正捕手と目されていた中村悠平選手に代わって、古賀優大選手や松本直樹選手を起用するなど、今年はチーム内の競争も激化しています。戦力の厚みという観点から考えると、これはいい傾向ですね。

小川 「若手を育てながら勝つ」という考え、「育成と勝敗の両立」というのは永遠のテーマですけど、本当に難しいことです。正直言えば、今はまだそのバランスはうまくとれていません。若手にはレベルアップのために経験を積ませたいけど、目の前の試合にも勝たなければならない。昨年、96敗したときにも、「もっと若手を使え」という意見もありました。でも、プロである以上、「目の前の試合に負けてもいいから、若手を育てよう」というのは許されないと、僕は思っています。

――その結果、目の前の試合にも勝てない、若手も育たないという悪循環に陥る危険性もありますよね。

小川 当然、あります。今年も交流戦前までは、悪循環に陥っていたと思います。それに、負けが続くと、チーム内がバラバラになる可能性はすごく大きい。ただ、その中でも実戦を通じて、中尾(輝)や風張(蓮)などが成長してきているのも事実。去年までと比べると、彼らは急激に成長して雲泥の差があります。自信を持つことの大切さを改めて感じます。

――若手にチャンスを与える場合に、小川監督が重視していることは何ですか?

小川 たとえば、「その選手の潜在能力に期待して、たとえ結果が出なくても起用し続ける」というのは二軍なら許されることだと思っています。でも、一軍の場合はそれは許されないと僕は考えます。期待の若手にチャンスを与えるとしたら、あくまでもファームできちんと結果を残していることですね。ファームで何も結果を残していない選手にチャンスを与えることは、チーム内に不協和音を生み出す原因となりますから。

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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