小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

稀代の大物・村上宗隆とクローザー梅野雄吾、
次代を支える2選手を指揮官はどう見ているか

2年目とは思えぬ堂々たる態度、
19歳・村上宗隆への大きな期待

――一方、打撃陣では故障者が相次ぐ中で、2年目の村上宗隆選手が奮闘しています。5月12日の読売ジャイアンツ戦では四番も務めました。彼については、どのような評価をしていますか?

小川 彼を四番にしたのは、青木も山田もバレンティンも欠場したので、他にいなかったからです(笑)。ただ、将来的には間違いなく四番を任せられるような選手であるのは間違いないです。村上に関しては、打つ方に関しては本当に素晴らしいと思いますよ。

――村上選手の魅力、長所はどこでしょう?

小川 長所はやっぱり、長打力と精神力でしょうね。左にも、右にも一発が打てるのは大きな魅力ですし、常に堂々として、物おじしない図太さは大物感がありますからね。

――精神力の強さとは、具体的にはどんなことでしょうか?

小川 村上の場合、先輩を先輩と思っていないふしがありますね。先日の試合で、雄平が一塁走者に出ていて、村上が打席に入ったときに、相手投手が代わったんです。打席に入るときに、村上が「雄平さーん」って、雄平を呼んで、その投手の球種についてアドバイスをもらっているんです。その光景を見ていたベンチからは、みんなで「いや、お前が聞きに行けよ!」って、一斉に声が出ましたから(笑)。雄平がライトを守っていて、好プレーをしたときにも、「雄平さーん、ナイス!」って、対等な感じで接しているんです。

――確かに、精神力が強いというか、図太いですね。でも、一歩間違えると、単なる失礼なヤツになりかねないですね(笑)。でも、マウンド上のマクガフ投手やハフ投手など、外国人投手に対しても、臆せずに声をかけに行く姿は堂々としていて頼もしさすら感じさせますね。

小川 そうなんです、失礼なヤツなんですよ、すでに(笑)。先ほど話に出た梅野でさえ、先輩をきちんと立てますけど、村上の場合は先輩を先輩と思っていないというか、同等な存在だと考えているんじゃないかと。本人はまったくそんなつもりはないんでしょうけど、周囲にはそう見えますからね。でも、そこが村上の精神力の強さであり、大物感を感じさせるところですね。これから、さらに経験を積むことで、もっともっといい選手になっていくと思うし、彼には誰からも愛される選手になってほしいと思っています。

――現状では、サードを守ったり、ファーストを守ったりしながら試合に出場していますが、多少のエラーやミスには目をつぶりつつ、ミスを補って余りある打撃を評価しているという感じでしょうか?

小川 確かに、あの打撃は魅力的ですけど、「ミスを補って余りある」というわけではないですね。やっぱり、ミスはミスですから。エラーによって試合の流れが大きく変わることもあったし、記録に残らないミスもたくさんありますから。エラーに関して責めたり、怒ったりすることはないですけど、「こんなことがないように、もっと練習をしろよ」ということはきちんと伝えるようにしています。軽い感じでボールを捕りに行こうとしたり、ゴロを弾いた後に気持ちが切れてしまったり、まだまだやるべきことは多いです。

――そういうときは、どのような態度なのですか?

小川 もちろん、神妙に聞いていますよ。きちんとあいさつもできるし、反省もする。そういう意味では、村上も素直なヤツなんです(笑)。打撃陣に関しては、ようやく故障者も戻ってきたので、村上の負担も少しは軽くなってきました。相手投手からのマークは厳しくなるけど、彼はまだ実質1年目なのだから、憶することなく、堂々とプレーしてほしいですね。


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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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