小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

2年間の監督生活で考えたこと
小川監督からのラストメッセージ

2017シーズンまさかの「96敗」から、昨シーズンセリーグ2位という快進撃を見せたヤクルトスワローズ。ドン底のチームを見事立て直した小川監督は今年、「KEEP ON RISING~躍進~」をスローガンに掲げ、さらなる飛躍を目指す。本連載では2018年シーズンに続き、インタビュアーにスポーツライター長谷川晶一氏を迎え、「躍進」を成せる強いチームをつくるにはどのような采配と決断が必要なのか――小川監督へのタイムリーなインタビューを通じて組織づくりの裏側に迫っていく。

(インタビュアー:長谷川晶一)

村上、廣岡、塩見、中山……、
若手が台頭した19年シーズン

――前回のお話にもありましたが、今シーズンは故障者が相次いだことで開幕前に描いていたオーダーを組むことができませんでした。でも、その代わりに、村上宗隆、廣岡大志選手ら若手野手が台頭したことは、将来に向けての明るい希望だと思います。

小川 そうですね。間違いなく来年以降につながると思います。村上も廣岡も、「打たなければ試合に出られない」という思いで必死に練習をし、試合に出続けたことで、多くのことを学んだと思います。あとは、もう少し守備に対する意識を強く持ってほしいし、守備の安定感がほしいです。特に廣岡は、まだまだミスが目立つので、もっとディフェンス面を強化してほしいですね。

――廣岡選手はなかなか今季初ヒットが出ずに苦しみました。

小川 開幕以来41打席ノーヒットで、42打席目にようやく最初のヒットが出ました。その中で、最終的によく打率を2割台まで持ってきたと思います。ホームランも自身初となる10本打ちました。彼にはシーズンが終わる前に直接、「今年は苦しい時期があって大変だったと思うけど、よく2割まで戻した。お前の今年一年はこれからの野球人生にとって、すごく有意義な一年になると思う。だから、今年経験したことを単に記憶しておくだけじゃなく、きちんと記録しておけよ」って言いました。彼が、その言葉をどう感じるかはわからないけど、今年の経験を大切にしてこれから歩んでほしいです。

――シーズン終盤の9月19日には2年目の塩見泰隆選手がプロ初ホームランを放ちました。塩見選手に対しても、監督は大きな期待を寄せていましたね。

小川 塩見は本当にいいものを持っていながら、なかなか試合でそれを発揮することができなかった。まだまだ、一軍の試合における精神状態には課題があります。ですけど、ほんのちょっとずつだけど改善の兆しが見えています。大学卒、社会人経験者でありながら、ルーキーイヤーの昨年はヒットが1本しか打てなかった。今年も序盤は苦しんだ。その理由は、まだまだ考え方が甘い部分があったからです。「自分は期待されているんだ」という過信がありました。そう思うのは別に構わないけど、それと普段の行動が伴っていなかった。でも、ようやく考え方が変わりつつありますね。

――考え方を変えるために、監督は何か指導をされたんですか?

小川 彼が一軍に上がってきたときに、直接、本人を呼んで、「お前に対しての期待度は確かに高い。でも、今回の一軍昇格は期待しているから一軍に呼んだのではなく、お前自身がファームできちんと成績を残してつかみ取ったものだ。だから、自信を持ってプレーしてくれ」と言いました。9月(12日)の甲子園で初回に先頭の廣岡がスリーベースヒットを打ちました。そして二番の塩見が打席に入りました。三塁側ベンチから見ていて、「何とかしなければ」という焦りが背中からにじみ出ていたんです。そして、「何でもいいからバットに当てたい」という思いが空回りして、技術的に言えばトップの位置に入る前に当てにいこうとして、結果的に三振しました。ああいう雰囲気で打席に入っても、絶対に打てないんです。彼は割り切ることができない。その辺りはまだ課題ですけど、プロ初ホームランが出たことで、来年はさらに飛躍してほしいです。

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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