企画書が苦手な人はたった1つの極意を知らない

企画書作りの鉄則とは(写真:takeuchi masato/PIXTA)
55歳を機に博報堂を退職した音楽評論家のスージー鈴木さん。激務で知られる広告業界で働きながら、10を超える著作を発表。その“二刀流”を可能にした仕事術とは? 同氏の新著『幸福な退職 「その日」に向けた気持ちいい仕事術』より一部抜粋し再構成のうえ、本稿では「企画書」作りについて解説します。
 
第1回は『ダメ上司は「会議10分遅刻」の損失を知らなすぎる』
第2回は『「後輩を演じられる」新人が配属後にうまくいく』
 

企画書作りは文字要素が7割

企画書というものが、ビジネスの現場でこれほど多用され、これほどメジャーな存在になったことは、かつてなかったことだと思います。さらに言えば、企画書の体裁がこれほどまでに統一されたのも、近年のことなのです。

パワーポイント(パワポ)に、文字だけじゃなく、グラフや画像、たまには映像まで貼り込まれた、何十メガバイトもする、色鮮やかできらびやかなドキュメント──。

平成初期ぐらいまでは、こんな奇妙なドキュメントを作るのは、広告会社くらいのものでした。その頃はまだ、ドキュメントをPCからスクリーンや巨大モニターに投影することも一般化していなかったので、得意先に配布するときは、高額のカラー印刷代を払って、透明ビニールの表紙を付けて、製本して、と大騒ぎでした。

しかし、パワポというプレゼンテーションソフトがビジネス標準となり、軽量で安価なノートPCやプロジェクターがあっという間に普及したことで、それまでバラバラだった「企画書」像が、先述のようなリッチな体裁に統一されていったのです。

オフィスを舞台としたドラマで、イケメン俳優が、大スクリーンを前にパワポを投影しながら、意気揚々とプレゼンするシーンを見て、広告会社出身のオジサンは、「ああ、こういう企画書、こういうプレゼンが普通な世の中になったんだなぁ」という感慨にふけるのですが。

企画書の体裁がリッチになったということは、企画書を書く、いや作るのが大変になったということです。文字を埋めて、グラフを作って、画像を入手して……「登場人物」が多いから作るのも大変。深夜までかかって、画面の中のバラバラな登場人物と格闘している人も多いでしょう。

大切なことを言います。

「企画書は文字」なんです。絶対に。

リッチな体裁が普通になってから入社した人は、このあたりを理解していない。だから、バラバラな登場人物を前に混乱してしまう。

逆に、パワポが無かった頃のビジネス現場の経験があり、例えばA4縦の文字だけのドキュメントでプレゼンしたことが何度もある私などは、「企画書は文字」「とりあえず文字さえあればプレゼンが出来る」ということを体感的に理解しています(もっと言えば、ドキュメントなしの口頭プレゼンなども、何度も経験しています)。

最初に「文字要素」だけを固めること

だから、企画書作りの鉄則は、まず最初に、文字要素だけを固めることなのです。

具体的に言えば、私の場合はまず、ウィンドウズPCに入っている「メモ帳」というソフトで、企画書に埋め込む文字をひたすら書いていきます。企画書を「作る」ことを、企画書を「書く」ことから始めるのです。

文字を書くときに使うのは、パワポと同じマイクロソフト社のワードだろうという人が多いと思いますが、ワードは、余計な機能が多く、文字列をきれいに見せるのには適していますが、文字列そのものを埋めていくのには向いていない。

逆に「メモ帳」は、文字列の検討だけに特化した、実にいさぎよいソフトで、今でこそフォントや級数を指定できますが、昔はそれすら出来なかったという、あれこれ考えがちな、落ち着きのないビジネスマンを、書くことだけに集中させる、実にありがたいソフトなのです(ちなみに私は、企画書だけでなく、例えばこのような書籍用原稿も、すべて「メモ帳」で書いています)。