企画書が苦手な人はたった1つの極意を知らない

では、早速ご説明しましょう。

「鈴木メソッド」は、「ひろげ」と「ぶつけ」で構成されます。

「ひろげ」は、アイデア作りのテーマ(お題)の近接概念に世界観を広げる、言わばアイデアの「的(まと)」を広げることです。

例えば、後述する「画期的な洗濯ばさみのアイデア作り」の場合、「洗濯ばさみ」というテーマを中心に「的」を広げる。コツとして、「ひろげ」るときには、形容詞を多用するのが効果的なようです(形容詞は頭を柔軟に、感覚的にします)。

・「洗濯ばさみ」→(洗濯と言えば)「白い」→(白いと言えば)「雪」

という具合ですね。これによって「洗濯ばさみのアイデア作り」というピンポイントで狭いテーマではなく、「白い」や「雪」という近接概念を含めた広い「的」からもアイデアを発想できることになる。

テーマと関係のない事象を脳の中に放り込む「ぶつけ」

次に、こちらの方がより重要なのですが、「ぶつけ」です。これはいわゆる「強制発想法」と言われるもので、テーマにまったく関係のない事象を脳の中に放り込んで、テーマとその事象の異種配合によって、無理やりアイデアを紡ぎ出すことです。

例えば、机の上に散らばっている写真と「ぶつけ」て、無理やりコピーを考えるとか、新聞に載っている記事と「ぶつけ」て、無理やりイベント企画を考えるとか、よくやりましたよ。

後述する「画期的な洗濯ばさみ」の例の場合、「長嶋茂雄」など、突然、何の脈絡もない野球選手が登場しますが、これも「ぶつけ」。野球選手にしているのに他意はないのですが、そもそも「ぶつけ」ということ自体、脳に一定のストレスをかけるものなので、できるだけ自分の趣味に近い事象と「ぶつけ」る方が、ストレスが減ると、経験的に思うのです。

それでは「鈴木メソッド」の実例を見てみましょう。「これがプロのアイデア発想プロセスだ!」という触れ込みで、先述の研修にて披露していた「画期的な洗濯ばさみのアイデア作り」の事例です。

「洗濯ばさみかぁ、画期的な洗濯ばさみって、あるのかなぁ」
→(ひろげ)「洗濯と言えば、形容詞で言えば『白い』だなぁ」
→(ひろげ)「『白い』と言えば、雪だ」
→(つぶやき)「雪が降るような、寒い地域に対応した洗濯ばさみってあるかしら?」
●「アイデア①:熱を発し、寒い物干し台でも使いやすい、カイロ付き洗濯ばさみ」

→(ぶつけ)「長嶋茂雄」
→(ひろげ)「長嶋と言えば、派手」
→(つぶやき)「そう言えば、洗濯ばさみって、何であんなに地味なんだ?」
●「アイデア②:キティちゃんのキャラクター付き、派手で可愛い洗濯ばさみ」
●「アイデア③:カタチ的には、手がはさみになっているバルタン星人の方がいいかも。バルタンばさみ」


→(ぶつけ)「2番打者の井端弘和。派手ではなく、もっと実直に」
→(つぶやき)「実直ということは、まずは基本性能である『はさむこと』にこだわる」
●「アイデア④:海沿いなどで風に飛ばされないよう、めっちゃ固くはさむハードばさみ」

→(つぶやき)「そもそも外で使うか? 都会の場合、部屋干しが多いだろう」
●「アイデア⑤:部屋干しの嫌なニオイをカバーするお香付き洗濯ばさみ」★

→(ぶつけ)「中村剛也(おかわり君)」
→(ひろげ)「巨漢、大食い」
●「アイデア⑥:巨漢用の特大洗濯ばさみ」
(以下、続いていく)

「ひろげ」て「ぶつけ」て、いいアイデアを量産

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こんな感じです。何となくご理解いただけましたでしょうか。確か、2005年くらいに作ったものなので、選手名など、やや時代がかっていますが、ご容赦ください。あと「つぶやき」というのは、自らの一生活者としての感覚の発露です。つまりは日々の観察眼が問われます。

さて、アイデア⑤に★マークが付いています。何かというと「これ、なかなかいいアイデアじゃないか」という意味での★です。

言いたいことは、例えば、ここにある6つのアイデアで、星が付くような冴えたアイデアは1つだけ。要するに、先に述べた大原則論のように、アイデアの数が質を規定するということなのです。

「ひろげ」て「ぶつけ」て、いいアイデアを量産してください。