“怪物”亀山ד天才”岡本 スペシャル対談

DMM.com会長・亀山氏×『モンスト』生みの親・岡本氏――二人が考えるお金と仕事と未来(前編)

株式会社DMM.com“取り仕切り役会長”の亀山敬司氏と、近作「モンスターストライク」を始め、数々のヒット作を世に送り出してきたゲームプロデューサーの岡本吉起氏のアルファポリス特別対談。挑戦し続ける同い年二人の考える働き方、組織・チーム論とは。「初任給」から、ゲイバーでの「初体験」も飛び出す前半戦、スタートです。(後編はこちらから)

(写真/今枝侑哉 構成・文/沖中幸太郎   取材場所/銀座奥田

消費よりも燃料としての「お金」

亀山敬司氏(以下、亀山):岡本さんは、お酒飲まないんだっけ。

岡本吉起氏(以下、岡本):今年の1月からですね。これからやることを達成するまで、お酒を絶とうと決めたんです。飲んじゃうとトコトンできないと思って。僕は感性が鈍くて自分に才能がないのを知っているから、誰よりもトコトン繰り返し同じことをしないといけなくて……。ゲームだってそうだし、パチンコもそう。それに自分に才能があると思って仕事するときつい。

亀山:うん、人生楽しい方がいいよねー。今日も楽しくやろう。

岡本:亀山さんは、最近どんな感じなんです?

亀山:このあいだカミさんとモルディブに行ってきたけど、普段は、毎日会社に行って働いてるよ(笑)。

岡本:たくさん働いて、たくさん稼いでる(笑) 亀山さん、リタイア後にいくらあればいいと思ってます?

亀山:今も昔も、仕事して儲けることが楽しいからまだ考えられないけど、将来全部仕事がなくなったとしたら、カミさんとふたりで年に1回海外に遊びにいけるくらい余裕あるとありがたいかな。

岡本:僕も同じ。自分の消費なんてものは、たかが知れています。

亀山:まあ、商売やってるうちは消費というよりもパワーとして、お金は必要だよね。1億よりも10億あったほうがやれることが多くなるし、お金儲けも色んな新しい仕事をするためのパワーづくりだよね。

岡本:だから、個人的な消費としては興味がない。

亀山:うん、今はね。モルディブ行けるぐらいでいい(笑) リタイア後の「消費」も次に残さないためだから、貯め込むために働いてるわけでもない。でもそういうお金と仕事の話で言うと、岡本さんのクリエイティブの世界の場合、「お金パワー」なくてもできるところあるんじゃない?

岡本:確かに腕一本っていう部分はありますね。とはいえ、お金がなさそうなところに良いヤツはなかなか集まらないのも事実で……。だから「俺は金を配るぞ」ってわざわざ言ってる(笑)


亀山:そうして、『モンスト』はヒットして儲かった。

岡本:おかげさまで、このあいだ会員数が3000万人を超えました。とはいえ、日々のお金の心配をしなくてよくなったのは先月(2016年4月)やっとですよ。ゲームリパブリックで抱えた十ン億円の借金をようやく返し終えたのが今年の1月で……。『モンスターストライク』がヒットしたあとも入金があるまでしばらくは、毎月ごくわずかのお金で生活繫いでいましたから。他人から見たら「どん底」だったかもしれません。あんまり、そういう意識はありませんでしたが。

亀山:そう考えると、俺なんかはそういう「どん底」を知らないんだよな。大きな借金もしたこと無かったし、そのかわりドカーンと上がったこともないし、常に少しずつの堅実経営(笑)

ホストクラブにゲイバー 体を張った「ウブ」な時代

亀山:初めてした借金らしい借金も、石川に戻ったあとに開業したプールバーの改装費ぐらいで、それまでやってた露天商の仕事も自前のお金でやってたから。一番最初にお金を稼いだのは、新宿二丁目でバックダンサーやってたとき。19のときかな。初任給は8千円(笑)

岡本:僕は、ホストクラブとゲイバー(笑)

亀山:みんな一度は体を張ってる(笑)

岡本:人生で経験することないふたつを見ておこうと思って。

亀山:俺は単純に時給が良かったから。最初、先輩に「ホストクラブで、高級待遇だから」とダマされて連れて行かれたのが新宿二丁目。どんなところかも知らずに、言われるがままにビキニパンツはかされてワッショイワッショイ……今みたいに日焼けしていなくて「お肌つるつるね」なんて言われたぐらいウブな時期だったよ。

岡本:僕もまあまあ、「かわいい」って言われてました。

亀山&岡本:二人とも今とはぜんぜん違うよね(笑)

岡本:ただ見た目に反して、周りの大人には「ちょっと悪いぐらいが大成するんやけんね~」と慰められながら育ちましたね。僕の方は。

亀山:悪かったの?

岡本:悪いと言われることは、大抵やってましたね。

亀山:ゲームとかは?

岡本:実は全く興味なくて。亀山さんの学生時代は?

亀山:俺はなんにも考えていなくて、とにかく寝てばっかり。高校卒業後に東京出てきたのも、みんな行っているからという理由だったし。税理士の専門学校に通ってたのも、なんとなく稼げそうだから。でも高校時代何もしていなかったぶん、結構真面目に頑張ってたかな。不良の岡本さんと違って(笑)

岡本:いやいや(笑) これでも創造社デザイン専門学校時代は、最優秀賞貰えるくらい、ちゃんとやってましたよ。なんでもとことんやらないと気が済まないので、悪いことも勉強も真面目にやる。

亀山:俺も真面目にやってたんだけど、ある日専門学校の先生から「今から税理士やっても儲からないよ」ってアドバイス受けて、その日にやめちゃった。で、バックダンサーやったり居酒屋で深夜まで働いたり。でそのとき、夜中まで仕事しててたまたま六本木駅で始発を待っている時に、知り合ったおばちゃんから露天商の仕事教えてもらって「どうやってやるんすか、教えてください!」って弟子入りして。そんな感じだね。露天商の話は、尾ひれがついて「アヤシイ外国人に弟子入り」みたいな感じになってるけど、「アヤシイおばちゃん」ね。

露天商で人気キャラを描いた皮布のキーホルダーとか売って、それから姉に呼ばれて石川の実家に帰って、雀荘とかバーとかいろいろやりながらレンタルビデオ屋を始めて、今はDMMという会社で、取り仕切り役をやらせてもらっています(笑)


岡本:まあでも、何がどうなるかわからんちゅうことですよ。僕の場合は、コナミに正式に入社する前から、イラストレーター志望で手伝いとして入っていたんですけど、まわりに色々おだてられて気づけば、連日三時間半睡眠は当たり前で、そのうち会社に泊まり込むようになって……イラストの話がいつのまにか企画とかするようになった。そこから今のゲームの道に繋がっています。

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プロフィール

岡本吉起
岡本吉起

チームを率いてヒットを飛ばす“山賊系”ゲームクリエーター。愛媛県出身。株式会社コナミ、株式会社カプコンと渡り歩き、数々のヒット作、ゲーム作品を生み出す。独立し、立ち上げたゲームリパブリック社で「十数億」の債務を抱えるも、アプリゲーム「モンスターストライク」で再起。「ゲーム」では成し遂げたとして、現在は「パチンコ」、「エロ」も制覇すべく、エンターテインメント界の三冠を目指して禁酒中。

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