上司1年目は“仕組み”を使え!

上司1年目が知っておくべき「部下が仕事にイライラする一番の原因」とは?

2021.11.18 公式 上司1年目は“仕組み”を使え! 第14回
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部下が仕事にイライラする原因は「見通しのなさ」

部下に自主的に、基準高く働いてもらうためには、まずは「仕事からエネルギーを奪われる」状態から脱却してもらわなくてはいけません。どうすれば、部下を仕事からエネルギーをもらえる状態にできるでしょうか?

皆さんも、過去に、仕事からエネルギーを奪われていたときはありますか? 私自身、日頃、割と仕事からエネルギーをもらうタイプではあるのですが、それでも瞬間瞬間で、仕事からエネルギーを吸い取られているような感覚になることがあります。仕事が終わって、「疲れたー」と呟いてしまうようなときもあります。

いえ、むしろ、仕事が楽しく、エネルギーをもらうばっかりだ、という人の方が少ないかもしれません。同じ人でも、仕事からエネルギーをもらったり奪われたりするというのが、普通なのです。

では、こうした、仕事からエネルギーをもらう/奪われる、この違いは、なぜ起こるのでしょうか。

実は、人が仕事にイライラし、エネルギーを奪われるときには、ある共通点があると私は考えています。それは、「見通しが持てないとき」です。

「この仕事、いつ終わるんだろう」
「これをやって何になるんだろう」

そのように先のことの目途が立たないと、だんだんとイライラしてきます。それが日々積み重なることで、仕事が楽しくなくなり、仕事に行くたびに疲れて、消耗するようになってしまいます。

上司にはその仕事を与えた先の未来の部下の姿が見えていたとしても、部下自身にそれが見えていなければ「何のためにやらされているか分からない」面倒な作業でしかない、ということです。

もし部下の働き方に「やらされ感」を感じるのであれば、それはあなたが見通しを持たせられていないからかもしれません。

見通しが合わない人がいると、途端にエネルギーを奪われていく

組織であっても、家族であっても、学校の部活であっても、見通しが持てていない、あるいは見通しがバラバラな状態では、なかなか前にも進まず、互いに衝突して、無駄にエネルギーを消耗してしまいます。

見通しを共有できていないチームというのは、暗闇の中でそれぞれが別々の方向に向かってオールを漕いでいるボートのようなものです。どこに向かっているのか、自分がいまどこにいるのかもわからず、体力だけはどんどん削られていく。これではどこにも進めません。。

一方で見通しを共有し、同じ方向に向かって進んでいるという自覚を持っているチームは、全員の力が合わさってものすごいスピードで前に進み始めます。

最初から皆が同じ方向を向いてくれていればいいのですが、現実はそんなに甘くありません。楽をしたい人、仕事にやる気が見いだせない人もやっぱりいます。上司となった以上、そんな人材とも付き合っていかなくてはいけません。

まずはしっかりと見通しを立て、それを共有することで部下と同じ方向を向いて仕事ができることを目指しましょう。

6Mシートを活用して、見通しを共有する習慣をつけよう

そこで私がコンサルティングの現場で実際に使っているのが「6Mシート」です。6MのMとはMonth(月)の意味で、6か月先の見通しを話し合うためのシートです。A3用紙を用意して、6Mシートとタイトルを書いたらシートは完成です。この紙に、6カ月後の状態を自由に書いていきます。

・業績
・お客様満足度
・組織の状態
・必要なスキル、能力
・上記をどうやって達成するか

それぞれ、「半年後、自分たちはどのようになっていることを目指すのか」をチームのメンバー全員で話し合います。話し合った内容をA3用紙に書き込みます。

3ヶ月だと短すぎ、1年だと先のことすぎてぼやけますので、6ヶ月という期間がちょうど良いのです。半年あれば、新しいメンバーを迎えたり、新たなプロジェクトを始動したり、と色々なことができます。

そもそも多くの人は今月のことしか考えていないので、未来のイメージを持つ機会がありません。

半年後のイメージを言語化しようとすると、曖昧なままになっている部分や認識が違っていたことが見つかったりします。さらには、部下自身から「私はこういう風にしたい」といった意見も出てきます。

見通しを共有できているからこそ、上司から指示された仕事に対しても「これは〇〇に繋がっているんだな」と理解でき、受け入れる余裕が生まれます。

さらに実際にその見通しが現実になったとき、自身の行動の結果を実感し、仕事に対する達成感を得やすくもなります。この達成感が次の行動のモチベーションにつながります。

互いに、エネルギーを与えあえる職場を目指そう

見通しを徹底的に共有している組織は、一人ひとりの全ての行動や選択が「どうすればもっと良くなるか」という共通の目標を向きます。

そうすると、コミュニケーションの場面においても相手の言葉の意図もよく分かるようになり、理解できないモヤモヤもなくなります。

・仕事の見通しが持てる
・見通しに沿った行動をメンバーそれぞれがとれる
・同僚とのコミュニケーションが良好になる
・見通し、目標を実現できる
・達成感が得られる
・仕事が楽しくなる

こうした好循環に乗せることができれば、仕事そのものが楽しく感じられるようになるだけではなく、上司や部下、つまり一緒に働く人からもエネルギーを互いに与え合えるようになり、組織はますます強くなります。

会社の決算期に合わせて半年に一度、6Mシートを活用した「見通し会議」をぜひ取り入れてみてください。

 

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...
その仕事、部下に任せなさい。

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
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