上司1年目は“仕組み”を使え!

デキる上司は「部下との距離」をどう縮めるか

2022.10.20 公式 上司1年目は“仕組み”を使え! 第36回

小さなことこそ大きなこと

次のステップは、「困りごとを解消する」です。単に組織のパフォーマンスを落とすだけの不満や愚痴は、ニコニコと話を聞いてスルーしてもよいのですが、中には組織の改善につながるものもあります。そんなときは力を貸しましょう。困りごとの解消は、関係性の改善に非常に役に立ちます。

困りごとというのは、人によって感じ方が違うものです。たとえば、椅子の座り心地が悪いとか肩が凝るとか腰が痛いとか、空調が寒いとか暑いとか、会話の音量がうるさくて集中できないとか。わりと小さなことで、皆大きな不満を感じているのです。

そういった小さな問題を、小さなうちに解消してあげる。すると、困りごとがなくなった感謝の気持ちが育ち、協力関係ができあがっていきます。逆に、この小さな火種を放置してしまうとどんどん大きくなってしまい、大炎上状態になるのです。
まだ関係性ができていない段階では、「小さなことこそ大きなこと」として、1つひとつ改善していくことが重要です。

オフィスの設定温度問題

空調の温度のような問題はまさに好例でしょう。組織には必ず暑がりと寒がりがいますから、誰にとっても最適な温度というのは存在しません。そのため、「仕方ないよね」と放置して、いつまで経っても改善しない組織が非常に多いのです。
しかし、この小さな火種が「うちの会社って〇〇だよね」と愚痴の温床となり、大量の腐ったリンゴ社員を育ててしまうことになります。

この問題を軽視せずに、空調の温度についてみんながどう感じているのか、ミーティングでヒアリングしたり、個別に意見を聞いたりしましょう。暑いと思っている人、ちょうどいいと思っている人、寒いと思っている人の人数を出して共有すると、問題の認識を組織内でも持つようになります。
空調の位置によっては、風が当たって極端に寒い場所があったり、空調が利きにくいエリアがあったりします。席替えをしてみたり、風よけを設置して寒さを防いだり、極度の暑がりの人には扇風機をつけたりなど、改善の方法はいくらでもあります。

部下の困りごとは、関係改善のチャンス

繰り返しになりますが、大事なのは「小さなことこそ大きなこと」としてしっかりと話し合って解消することです。目標に燃える人や優秀な人ほどこのプロセスを省略します。「そんな小さな問題に関わっている時間はない」と思ってしまうのです。

しかしこの火種を放置すると、バッドサイクルに突入し、結果として組織としての生産性が著しく落ちます。部下の困りごとを見つけたら逆にチャンスだと思い、解消に注力しましょう。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...
その仕事、部下に任せなさい。

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
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