【中東の難しさ】アラブ諸国がガザ戦争に冷たい理由 一方的な中東への見方では、問題を混迷化させる

2024.02.29 Wedge ONLINE

 サウジのムハンマド皇太子は、イスラエルとの関係樹立に前向きだが、サウジ国内でサルマン国王を筆頭に親パレスチナ・反イスラエルの国民は少なくないと思われ、この声明はガザの紛争をきっかけに彼等が盛り返したことを示唆している。他方、イスラエル側もガザの衝突以降、心理的にパレスチナ独立国家を受け入れる状況にはなく、サウジとイスラエルの関係正常化は、当面困難になったと思われる。

 また、サウジがイスラエルとの国交樹立の見返りとして求めている米国とサウジの安全保障協定については、人権問題や油価の高騰への不満から、やはり上院が批准すると思われない。11月の米大統領選挙でトランプ前大統領が復活しても、状況は変わらないだろう。

簡単には声明は出せない

 アラブ諸国の指導者達が、スローガンは別として恐ろしい程までに今回のガザの衝突に対して冷たいのは、イスラム原理主義グループのハマスとその母体のムスリム同胞団に対する強い警戒心があるからだが、同時にサウジと同様に彼等は少なくない親パレスチナ・反イスラエルの国民を抱えており、このタイミングで親イスラエル的姿勢を示せば国内で強い反発が起きることを恐れているからであろう。従って、ボルトンが言うような「ガザの衝突はアラブ・イスラエル紛争等ではない」という声明が出せる訳がない。

 中東の問題は何であれ解決が容易ではないが、バイデンに限らず米国人が自分達の価値観に基づいた一方的な中東への見方が問題解決を困難にしているように思われる。