【ウクライナの士気を保つには】ロシアは決して戦争に強くない、軍事支援で「死の谷」は越えられる

2024.03.14 Wedge ONLINE

 デイヴィッド・イグネイシャスが、2月20日付のワシントン・ポスト紙に、「ウクライナは『死の谷』に直面している。 バイデンにはそれを越えるように助ける道がある」との論説を寄せている。

2023年9月21日、ワシントンのホワイトハウス執務室で会談した米国のバイデン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領(ロイター/アフロ)

 先日開催されたミュンヘン安保会議でのメッセージは明確で、ロシアは前進し、ウクライナは生き残りに苦労しており、西側は多くの軍事援助を提供する必要があると言うものだった。超党派上院議員団団長、シェルドン・ホワイトハウスは、西側はキーウの勇敢な兵士が「死の谷」を超える道を見つけるよう支援する必要があると言った。

 ゼレンスキーは、長距離ATACMS-300ミサイルが必要だと議員団に示した。バイデンがATACMSを送るのを躊躇しているのは、米国がそれを自国防衛に必要としているのと、ロシアとの対決を望んでいないからだと言われる。

 しかし今、米国の安全保障のためにロシアの勢いをウクライナが止めることが重要である。ウクライナはロシア領攻撃に米兵器を使わないとの約束を守ってきた。立法を待たずに、ミサイルを送るべきである。

 先週の二つの出来事はプーチンの恐ろしさを強調した。シベリアの牢獄でのナワリヌイの死は、プーチンが「限度のない」攻撃をしていることを示した。

 東部ウクライナでのアウディイウカの制圧は、プーチンが「肉弾戦」で数万の兵士を犠牲にすることを示した。ロシアの航空機はアウディイウカに好きなように精密爆弾を落とせた。もしウクライナが新しい防空能力を得ないと、この脅威はウクライナの他の都市に拡大される。

 ロシア軍は二つの民族的資源、暖かい身体と冷血な忍耐力を使って、前進している。これがナポレオンからヒトラー、いまに至るロシアの戦争の仕方である。プーチンが兵士を送り続けられるのはロシア人の禁欲主義だけではなく、彼が賢くも兵士をロシアの最も貧しく恵まれない地域から連れてきているからである。

 ナワリヌイの死はプーチンの計算をあきらかにする。彼はエリート世論を気にしない。彼の統制に脅威を与えないからである。何年か前にクレムリン高官は、ある欧州の大使に、百万人以下のデモは取り扱えると述べた。

 米議会が軍事援助を引き続き支持することが重要である。それでウクライナが防衛を固め、戦闘を続けてロシアを阻止することは一種の勝利である。

 この戦争は西側についてのテストである。欧州は米国より賞賛すべき強さを示している。バイデンは、もっとやるべき時である。

 トランプ前大統領の気まぐれに乗ってウクライナを見捨てようとしている議会の共和党については、悲しみを感じるだけである。下院共和党員には、恥をかく前にし っかりすることを希望したい。

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すぐにでも踏み切れる長距離ATACMSの供与

 今年のミュンヘン安全保障会議は、ウクライナ戦争の現状が主たるテーマであったが、この論説は、イグネイシャスがその会議に参加しての感想を書いたものである。戦況はロシア有利になってきている中で、米議会下院が共和党の反対でウクライナ支援措置を可決できていないことについてのイグネイシャスの憤慨が良く書かれている。

 彼の論には賛成できる。米下院の共和党には、しっかりしてもらう必要がある。

 しかし、議会の決議なしにも、バイデンはゼレンスキーが渇望している長距離ATACMSをウクライナに米国の在庫から供与することは大統領権限で出来るはずである。アウディイウカの陥落でウクライナ側が意気消沈している状況を踏まえ、それに踏み切るべきだろう。