【中国へのけん制強まるか】豪・英・米の安全保障協、AUKUSへの日本参加歓迎の意味

2024.05.01 Wedge ONLINE

 2024年4月11日付の英フィナンシャル・タイムズ紙の社説が、米英豪の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)は勢いを増し支持者も増え、インド太平洋の戦略バランスを維持する上で歓迎されるものであると述べている。

AUKUSに属する米国のバイデン大統領(中央)、英国のスナク英首相(右)、米国のアルバニージー豪首相。その結束は強まりつつある(dvids)

 21年に発表されて以来、AUKUSは批判にさらされてきた。中国は、この豪州・英国・米国の安全保障協定は地域の緊張を高めるものだと主張した。一部の者は、豪州に原潜を提供するという計画は実現が難しいと指摘してきた。

 これらの批判にも拘わらず、AUKUSは勢いを増し、支持者も増えている。先週、3カ国の国防相は、日本を新たな軍事技術の開発に参加させることを検討していると発表した。

 カナダのトルドー首相も、AUKUSとの関係につき前向きな発言をしている。日本やカナダのAUKUSへの正式加盟は恐らく遠い将来のことだが、両国ともAUKUSを重要な戦略的パートナーと見ている。

 中国の主張するAUKUSが地域の緊張を高めたという原因論は、逆である。中国こそ、軍事に資金と資源を投入してきた。また中国は、南シナ海の紛争水域に軍事基地を建設し、フィリピン、日本、インド、台湾等の隣国を威嚇する活動を強化している。

 AUKUSは、これら地域の緊張の原因ではない。それは寧ろ、中国の軍事力増強に対して地域の抑止力を回復する努力の一部だ。最も重要な質問は、それが正当化されるかどうかではなく、それが十分であるか、そしてトランプが米国で再び権力を持った場合でも意味を持ち続けるかどうかである。

 AUKUSは、北大西洋条約機構(NATO)のような明示的な相互防衛保証を創設するものではない。しかし、それは同志国の間で軍事、技術、戦略の協力を促進するのに役立つ。

 豪州が最終的に原潜を取得する道は長く、複雑だ。豪州は、2030年代初頭に米国から中古の原潜を受け取る予定である。原潜は、AUKUS協定の最初で最も重要な柱である。

 2番目の柱は、日本とカナダがより積極的に参加する可能性が高い、新しい戦略技術の開発に関わるものだ。これには、ドローン戦術、超音速、電子戦、AI等の分野が含まれる。日本とカナダは、産業力と重要な鉱物資源を持っているが、どれだけ貢献できるかは明確でない。先進軍事技術の面でこのグループを主導するのは、依然として米国である。

 AUKUSに対する最後の批判は、中国等が指摘するもので、それは「アングロスフィア(英米圏)」の力を維持しようとするものだということである。しかし、日本のAUKUSへの関わりはそのような考えを否定する。

 AUKUS参加国を結びつける根本的なものは、それらが全て自由民主主義国であり、インド太平洋地域が独裁主義の中国と復讐主義のロシアの影響下に落ちることを防ごうと決意していることだ。このような安全保障協力強化の努力は歓迎される。更にやるべきことがもっとある。

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岸田首相の訪米による成果

 上記は、極めて明快な、前向きの議論である。この社説は、先進技術協力のためのAUKUS第二の柱への日本やカナダなどの参加を「歓迎」するとともに、これからもっとやるべきことがあると述べる。

 その中で、AUKUSの中心は豪州の原潜取得にあると釘を差しつつも、「中国の主張するAUKUSが地域の緊張を高めたという原因論は、逆である」と中国の主張を否定し、「(AUKUSは)中国の軍事力増強に対して地域の抑止力を回復する努力の一部だ。AUKUSについて最も重要な質問は、それが正当化されるかどうかではなく、それが十分であるか、そしてトランプが米国で再び権力を持った場合でも意味を持ち続けるかどうかである」と主張する。