〈野球場からボールパークへ!〉北海道・エスコンフィールドに続く“新たな魅力”へ必要なものとは?アメリカから学ぶ大切な「空間の演出」

2024.05.09 Wedge ONLINE

 この点で、昨年オープンした北海道北広島市のエスコンフィールドHOKKAIDOの場合は、開閉式の屋根と天然芝を採用しただけでなく、周辺の土地も含めたスケール感のある開発で、まさに「ボールパーク」としての開放感を実現している。これはファンにも好評であり、今後は日本でもこのようなスタイルが主流となることを思わせる。

 こうした流れは、東京ドームから築地への移転を検討しているという、読売ジャイアンツの本拠地問題にも影響するのは間違いない。昨秋には、同球団が築地への移転を検討するという報道が一部でされたが、築地の場合は、ギリギリ球場を建設するだけの土地しかなく、「ボールパーク」に必要な空間の開放感を実現するのは難しい。

 どうしても築地ということであれば、浜離宮も含めた空間の開放感を演出するか、ウォーターフロントとして隅田川を借景とするなど、設計上のウルトラCが必要となってくるであろう。仮に東京ドームの再開発という場合でも、そもそも遊園地を含めた後楽園の敷地内では、同じように開放感のある設計は相当な工夫が必要になると思われる。

 再開発ということでは神宮球場の移設も計画されている。こちらはホテルを併設した新球場というのだが、現在の計画では高層ビルが借景になってしまうようで、空間の確保ということでは疑問が残る。

 日本の、特に東京などの大都会では、まとまった敷地を確保するのは簡単ではない。したがって、この空間の演出ということでは、借景の利用や球場のデザインなど、さまざまな要素を組み合わせた知恵が必要となってくる。そうしたデザインの面で成功して初めて野球場は「ボールパーク」となるのだ。