イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザの中心都市、ガザ市の制圧作戦に着手。高層ビルを次々に破壊し、退避する住民らも攻撃した。
国際的な批判を無視するネタニヤフ首相は古代ギリシャの軍事国家スパルタになぞらえ、イスラエルを「超スパルタ国家」にする必要性を強調した。その真の狙いはパレスチナ人の民族浄化とジェノサイド(大量虐殺)だろう。
ネタニヤフ政権は8月、ガザ市制圧作戦の実施を閣議決定し、9月15日に侵攻を開始した。ガザ市には100万人前後が居住していたが、イスラエル軍は住民に退去を促し、9月20日までに50万人近くが南部に向け脱出した。ガザ全体ではすでに6万5000人を超える住民が死亡しており、今回の侵攻により一段と犠牲者が増加すると懸念されている。
イスラエル軍は侵攻に当たって、ガザの通信網を完全に遮断。携帯電話やインターネットを封じ込めた。さらに中東専門誌ミドル・イースト・アイによると、イスラエル軍は爆弾を満載した遠隔操作の装甲車両を大量に投入し、ハマスの拠点であるトンネルやビルの破壊に使っている。
破壊力は凄まじく、ビルを倒壊させるに十分な威力だ。「空爆よりも破壊的」で、相当離れたテルアビブでも爆発音が聞こえるほどだという。8月13日から9月3日まで100台を超える爆弾車両が配備された。
こうした車両が投入されたのはイスラエル軍兵士の損害を抑えるためだとされる。しかし、南部ラファではこのほど、兵士4人が道路に仕掛けられた爆弾で死亡、これで23年10月の開戦以来の将兵の戦死者は469人にまで増加した。
ガザ市には約2000人のハマス戦闘員が残留しているとされるが、今のところ侵攻したイスラエル軍に反撃していない。イスラエル軍を十分に市内に入れてから迎え撃つとみられている。
ハマスは9月20日、「別れの写真」と称して人質48人の顔写真を公表、攻撃が続けば人質も死亡するとイスラエルをけん制した。人質約50人のうち、生存しているのは20人という。
ネタニヤフ首相は最近の演説で、今回の侵攻を正当化。ドイツなどがイスラエルへの武器禁輸に踏み切ったことを念頭に、外国に依存しないで自国で兵器を製造しなければならないと強調。自国の軍需産業を発展させて「超スパルタ国家」になる必要があると述べた。
同首相の発言は外交的解決の可能性がほぼなくなったことを示しており、「パレスチナ国家など存在しない」とまで言い切った最近の強硬、傲慢な姿勢を反映するものだ。国際的に認知されてきたパレスチナ国家樹立による「2国家共存」は一段と遠のいた格好だ。
ネタニヤフ首相の真の狙いは何なのか。首相は否定しているものの、「最終ゴールは民族浄化とジェノサイド(大量虐殺)だ」(ベイルート筋)。
確かに首相は停戦交渉がまとまりかけると、その都度ぶち壊してきた。9月に入り、「人質全員の解放とイスラエル軍のガザ撤退」を柱とする米国提案で合意が近づいたが、首相は交渉仲介役のカタールを攻撃、今や交渉の先行きは全く不透明になった。
首相のこうした言動には「戦争継続こそが政権存続のカギ」(ベイルート筋)という思惑があり、その背景には「パレスチナ人を抹殺してユダヤ国家を拡大するとの歪んだ信念がある」(同)。その一端は戦後の「ガザ再建開発計画」からもうかがい知ることができる。
米ワシントン・ポストによると、イスラエルと米国は戦後のガザ統治計画を協議中だという。内容はガザを10年間、米国の「信託統治」にし、この間にツーリズムとハイテクの拠点として開発する計画。米国のトランプ大統領がこの2月、「ガザを中東のリビエラに」とする米国所有案をぶち上げたが、計画はこの構想を具体化するものだ。