そして、①解決は中国が国内消費を拡大し、補助金や為替操作をやめることだ、②欧州にとって残る解決策は、競争力を高め価値創造を目指す困難な道か、保護主義という悪い道だ、③中国が輸入を拒む限り、他国も自国需要や保護策に頼らざるを得なくなると言う。
ハーディングの指摘とその意味合いは、彼の言う通りだと思う。他方、責任の多くは中国にあるが、その一端は米国にもある。
近年の米国の姿勢、特にトランプ第二期政権の対中経済政策が、中国の政策をもたらしている面もある。米国の貿易、経済政策は益々混乱している。このままだと、世界経済は縮小していく。米中は良く考えるべきだ。
日本経済の台頭に伴って1970~80年代は主要7カ国(G7)でマクロ政策調整が行われた。1970年代後半には、需要維持のための日独機関車論が言われた。
日独両国は、拡大財政政策を採った。G7は政策協調の場としての役割を果たした。1980年代は、日米間で貿易、構造協議が行われた。為替も調整された。一部品目は、対米輸出自主規制措置も取らされた。
日米協議は、米国の交渉圧力に国内は反発して大変だったが、今振り返ると日本経済の自由化、開放化のためには通らなければならない一つの過程だった。日本は必要な適応をした。貿易は着実に自由化され、世界経済は拡大し、発展した。
今、最も欠落しているのは、米国等と中国の間でのマクロ政策の調整ではないだろうか。それは、財政、金融等のマクロ経済政策であり、貿易政策だ。
経済の不均衡は、基本的に、マクロ的にしか解決できない。トランプ関税などミクロ措置では解決できない。トランプの政策は、それをやればやる程、米国経済はモンスターのように歪になり、市場から乖離し、競争力を失い、世界経済を不公平、不効率にするばかりだ。そして一方主義が横行する。
リーマン・ショックの時には、中国も世界経済の崩壊阻止のために、米国との連携を通じて、積極財政措置を取ったではないか。必要であれば、為替調整もすれば良い。トランプ関税よりも余程理屈に合うし、市場歪曲も少ない。
開放・自由な貿易・経済政策を守らなければ、サイズの変わらないパイの食い合いを続けるだけだ。例えば、20カ国・地域(G20)内に中国を入れた責任ある少数国のマクロ政策調整グループを立ち上げるべきではないだろうか。