中東情勢は波乱の幕開け、サウジとUAEの代理戦争がクライマックスへ、反政府デモで不安定なイラン、ガザ戦争は「平和なき停戦」…

2026.01.06 Wedge ONLINE

 2026年の中東情勢は波乱の幕開けとなった。イエメンではサウジアラビア連合軍がアラブ首長国連邦(UAE)支援の分離独立派を空爆、石油大国同士のライバル関係が一気に緊張した。イランではインフレなどに抗議する反政府デモが全土に拡大、治安部隊との衝突が続発した。ガザ戦争の平和確立への動きは見えず、視界不良の新年となった。

イエメンの分離派「南部暫定評議会」の支持者たちによる集会。中東情勢は混とんとしている(AP/アフロ)

戦争状態に突入

 サウジとUAEの対立については「サウジ皇太子がトランプと“親密”な協力を結んだ背景、UAE追い落としの妙手、トランプが近づく理由は…」で報じたばかりだが、昨年末の12月30日に激化した。サウジ主導の連合軍がこの日、イエメン東部ハドラマウト州の港で、大量の武器や軍用車両を確認したとして空爆を実施。サウジメディアによると、武器はUAEがイエメンの分離派「南部暫定評議会」を支援するため運んだものという。

 南部暫定評議会は「今や我々は暫定政府との戦争に入った」との声明を発表した。暫定政府当局者によると、サウジ主導の連合軍は暫定政府の要請に応じて空爆した。

 南部暫定評議会は武器が荷揚げされていたことを否定。空爆後、UAEはイエメンに残留している軍部隊を撤収させると表明したが、ここにきてサウジとUAEの代理戦争がクライマックスに達した印象だ。

 イエメン内戦は首都サヌアを押さえるイラン支援のフーシ派、サウジが援助する暫定政府、そして南部暫定評議会の三つ巴の争いだ。当初はフーシ派と暫定政府との戦いだったが、サウジ主導の連合軍の介入が弱まる中で、暫定政府の一員だった「南部暫定評議会」が勢力を拡大。昨年暮れに南部と東部を制圧、暫定政府を追い詰めていた。

 暫定政府と南部暫定評議会の対立はそのままサウジのムハンマド皇太子とUAEのムハンマド大統領の確執を表すものだ。両国ともペルシャ湾岸の君主国であり、石油大国だ。湾岸諸国の石油政策にも影響が及ぶのは必至で、日本を含む世界経済にも深刻な影を落としそう。

イデオロギー対現実主義

 両者は元々、対外政策をめぐる考えが根本的に異なる。サウジのムハンマド皇太子が実務を重視するガチガチの現実主義者であるのに対し、ムハンマド大統領はイスラム原理主義に反対するイデオロギーを重視する傾向が強い。両者が対立し始めたのは19年ごろからだ。サウジの求めに応じてイエメン内戦に介入したムハンマド大統領は「南部暫定評議会」を支援するようになった。

 UAEは湾岸の情報センター、観光・金融の拠点として発展していたが、後発のサウジも同じ路線を目指したことが対立を決定的なものにした。剛腕のムハンマド皇太子はUAEのドバイに支店を置いていた各国の企業に対し、サウジのリヤドに移転するよう要求。拒否すれば、サウジとの商取引をさせないと脅した。

 これに怒ったのがUAEのムハンマド大統領だった。ドバイはすでに中東の情報・金融の中心として発展しており、サウジの要求を理不尽な横やりと反発した。大統領はイエメンの南部暫定評議会支援に力を入れ、同時にスーダン内戦でもサウジが援助する政府軍と戦う反政府勢力を手助けし、サウジを揺さぶった。

 特にイエメンのハドラマウト州の港は紅海に面しており、大統領には将来的に石油などを輸出する基地にしようとの思惑もある。両国は湾岸産油国で組織する「湾岸協力会議」の最有力メンバーであるだけに、「対立の激化は誰も喜ばない」(識者)と危機感が高まっている。

イラン再攻撃はあるのか

 米国のトランプ大統領は昨年12月29日、南部フロリダ州の私邸でイスラエルのネタニヤフ首相と会談。会談後の記者会見で、イランが核兵器や弾道ミサイルの開発など軍備強化すれば、イスラエルとともにイランを再攻撃すると警告した。

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