新年早々、トランプ大統領がベネズエラの首都カラカスを爆撃し、マドゥロ大統領の身柄を拘束したと報じられた。軍事攻撃後の記者会見では、トランプ大統領はベネズエラの国家運営と石油産業に関与し立て直すと発言した。米国がベネズエラに関与するのは、麻薬を断つだけではない、ベネズエラの石油が必要な事情があるのだ。
世界最大の埋蔵量を持つベネズエラの石油生産は低迷している。その石油の増産は、世界が脱炭素に向かい石油消費がピークアウトするとされる時に意味があるのかとの疑問もある。
しかし、2010年代にピークアウトするとされた石油の生産と消費は伸び続けている。国際エネルギー機関(IEA)は、30年頃にピークアウトの可能性もあるとしているが、50年まで石油の需要が伸び続けるシナリオも提示している。
先進国における輸送部門の非炭素化の遅れ、途上国における消費増の勢いを見ると、石油はまだまだ必要とされそうだ。
トランプ大統領は、かつてベネズエラの石油資源国有化により米国石油企業は大きな利権を失ったので、それを取り戻すと攻撃後にスピーチした。
だが、ベネズエラの石油はあまり質が良くない粘度が高い重質油だ。いまさら、巨額の投資により生産を復活する価値があるのだろうか。実は、米国にとってはベネズエラの石油は重要なのだ。その背景にあるのはシェール革命だ。
シェール革命により米国は世界最大の産油国になった。数字上は自給率100%超だが、国産原油の品質に偏りがあり、国産原油だけではガソリンなどの石油製品を低コストで精製することができない。
ベネズエラ産原油は国産原油を品質面で補完している。ベネズエラ原油を入手すれば、米国は真の自給率100%が達成でき、石油の安全保障を考えなくてもよくなる。
ベネズエラで石油が発見されたのは、1900年代前半だ。石油生産開始後の第二次世界大戦前後には、米国、旧ソ連に次ぐ世界3位の産油国になった。
50年代半ばから中東での石油生産が本格化したことから、60年、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビアの中東産油国と共同で石油輸出国機構(OPEC)を設立した。
当時セブンシスターズと呼ばれていたエクソン、シェブロン、英国石油(BP)などの欧米の石油メジャーが世界の石油生産と価格を独占的にコントロールしていたが、OPECは、産油国が主導権を握ることを目的とし生産の国有化を進めた。
73年には、第4次中東戦争を契機に出荷量の抑制と価格の引き上げが行われ、72年に1バレル当たり平均1.90ドルだったドバイ原油のスポット価格は、74年には10.41ドルまで上昇した。
ベネズエラは76年に国営の石油・天然ガス会社ペトロレオス・デ・ベネズエラ(PDVSA)を設立し、石油産業を国有化したが、国際石油メジャーとの協調の下、石油生産が継続された。
第一次オイルショック後高値で推移していた石油価格は、80年代後半から90年代にかけ、OPECの生産調整の不調もあり低迷した。
石油収入に依存していたベネズエラ経済も不振に陥る中、国民の不満を吸収する形で92年にクーデター未遂を引き起こした軍将校のウゴ・チャベスが99年に大統領に就任した。
チャベス大統領は反米路線を掲げロシア、中国、キューバなどとの関係を深めたが、チャベス大統領就任後も米国の石油メジャーはベネズエラで操業を続けた。
2006年から07年にかけ、チャベス大統領はベネズエラで操業する全外国石油会社に対し、PDVSAが少なくとも60%を持つ合弁事業体への事業の譲渡を迫った。