2026年はどんな年になるだろうか。注目の大国の1つはインドである。すでに人口は世界1位の15億人。現在の予測では26年初めに、日本を抜いて世界第4位の国内総生産(GDP)を有する国になる。
しかし、それだけではない。昨今の世界情勢で注目される安全保障情勢はどうだろうか。インドの軍事支出は米中露独に次ぐ世界第5位とみられているが、どうも、インドにとって安心できない情勢が訪れつつある。
本稿では、25年にインドが直面した安全保障情勢について分析し、26年、インドにとってどこが注目点か考察、その上で、日本にとっての意味についてまとめることとした。
25年は、インドから見ると、アメリカとの関係、ロシアとの関係、中国との関係、すべてで不安を抱えた年だったといえる。
まずアメリカである。25年は、トランプ政権誕生で幕を開けた。インドは、トランプ政権の下で米印関係が進展するものと期待していた。
実際、トランプ大統領が就任後1カ月の間にホワイトハウスに呼んだ首脳は4カ国だけで、(日本と)インドが含まれていた。ところが、この状況は、急速に変化した。その最も重要な原因は、トランプ政権がインドに対して厳しい関税を課したからだ。
トランプ政権が課した関税は、モディ政権にとって譲れない分野、つまり農業での市場の開放を求めたことが一因である。しかし、それだけではない。
ロシアとウクライナの停戦を仲介するトランプ大統領は、その一環としてロシアから原油を輸入している国に対して関税を上げることを警告した。そして、なぜかインドだけに関税がかかったのである。
これは、ロシアから原油を輸入している国々でも、例えば米中間のように、関税交渉が一時的なまとまりを見せている国々が多いために起こったことであるが、インドから見ると、アメリカはインドだけに差別的に関税をかけているように見えている。
このような関係は米印の安全保障協力にも波及し、夏に予定されていた防衛協力の枠組みの締結も、日米豪印4カ国の枠組みQUAD(クアッド)首脳会談も延期された。秋になって、やっと防衛協力の枠組みは締結され、インドがロシアから輸入する原油も減り、米印関係は若干進展し始めたが、まだ不安定な状態にある。
インドは、「アメリカに頼れない」と考える一方で、ロシアにも頼れないことが明白になった年でもあった。12月に訪印したプーチン大統領との間で、大きな合意があるものと期待された。インドがロシアから武器を購入するのではないかと思われたからだ。しかし、何も起きなかった。
インドは、ロシアから武器を購入したいが、ロシアには売る武器がない。自らウクライナの戦争で使ってしまっているからだ。インドにとってロシアは、頼りないパートナーになりつつある。
24年10月以降、インドと中国の関係は、若干の進展を見せている。25年は、印中間で大きな問題は起きなかったように見えた。それでも、インドの不安は尽きない。
過去、印中国境は、80年近く、戦闘が断続的に続いてきた場所である。2010年代に入っても、印中国境における中国側の侵入事件数は長期的に増加傾向にあり、11年の213回から19年には663回になり、20年にはインド側だけで死傷者100人近くを出す衝突に至った(中国側の死傷者は不明)。毎年のように悪化してきた情勢が、一時的によくなったとしても、それが長期に続くとは考えられない。
しかも、インドが不安視するのは、チベットで続く中国のダム建設だ。インドに流れる大きな河川の源流はチベットにある。もし中国が上流でダムを多く建設し、水の流れをコントロールできるようになれば、インドへの水を減らしたり、逆に放流して洪水を起こすこともできる。印中国境の情勢は、インドにとって、中国がいかに信用できないか、証明し続けている。