それに対してポストリベラルと呼ばれる一派の代表的人物、パトリック・デニーン氏は、右派でありながら自由主義を否定する第3のニューライトの急先鋒である。東海岸の名門校群であるアイビーリーグの一つ、プリンストン大学で教えていたこともあるデニーン氏は、そこでは専任の職を得られず、現在は中西部のインディアナ州にあるカトリック系の大学、ノートルダム大学で教鞭をとっている。
デニーン氏自身カトリックであるが、かれに限らずポストリベラルの人々は、従来のニューライト以上にキリスト教的価値観を前面に掲げ、キリスト教の文化や伝統に基づく国づくりを求めている。
デニーン氏に言わせれば、自由主義は人々が拠って立つ文化の基盤を破壊し、国家に依存させる素地をつくりだしてしまうという点で、リベラリズムと大差ない「アンチ文化」の思想である。そして自由主義はリベラリズムとともに、人々に自由を保証すると謳いながら、実際には階級格差を生み出し、その格差を覆い隠してきた。今日では能力主義の名のもとで、エリート主義を正当化しているというのが、デニーン氏の見立てである。
20世紀のリベラリズムが批判されるべきはもちろんのこと、自由主義もまた、米国に害を及ぼしてきたとみなす、デニーン氏のようなポストリベラルの人々のもう一つの特徴は、かれらの右派ポピュリズム的主張から生じる、グローバル企業への明確な敵意である。グローバル企業とそのマネジメントを担う経済エリートたちは多様性やマイノリティーへの配慮を掲げる一方で、信仰心の篤い米国の民衆を蔑ろにしてきたというのが、デニーン氏がこれまで主張してきたことである。まるでかつての左派のような企業批判を反エリート主義の名のもとに行うのがポストリベラルの特徴である。そして、かれらの主導のもと、第3のニューライトたちは市場や経済に対する従来の共和党の向き合い方を根本的に変えつつある。
デニーン氏のようなポストリベラルとともに第3のニューライトをかたちづくっているもう一つの有力な勢力がテック右派である。かつてから現在に至るまで、シリコンバレーのテック企業関係者の多くは、民主党を支持してきた。しかし今日では、そうした層の中からトランプ支持に転じる者たちが現れてきた。
24年の大統領選挙でトランプ氏に付き添い、第2次トランプ政権で政府効率化省の先頭に立ったイーロン・マスク氏は、その代表である。火星への人類移住を掲げ、テクノロジーの進歩を説く一方で、選挙期間中にトランプ氏を批判した歌手のテイラー・スウィフト氏のフェミニスト的主張を揶揄するなど、進歩的な経営者精神とリベラル批判を併せ持つマスク氏は、テック右派と呼ぶにふさわしい典型的な存在である。
パフォーマンスの派手なマスク氏の陰に隠れがちであるが、テック右派としてマスク氏以上に存在感を示してきたのが、ペイパルやパランティアの共同創業者であるピーター・ティール氏である。16年の大統領選挙でトランプ氏が初当選の際に、ティール氏はトランプ支持を明確にした。また、政権移行チームにも力を貸したティール氏は、一時トランプ氏と距離を置いた時期もあったが、第3のニューライトの思想的リーダーの一人であり続けてきた。
知る人ぞ知るティール氏の主張の特徴は、テクノロジーの進歩への信念とキリスト教の信仰との融合である。ティール氏の『ゼロ・トゥ・ワン─君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)は、日本でもビジネス書として多くのビジネスパーソンに読まれ、刺激を与えてきた。ティール氏はこの著作の中で、ゼロから1を生み出すことの重要性を説いている。まさに無から有を創ったのは神である。