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この論説は、現在および今後の中東情勢を把握する上で極めて重要な視点を提供している。
この時期にこの論説が出た背景には、昨年末にサウジアラビアが南イエメンの港で南部分離派に武器を供給しようとしていたUAE船籍の船を空爆したことを契機にサウジアラビアとUAEの対立が急速に深まったことがある。昨年12月に、イエメン内戦当初は、サウジアラビアもUAEもフーシ派と戦う政府軍を支援していたが、その後、UAEは南部の分離独立派支援を優先するようになり、12月に入り分離独立派が急速に支配地を拡大したことに対し、サウジアラビア側が武力行使に踏み切ったものだ。
また、スーダンについても、11月に訪米したサウジアラビアのムハンマド皇太子がトランプに内戦終了に向けて反政府派を支援しているUAEに圧力をかけるよう促し、スーダン政府軍に対する支援を強化したと伝えられる。さらに、ソマリアについては分離独立を目指すソマリランドを12月下旬にイスラエルが国家承認を行った。
これはフーシ派対策のためのイスラエル軍の駐留をソマリランドが認めたことへの見返りであり、ソマリランドを支援するUAEが橋渡しをした疑いからソマリア政府はUAEとの外交関係断絶を発表した。
上記のような紅海周辺での状況の緊迫化に対し、サウジアラビアは、1月に外相をエジプトに派遣し、UAEによるスーダン反乱軍支援やリビアの反政府勢力への支援に対する対策を協議し、また、イスラエルのソマリランド承認に対抗して、サウジアラビア・ソマリア・エジプトの軍事パートナーシップを立ち上げ、さらに、イエメン問題ではトルコと協議を行い、サウジアラビア・トルコ・パキスタンの三国間軍事枠組みを発表するといった展開が見られた。
UAEはイエメンから自国軍を撤退させ、リヤドとのさらなる関係悪化を避けたいとの意思を示したが、UAEがこの緊張状態をもたらした原因である地域戦略を長期的に変えるとは思われない。UAEは、石油資源枯渇後の国家としての生存と発展を確保するためには、この地域の物流・貿易の拠点としての地位を確保し、アフリカからの食料輸入や資源等への投資利益の確保を図るための影響力の強化の必要性を確信しているようである。特にアデン湾からバブ・エル・マンデブ海峡を経て紅海に入りスエズへ抜ける海上ルートを確保することが死活的に重要と思っている。
他方、サウジアラビアは、紅海に臨む港湾を持つが、状況はそう変わりはなく、アデン湾へのアクセスやアフリカとの物流の確保のためスーダンの港湾への投資を行い、エジプト、スーダン、ソマリアとの協力関係を強化してUAEに対抗している。従って2つの連合の対立というよりもUAEとサウジアラビアの2国間対立をイスラエルが利用し、他国が巻き込まれているという構図に見える。
イスラエル・サウジアラビア間の国交正常化の実現が、米国にとってサウジアラビア・UAE関係改善や2つの連合の対立を管理する鍵であるとの論説の指摘は、その通りであろう。そのためには、サウジアラビアにとっては2国家解決案をイスラエルが受け入れることが条件となるので、その観点から今年のイスラエル議会の選挙結果が極めて重要となる。