投手陣も日本が戦った5試合のうち、現役メジャーの山本由伸投手(ドジャース)、菊池雄星投手(エンゼルス)、菅野智之投手(ロッキーズ)がチェコ戦を除く4試合で先発を担い、日本の各球団ではエース級のメンバーは、先発の後を受ける「第2先発」へ回った。
メジャー組を中心としたローテーションは実力的にも順当な采配といえる反面、救援を本職としていた投手の相次ぐ負傷離脱という不運によって、ブルペンへの負担は増大した。メジャー組が実力的には頼もしい戦力であることは間違いないが、臨機応変な選手起用の幅を狭める「もろ刃の剣」となった面は否めなかった。
時差調整の問題も浮き彫りになった。準々決勝進出をかけて争う1次ラウンドは4組に分けて実施されたが、開催地は米国2会場とプエルトリコ、日本(東京ドーム)だった。優勝したベネズエラが1次ラウンドからずっとマイアミで試合が組まれたのに対し、日本開催で準々決勝に進出した日本と韓国だけが長距離移動と時差調整の負担を強いられたことになる。
日本開催は、興行面のメリットを生かすビジネス戦略の意味合いが大きい。主催者にとって、日本開催は150億円とも報じられるNetflix (ネットフリックス)の国内独占配信の放映権料だけでなく、日本のファンを当て込んだ入場料やグッズ収入、日本企業のスポンサー獲得の面からも「ドル箱」だ。
ファンが自国で大会が観戦でき、選手もホームの雰囲気で試合をできる恩恵はあるものの、準々決勝より先を見据えた場合、他の組から勝ち上がったチームと比べ、米国への移動から十分な調整時間がなかった点は決してフェアとはいえないだろう。
一方で、日本球界としての対策の遅れも露呈した。
一つは投球間の時間制限「ピッチクロック」が、日本のプロ野球で実施されていない点だ。
試合時間の短縮を目的として、メジャーで2023年から導入されており、すでに韓国や台湾のプロ野球でも採用されている。不慣れな日本のバッテリーにはとまどいがあり、WBC直前の強化合宿にメジャーの審判を呼び、現役メジャーのダルビッシュ有投手(パドレス)をアドバイザーで招くなどしたが、対策は後手に回ったと言わざるを得ない。
ピッチクロックだけでなく、サイン交換機器「ピッチコム」の導入についても、WBCから帰国した選手が導入を訴える事態となっている。海外からの報道では、メジャーでのオープン戦に合流した大谷翔平選手も、日本球界でのピッチクロックについて「世界で勝ちたいならもちろん導入するべきだ」と提言した。国際大会でルールの違いを肌で感じた選手の声にどう応えるか、日本球界としての決断を迫られる。
また、日本のボールは、メジャー球に比べて「飛びにくい」とされている。日本国内では打率3割を超える打者が減り、「投高打低」の傾向にあるが、メジャーの潮流はパワーにパワーで対抗するスタイルだ。投打に影響を与えかねない国際標準との“仕様”の違いも浮き彫りとなった。
国際大会については、WBCだけでなく、2年後にはロサンゼルス五輪を控え、27年11月には五輪出場権が懸かる「プレミア12」が待ち受ける。次回以降のWBCについては、日刊スポーツが3月19日付一面で、シーズン開幕前の3月に1次ラウンドを行い、7月に準々決勝以降の決勝ラウンドを行う「分離開催案」の可能性を報じた。
米国での決勝ラウンドは、日本代表もいずれは「オールメジャー」で編成される時代が到来してもおかしくはない。指揮を執る監督選考には「メジャー経験の有無」を検討してもいいだろう。
WBCの1次ラウンド、決勝ラウンド、五輪、プレミア12に加え、興行的な強化試合などの代表戦についても、大会によってメジャー組を含むフル代表、国内組による編成、若手主体のチームなど、選考基準を分けて中長期的に代表のブランド力と強化のビジョンを描くこともできる。世界一奪回へ、“誤算”を打ち消すための課題はたくさん見つかっている。