兵力を削減しながら軍事力を維持、韓国軍改革の青写真、「人口絶壁はすでに安保の現実として迫る」国防部長官の危機感

2026.04.17 Wedge ONLINE

 今回は筆者都合で国防日報2週間分をお伝えする。韓国は日本と異なり4月は予算年度や学年度の始まりではないため、この時期に大きな動きはない。58回目となる予備軍の日関連行事が全国で開催されたほか、安圭伯国防部長官が進める韓国軍改革の青写真が浮かび上がってきた。

韓国が予備軍の処遇改善を模索

 韓国で4月3日、第58回「予備軍の日」を迎えた。1968年の郷土予備軍創設を記念し、毎年4月の第1金曜日に行われる国家記念日だ。今年は3月30日から4月3日までを「予備軍週間」とし、全国各地で記念行事が展開された。

 中央行事は前日の4月2日、ソウルの龍山駐屯地で安圭伯国防部長官が主催した。模範予備軍42人とその家族、15の予備軍育成団体や優秀部隊の代表者らが出席し、政府表彰や長官表彰の授与が行われた。安長官は予備軍を「国家防衛の最後の砦」と位置づけ、処遇改善と制度の充実を約束した。

 3日の予備軍の日には仁川や京畿道、光州・全南など7つの広域自治体でも首長主催の式典が開かれ、民・官・軍・警察・消防が一堂に会する統合防衛の場となった。全国最多の約70万人の予備軍を擁する京畿道の式典では、北朝鮮と隣接する地理的条件を踏まえた安全保障の重要性が強調された。4月中は全国の遊園地やレジャー施設など62カ所で予備軍向けの割引優待も実施されている。

 韓国の予備軍制度は、徴兵制と不可分の関係にある。成人男性は陸軍・海兵隊で18カ月、海軍20カ月、空軍21カ月の現役服務を終えても、そのまま除隊とはならない。

 除隊後8年間は予備軍に編成され、年1回の訓練招集を受ける。現役部隊が前線での抑止と防衛を主任務とするのに対し、予備軍は有事における兵力の損失補充や戦時部隊の創設、平時における後方の地域防衛を担う存在だ。

 1~4年目は2泊3日の動員訓練または4日間の通勤型訓練、5~6年目は基本訓練と作戦計画訓練に参加する。予備軍の期間を終えた後も満40歳までは民防衛隊に所属し、災害対応などの訓練が義務づけられる。入隊から数えれば約20年間、国防と関わり続ける仕組みだ。

 今年からは全ての予備軍訓練に参加費が支給されるようになり、動員訓練の手当も引き上げられた。国防部は2030年までに訓練費を最低賃金水準へ段階的に引き上げる方針で、義務への対価をきちんと報いる方向へかじを切りつつある。

韓国軍の大改革案が判明、進む職業軍人化

 安圭伯国防部長官は4月7日、ソウルで記者懇談会を開き、軍の構造改革を年内に完了させる方針を明らかにした。改革の柱は「選択的志願兵制」の導入だ。

(Matrix Reloaded/gettyimages)

 徴兵制そのものは維持しつつ、入営対象者が一般の兵士として短期間服務するか、技術集約型の下士官として最低4~5年間勤務するかを自ら選べるようにする仕組みだ。下士官を選択した者は先端兵器の運用に携わり、除隊後はその技術を民間の産業現場で生かせる「好循環」を生み出し、新たに約5万人の技術集約型副士官を確保するという。

 背景にあるのは深刻な少子化だ。韓国の合計特殊出生率は世界最低水準にあり、徴兵対象となる若年男性の減少は安全保障上の現実的な脅威となっている。安長官は「人口絶壁はすでに安保の現実として迫っている」と危機感を示した。

 兵力削減の具体策も打ち出された。最前線の一般前哨(GOP)にはAIを活用した科学化警戒システムを導入し、現在約2万2000人の警戒兵を約6000人まで縮小する。後方の海岸警戒も海洋警察への移管を協議中で、軍を戦闘任務に集中させる狙いがある。

 人材確保策として、初級将校と下士官の給与・福利厚生を中堅企業以上の水準に引き上げると約束したほか、陸海空三軍の士官学校を統合する「統合士官学校」の設立も予告した。1・2年次は共通教育を行い、3年次から各軍で専門教育を受ける「2+2」方式を想定している。歴代政権が議論しながら実現に至らなかった宿題に、改めて挑む格好だ。

 少子化に直面しながら北朝鮮との軍事的対峙を維持しなければならない韓国軍が、どこまで改革を実行に移せるか。今月末の国防改革セミナーで示される具体案が、その試金石となる。

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